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2004年10月

2004/10/31

インターネットを真面目に学びたい人の入門書

絶対わかる!TCP/IP超入門 日経BPムック―ネットワーク基礎シリーズ 日経NETWORK (編著),価格: \1,995

IntroductionToTCPIP.jpg日経NETWORKのムック.連載された特集記事をまとめたものです.一般読者向けに大変わかりやすい説明になっているにもかかわらず,正確さや厳密さが犠牲になっていないところに好感が持てます.通信パケットなどの図解も多く初心者でもすんなりと頭に入ります.

私は自宅で使用しているルータの設定方法を勉強するために買ったのですが,パケット,プロトコル,ポート番号などの関係が一通り勉強できて,ほぼこの本だけで目的を達成することができました.

最終章にはIPv6の説明と簡単な試行方法の説明もあり,新しもの好きの読者も得した気分になることでしょう.インターネットを真面目に学びたい人に最適な入門書です.

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Rubyのオブジェクト指向の香りを味わえる書

Rubyプログラミング入門 原 信一郎 (著), まつもと ゆきひろ (監修),価格: \2,940

RubyProgrammingGuide.jpg他の評者の方々と同じく,私もこの本はプログラミングの初心者には全く向かないと思います.例題のレベルが高すぎるので,初心者はたちまち消化不良となってしまうことでしょう.また頻繁に出てくるイテレータにも面食らいます.Rubyのイテレータは慣れてしまえば便利この上ない優れものなのですが,初心者がこれを消化するのは至難の業ではないでしょうか?

しかしRubyのオブジェクト指向の考え方を学ぶには大変良い本だと思います.またRubyの強力な正規表現を詳しく解説してあるのも大変実用的です.あるレベル以上のプログラミング経験者が,Rubyに初めて触ってみるときに読む本としては良いのではないでしょうか?

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2004/10/27

自然災害と日本人の無常観

今年は台風の上陸が際立って多い年でしたが,それに追い討ちをかけるように大地震が列島を襲い,しかも余震がしつこく復旧にあたる人々を苦しめています.なんともやりきれない思いをしてニュースを見ている人も多いことでしょう.

10月9日の「台風22号来襲」でも書きましたが,今年の台風や地震などの自然災害の多さにつけて思うのは,これらが日本人の精神構造にどのような影響を与えてきたか,ということです.日本くらい自然災害の種類と量が多い国はそう見当たりません.特に先進工業国の中では際立っています.地震や火山の噴火や洪水が身の回りで起きれば,祖先の代から営々と築き上げてきた財産を一夜にして失くしてしまいます.日本人がこの列島に定住生活を営み始めてから2,000年以上が経ちますが,この2,000年の間には私たちの祖先は無数の自然災害に遭い,今回と同じようにやりきれない思いを味わいながら,しかし何とか立ち直って生の営みを続けてきたに違いありません.

これが無常観を育んだ最も重要な要素である気がするのは私だけではないでしょう.自然災害以外では飢餓や疫病も大きな存在だったでしょう.これらの災厄を抱えながらやっとの思いで生きていくうちに,無常観という日本人の精神の基底をなす部分が形作られたように思います.

この基底よりもさらに深い部分はいわゆる縄文の思想であり,人間と動物を同じ一族とみなす非常に興味深いものです.10月26日付けの朝日朝刊のコラムに梅原猛氏が書いているとおりですが,これは実はネイティブアメリカンの思想と非常に良く似ているのです.数万年ほど前に共通の祖先から別々の土地に渡っていった人々の姿が目に浮かびます.そのころは朝鮮海峡もベーリング海峡も陸地だったことでしょう.

とにかく,台風や地震の災害を受けた方々の一刻も早い復旧を祈ります.

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2004/10/24

真の贖罪ができないアメリカ

マクナマラ回顧録―ベトナムの悲劇と教訓 ロバート・S・マクナマラ (著),仲 晃(訳),共同通信社,価格: \2,625

InRetrospect.jpgベトナム戦争は僕が小学生の頃でした.毎夕のニュースコープで田英夫や古谷綱正が,北爆がどうした,ベトコンがどうした,マクナマラ国防長官がどうした,としゃべっているのを見ながら夕食を食べていました.それから僕は大学生のときにハルバースタムの「The Best and Brightest」を読み,映画「地獄の黙示録」や「グッドモーニング,ベトナム」を見て,そして中年になってからこの本を読みました.

まずはマクナマラの真摯な姿勢とその知性に脱帽です.彼はこの本の執筆後ベトナムを訪れ,当時の北ベトナム軍の最高幹部らと「歴史の検証」を行っており,それはNHKでも放映された(「敵との対話」)とおりです.マクナマラはほぼ同じ時期にキューバ危機についてもカストロたちと「歴史の検証」の会議を行っています.これは本当に面白いことなのですが,現代史では,歴史の検証が,それも当事者たちによって,可能なのです!その検証を通して,双方に,相手の真意の読み違い,誤った意思決定,偶発的出来事があったことが浮き彫りになります.

これらの検証を通してマクナマラは彼なりに当時を反省していきます.その姿勢はアメリカ人としては稀有なことながら,キリスト教徒として絶対善の神の監視の前ではそうせざるを得なかったのでしょう.

しかしながらマクナマラの反省はベトメム人に対して罪を詫びているわけではありません.彼は多数の犠牲となった兵士を送り出した母国の国民と自らの神に対して詫びているのです.そこに,まだまだ現代史の総括をするには早すぎるアメリカの精神が見えてきます.ハルバースタムの一連の著作と合わせて読むと,さらに深く考えるきっかけとなります.

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2004/10/23

経営工学のすばらしい入門書

企業の意思決定のためのやさしい数学 山本 隆三 (著),講談社プラスアルファ新書,価格: \882

MathematicalDicisionMaking.jpg会社で経営工学や金融工学を学ぶ人に最初に勧めることにしているのが本書です.とにかくわかりやすい!この本をわかりやすいものにしている最大の理由は,著者が実務者としてこの方面の仕事に長年携わってきたことでしょう.学者や研究者が書いた場合にはこうはいかないと思います.難しいことを易しく解説するのは難しいことなのですが,それが達成された珍しい実例がこの本です.

大学教養課程程度の数学の素養がある人で,キャッシュフロー財務の基礎知識がある人ならば簡単に読み進められます.ブラック・ショールズ式のみならず,最後はEVA経営やリアルオプションにまでたどり着けるのが素晴らしいです.難しいのはCAPMのところくらいでしょうか?

理工系のサラリーマン全てにお勧めします.この本を読んで,あなたの会社の財務の連中をやり込めてやりましょう!

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たんぱく質の静的構造の理解に役立つ

完全版 分子レベルで見た体のはたらき―いのちを支えるタンパク質を視る 平山 令明 (著),ブルーバックス CD-ROM,価格: \1,680

LookingAtProteins.jpgアミノ酸の勉強をするために本屋で衝動買いしました.アミノ酸やたんぱく質の構造がどうなっているのか,その機能とあわせて解説してあり,全くの素人でもなんとなく「たんぱく質ってこんなものか」と納得させられます.α-へリックスとかβ-シートなどという用語を覚えるだけでも,一歩専門家に近づいた気になってしまいます.

しかし機能の詳細については定性的な解説しか無く,これはそもそも現在の学問のレベルでもあると思うのですが,構造から機能を,マクロな構造物の力学の比喩で,さも見てきたように説明しているのはちょっと納得できません.ピコ秒の時定数で揺らいでいる構造どうしが,どういう確率で,どういう力によって相互作用し,部分構造同士をやり取りして反応を起こしているのか,そこが最も知りたいところ (少なくとも私は) だったのですが.イオンチャネルの説明など不満が残ります.

本文中,分子構造の写真がモノクロで見にくいのが欠点.版型もなんとなく中途半端.

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2004/10/16

人類史上かつてない実験の旅へのガイドブック

人口減少社会の設計―幸福な未来への経済学 松谷 明彦 (著), 藤正 巌 (著),価格: \798

Jinkou_Gensho_Shakai_no_Sekkeiまもなく先進工業国と中国は超高齢化社会を迎え,人口が減少する社会に突入します.これは人類史上かつてない経験であり,そういう環境に果たして人類は耐えられるのか心配する向きも多いと思います.しかし人口が少なくとも平衡状態に達することは歴史の必然であって,それが悪いことであるかのように不安をあおる論者は,たとえ過渡期の歪を強調しているに過ぎないとしても,人類の長い未来に対する洞察を欠いており,思慮が足りないと非難されるべきだと私は強く思います.人口減少社会は事実として確実にやって来るのです.

その社会をどのようにすれば幸福に過ごすことができるのか,一つの方向性を示したのがこの本です.私が最も評価できるのは「幸福」の定義をきちんとすることで,著者の主張は軸がぶれずに常に明確になっていることです.そのうえで著者は人口減少社会の社会経済学を論じています.特に医療費と医療制度に関する洞察は重く,全ての日本人が一読するに値する内容だと思います.

われわれの子供たちが否応無く直面する人口減少社会を幸福な社会にするために,われわれが「今」何をなすべきか,考えさせられる本です.

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台北で地震に遭いました

CA250031-S.jpg今週後半は台湾でお仕事だったのですが,10月15日金曜日のちょうど正午ころ,昼食に韓国料理屋で石焼ビビンバを食べていたところ,妙に足元が上下に揺れだしました.大きなトラックが傍を走っているのかと思いきや,今度は横揺れが始まりました.あっ地震!天井から吊り下げられたランプも揺れています.

というわけで,台湾島の北東(石垣島近海)を震源とするマグニチュード7のかなり強い地震が台湾全土を襲いました.台北は震度4.翌日の新聞によれば,台北市内のMRT(高速鉄道)は一時間ほど運転を取りやめたそうです.台湾は1999年に強い地震に襲われて大きな被害を出しており,その再来を恐れた論調の報道でした.

さて,この写真はホテルの窓から撮ったオフィスビル.手前の大きなビルは,台湾の有名な建築家が設計したビルで,ある漢字をかたどったものだそうです.なんという漢字でしょうか?その右側遠くにそびえる塔のようなビルは,101階建ての超高層ビル101タワーです.もう全階オープンしたのではないでしょうか?

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2004/10/12

東京国際フォーラムのあばら骨

CA250025-S.jpg今日は一日中東京国際フォーラムの上階にいました.東京国際フォーラムはいつも外側から船の骨組みというか,あばら骨をガラス越しに見ていただけで,建物を内部から見たことが無かったので,この光景はとても新鮮でした.しかし,このあばら骨は構造部材なのでしょうか?単に重量を加えているだけのようにも見えます.

あいにくと天気が悪く,とても光が悪かったのですが,ケータイのカメラでもこの程度には撮れました.光が良ければもっと良い写真が撮れたでしょう.最近都心は新しいビルが続々とオープンしていますので,被写体には事欠きませんね.

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2004/10/11

比較文化心理学として日本人の精神構造を分析

戦略思考ができない日本人 中山 治 (著),価格: \714

SenryakuShikou_ga_Dekinai.jpg私自身,特に若いころは,日本人の心理構造やそれに根ざした社会構造,制度に強い違和感を持ち,居心地の悪い思いをしてきた人間でしたが,この本によって日本文化と日本人の心理の深層構造を理解する「座標軸」を与えられた気がしました.

日本人はこの本で指摘された精神構造を無理に変える必要は無いと思います.それはそれでユニークな価値あるものだからです.しかし他の文化の精神構造と比べてどのような特性を持ち,どういう利害得失を持つのかを自覚しておかなければ,国際社会の中で生きていくのはつらいのではないでしょうか.ややもすると,そのつらさを不必要に強い反駁や憎悪や恐怖に転化してしまう恐れがあります.昨今の「右派」の言動はその一端ではないでしょうか?

著者は戦前戦中の「マインドコントロール」を厳しく批判しています.その厳しさに違和感を感じる向きもあるでしょうが,実例が身近にいたりすると,著者の批判の厳しさもわかる気がします.政策的に国民文化という規模で推し進められたマインドコントロールを解くことはきわめて困難であることも,また事実なのですが.

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2004/10/09

台風22号来襲

10月になるというのに,今シーズン最強の台風が,よりによって関東地方をめがけてやってきました.もう台風はうんざりという人も多いと思います.今年は日本の南,赤道北側の海水温が高いために台風が発生しやすくなっているそうです.

日本は先進工業国の中では例外的に自然災害が多い国です.これがわれわれ日本人の精神構造に与えた影響は計り知れません.無常観はどうもこのあたりに原因があるのではないかと思います.例えば親子2代3代に渡って営々と財産を築き上げてきたとしても,一度の大地震,一度の洪水で全てがリセットされてしまう,そういう自然環境の中で私たちの祖先は生きてきました.

今私の部屋の窓の外では,電線がひゅーひゅーとうなり,北東の風に乗って雨粒が叩きつけるように降っています.台風がより近づくにつれて風向きが東から南寄りに変わり,さらに風速が上がってくることでしょう.今夜は風雨の音が激しくてなかなか寝付けないかもしれません.何も被害が無いと良いのですが.

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戦争の犬たち執筆の動機をフォーサイスにもたらした歴史

ビアフラ物語―飢えと血と死の淵から フレデリック・フォーサイス (著), 篠原 慎 (翻訳)

The_Biafra_Story.jpgビアフラ動乱は私が小学生から中学生にかけての出来事だったと記憶しています.そのときフォーサイスは戦場にいてこの悲劇を目撃し,ジャーナリストとして国際社会に虚しく訴えていました.欧米諸国の植民地経営に関する無責任さに怒りを感じていたのだと思います.そのため彼は後年私財を投じてクーデターを計画,傭兵を雇い武器を調達し,これからというところで官憲に見つかり計画は頓挫.その代わりに「戦争の犬たち」を書いた,という逸話はあまりに有名ですね.

ところが最近のインタビューでは彼はこの逸話を「噂話」として否定しています.こうなるともう真相は闇の中ですが,若きフォーサイスにそれほどの義憤を呼び起こさせたビアフラとは何か,フォーサイス渾身の筆致を感じながら読むと,60年代末の植民地経営終焉のころの時代感覚が蘇えってきます.ベトナムでも,カンボジアでも,類似の悲劇は起きていたはずです.

そういうわけで,ビアフラ物語はそれ単独で読むよりは「戦争の犬たち」を読んだ後に読むとさらに理解が深まります.はるか昔に絶版(初版は1981年)となっているため今は古書としてしか入手できないと思いますが,戦後のアフリカ史,欧米の植民地政策史を語る上でも重要なエピソード.フォーサイスの翻訳を数多く手がけてきた篠原慎氏がこの本も翻訳しています.

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2004/10/03

かつて少年だった僕たちへのまばゆいオマージュ

スタンド・バイ・ミー コレクターズエディション ウィル・ウィートン,リバー・フェニックス,他,価格: \2,625

Stand_By_Me.gifこの映画はもう20回以上は見ました.シナリオのスクリプトも印刷して手元にあります.当然サウンドトラックの CD も持っています.原作は映画を見るずーっと前に読んでいました.こんなにはまってしまうのははぜなのか?それは,この映画がかつて少年だった僕たちへのオマージュになっているからではないでしょうか?僕も小学生の頃,夏休みのある日,友達数人と長時間歩いて冒険に行った思い出があります.思春期に入る直前の,少年が少年でいられる最後の日々,その素晴らしさはいつになっても胸にきゅんときます.少年たちはいずれも何かしらの苦悩を抱え苦しんでいます.僕たちもそうだったなぁ.

このコレクターズエディションが面白いのは,メイキングの部分です.監督の Rob Reiner が全編に解説ナレーションを入れた音声トラックがともて面白い.撮影の逸話満載です.大人になった出演者たちのインタビューも実に面白い.えー!これがあの子の成人した姿なの?なんてこともあります.成人後も俳優をやっている子が多いのですね.出演者の中では River Phoenix が若くして亡くなったことが大変残念.不良少年エース役の Kiefer Sutherland が実に良い味を出していることも特筆できます.1960年ころのポップスが全編に流れ,懐かしい思い出をいっそう引き立てます.とびっきりのお勧めです.

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カントリーファンにはたまらないロードムービーの傑作

オー・ブラザー! ジョージ・クルーニー,価格: \3,990

O_Brother_What_art_Thou.gifアメリカ映画の傑作には1930年代の大恐慌時代を扱ったものがけっこう多いです.ロードムービーで言えば「ペーパームーン」が代表作ですし「オズの魔法使い」もその時代のもの.厳しい時代だからこそいろいろな話のネタは作りやすいし,癖のある登場人物もいかにもありそうで楽しめます.

さてこの映画には,普通のカントリーファンでもなかなか聞く機会の無い Deep South の泥くさーい音楽がたっぷり詰まっていて,それだけでも買う価値は十分.しかも現在人気のカントリーのアーティストたちの曲が要所要所に配置してあり,サービス精神も十分です.特にこの映画の主題歌ともいえる "A Man of Constant Sorrow" は映画の中でこそジョージ・クルーニーたちの歌ですが,歌そのものは Union Station のリーダ Dan Tyminski の吹き替えで,米国では大ヒットしたことが記憶に新しいです.そのほか Alison Krauss や Emmylou Harris などの歌声も楽しめます.

ただし英語は南部訛りというのでしょうか,とても癖がある英語で聞き取りにくく,普通の日本人であれば字幕で楽しんだほうがよさそうです.

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