日本の経済学の羅針盤
移りゆくこの十年 動かぬ視点 青木 昌彦 (著),日経ビジネス人文庫,価格: ¥700
日本の経済学者にもこういうまともな人がいるのだとわかっただけでも私にとっては収穫でした.著者の大著「比較制度分析に向けて」を読み始める導入としてもお勧めです.一般人がこれからの経済を考えていくための羅針盤としても価値は十分.将来に対して希望を与えてくれる手軽な良書です.
著者が「失われた10年論」に疑問を投げかけ,実は10年間かけて日本は「大いなる制度変革」に乗り出したのだという主張に私も賛成です.日本は決して足踏みをしていたわけではありません.表層下では地道な改革の動きが始まっていることは,現場に身を置いている人であれば実感としてわかることでしょう.また,米英流の経済学はそもそも米英の歴史や文化の特殊性に基礎を置いておいているのであって,日本や他の国々の経済に内在する普遍的要素も考慮に入れなければならない,という主張も至極まともです.
しかし,昨今の郵政改革のような大規模な変革に関していうと,この国の組織も人々のマインドもなんと後ろ向きで既得権護持に汲々としていることか?10年後に再び青木氏の評価を聞いてみたいと思います.
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