フランス中世の一断面を活写する良書
フランス中世の社会―フィリップ・オーギュストの時代 福本 直之 (翻訳),木村 尚三郎 (翻訳),東京書籍,価格: ¥3,059
フランスを旅行するだけでも目に付くおびただしい数の古い城砦や教会,細く迷路のような石畳の小道.それらが形作られた時代の基礎を作ったさらに古い時代が Philippe-Auguste に代表される中世です.その社会の制度,習慣,習俗を細部に至るまで平易に記述した濃度の高い本.
封建領主,教会権力,そして下層農民などというそれぞれの勢力について,ミクロな記述が大変面白いのがこの本の特徴です.当時の慣習や習俗には苦笑させられたりギョッとさせられるものも多くあります.領主の初夜権は有名なものですが,本当にこういう事があったのですね.
原著は1909年!の出版で誉れ高い名著.しかしこの翻訳版は1990年の出版にしては活版印刷!しかも挿絵もなく,びっしりと詰まった古めかしい活字の列は読みにくいです.大著なだけに一工夫が必要でしょう.カバーの装丁は美麗.しかしこれがこの価格とは大変お買い得です.現代風に挿絵をちりばめた豪華本仕立てにすれば,ベストセラーになるかも?
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