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2004年11月

2004/11/28

比較制度分析を学ぶための序論

経済システムの進化と多元性―比較制度分析序説 青木 昌彦 (著),価格: \1,785

Progress_And_Diversity_Of_Economic_Systems.jpgスタンフォード大学の青木昌彦教授が95年に著した本です.青木教授と言えば「比較制度分析に向けて」という大著が有名ですが,この本はアカデミアの専門家向けで,数理経済学の素養とゲーム理論などの最新の経済学のツールを知らないと読みこなせません.一般の読者にはとても歯が立つ代物ではないので,まずはこの本で序論を学ぶとよいと思います.

この本ではコーポレートガバナンスを一貫して主題として扱います.著者は日本のメインバンク制度とアングロ・アメリカンの株主中心のガバナンスを対比させ,ときにはゲーム理論を用い,制度というものの本質を丁寧に説明してくれます.日本の制度が決して劣っているわけでも,発展段階が遅れているわけでもないと説明した上で,しかし今日のグローバルな経済体制の中で,どのような方向性の変革をすべきかという提言も行っています.この本を読むと経済学にも頼もしい発展があるとわかってうれしくなってきます.制度というものの本質を理解した上でこそ,現実の改革の議論が実りあるものになることでしょう.

経済学を学ぶ学生・研究者,経営者,そして全ての企業人にお勧めです.ただし日本語が読みやすいとはいえないので,通勤電車の中での立ち読みはつらいかも.

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2004/11/27

黄葉

CA250035-S.jpg今年は台風が多数上陸して強い風雨をもたらしたせいで木々の葉がかなり痛んでいたようで,例年よりは紅葉が美しくないように思います.毎年楽しみにしているユリノキの紅葉もいまひとつでした.関東地方ではちょうどここ数日がイチョウの黄葉のピークです.例年よりは1週間ほど遅れていると思います.これは松林の中にひっそりと立つイチョウの黄葉.周りの緑陰とのコントラストが見事なのでケータイで写真に撮りました.

ケータイのカメラはいつでも取り出して気軽に取れるのは良いのですが,ホールドが難しくて手ブレしないようにするのはなかなか難しいです.普通のカメラのように顔に押し付けて息を止めるという手法が使えないため,両手で構えて何とかぶれないように祈るばかり.何か良い方法は無いでしょうか?

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2004/11/25

チームで発想するための刺激的な事例集

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法 トム・ケリー (著),価格: \2,625

The_Art_of_Innovation.jpg数年前にスイスのビジネススクールのクラスでアメリカのニュース番組のビデオを見せられました.あるデザインファームが5日間で新しいショッピングカートをデザインするというものです.スタッフはいくつかのグループに分かれ,まずはショッピングセンターに取材に行き,ショッピングカートがどのように使われているかを克明に観察します.それから数回のブレイン・ストーミングを経てプロトタイピングが始まります.五日目の夕方には,ちゃんと完成されたショッピングカートが完成し,お披露目となります.

これが世界的に有名なデザイン工房IDEO社の面目躍如たる実例の一つです.このショッピングカートのプロジェクトの各プロセスに発想法のエッセンスが含まれています.それを文字で表現し,様々な実例を紹介したのがこの本です.

私が最も興味を持ったのはブレイン・ストーミングの方法論です.日本では下手をすると,全員で合宿してアイデアをまとめ上げる,という作業をブレイン・ストーミングと思いがちですが,IDEOでは一回のブレイン・ストーミングはわずか一時間.ただしそれを毎日のように繰り返します.日本のそれはアイデアを生み出すというよりは,むしろアイデアのすり合わせ作業なのかもしれません.

題材は工業デザインですが,チームで新しいことを発想するための新鮮なアイデアが一杯です.全てのビジネスパーソンに勧めますが,頭の固いおじさんたちにこそ,よく読んでもらいたい本の一つです.

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2004/11/23

日本が誇る地形画像表示ソフトの傑作

カシミール3D パーフェクトマスター編 杉本 智彦 (著),価格: \2,730

Kashmir_3D_Perfect_Master.jpgすでに90年代初頭に,パソコン通信NIFTY-Serveの山と地図のフォーラムFYAMAPでは「やまおたく」という山岳展望シミュレータが多くのファンを引きつけつつありました.ある地点からこれこれの方角を見ると,どのような山々が見えるのかをコンピュータ上に展望図として示してくれるものです.その後,Windows95の時代に入って本格的な展望シミュレータとして現れたのがこの「カシミール3D」です.このフリーソフトはその後もFYAMAPの先進的なユーザの支援を受けながら成長を続けていきました.

その間に(旧)国土地理院が50mメッシュの全国デジタル標高データを一般向けに発売したインパクトは極めて大きいものがあります.従来国家的インフラとして莫大な国家予算を投じて調査・分析されてきた国土地形データが,軍事や行政専用ではなく一般市民に開放されたことによって,日本は世界最先端の地形データ利用国に躍り出ました.「カシミール3D」はその最右翼の尖兵です.これはある意味,官と市民の最良の合作ではないでしょうか.規制が緩和されるとどのようなことが起きるのか,非常にうまくいった例のひとつと言えるでしょう.

カシミール3DはGPSとの連動などの新たな機能を加え,さらに大きく発展しています.これは日本が世界に誇るフリーソフトです.この本は前作2冊と合わせてインストールすることにより,日本全国の地形データが一通り使用できるようになっています.山岳展望マニアならずとも,御自分の住んでいるところからどのような山々が見えるのか,確かめてみてはいかがでしょうか?夕暮れ時の風景など,写真と見まがうばかりの映像が得られて感激します.お勧め!

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2004/11/21

石油・天然ガスは国際自由市場の商品,だが地政学の呪縛も強い

世界を動かす石油戦略 石井 彰,藤 和彦 (著),価格: \735

Sekai_wo_Ugokasu_SekiyuSenryaku.jpgタイムリーな本ですが,エネルギーの上流部門を産業として持たない日本で,この本の内容がどれほど理解されているかは大変疑わしいと思います.興味を持つ読者数も相当限られていることでしょう.政治家も官僚もジャーナリストも上流部門には大変疎い,それに繁栄を依存しているにもかかわらずです.

この本で学んだことは以下の二つです.まず第一点は,石油は第二次世界大戦を引き起こしたときのような戦略物資ではなく,世界的な市場で相場によって自由に売買され輸送される商品であることです.いまや地政学的な見方は時代遅れです.石油がほしければ端末のキーを叩くだけなのですから.パイプラインが無くともタンカーの輸送コストは十分に低いので日本も特に不利な立場には無いというのが重要な点です.

CO2削減に応えるために需要が増している天然ガスでは事情が異なります.パイプラインが張り巡らされたヨーロッパでは石油と同じような自由市場の商品になりつつありますが,日本は生産地とパイプラインがつながっておらず,大変高コストのLNG輸送に頼らざるを得ないのです.日本は国内にすら天然ガスのパイプラインがありません.自由市場の商品とは言いがたいのです.COP3の政治的意味を考えるとこれは大変な負のポテンシャルです.ヨーロッパは天然ガスに対する有利な立場を最大限活用して,今後COP3に対する政治的イニシアチブを高めてくることでしょう.

そして第二点は,昨今のパイプライン敷設ルートの駆け引きを見ると,古めかしい地政学的戦略が再び頭をもたげてきていることです.ロシアは中央シベリアに埋蔵されている豊富な石油・天然ガスを国際的に有利に売りさばきたいのですが,パイプラインを直接日本海に出すか,これからの大消費地中国を経由するのか,戦略を練っていることでしょう.当然サハリンとの関係も含めて.

環境保護勢力がアラスカでやったようなイニシアチブをシベリアとサハリンで再現するようなことが出来ればまた構図が変わってくるのですが,経済マフィア国家のロシアでは当分無理かも.サハリンの豊かだが脆弱な自然はもう取り返しがつかないかもしれません.

うーん,日本のエネルギー政策はあまりに原子力に偏りすぎたなぁ.エネルギー上流部門に無知な官僚が,国民的議論を蹴散らして原子力に賭けてしまった結果がこれです.そのツケがこれから回ってきそうで憂鬱になります.

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2004/11/20

現代経営学にとっての必須の一般教養

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき クレイトン・クリステンセン,他(著),価格: \2,100

the_innovators_dilemma.jpgあまりにも有名な経営学と技術経営の本です.ビジネススクールでの課題図書や企業内研修でも読まされた人は多いことでしょう.今やこの本は現代の経営について議論する際の最低限の一般教養の一つとなっています.この本の出現で「破壊的技術」という用語の定義が大きく変わってしまったので,現場ではいまだに混乱が見られるほどそのインパクトは大きいものがあります.いやはやたいした本ですね.

私が若い人たちに教える際には,技術の進化する速度がニーズが進化する速度よりも大きい際に,破壊的技術が生まれる場合がある,と教えることにしています.「場合がある」と限定することは重要です.なぜならこの本は述べていることに一般性があるわけではないからです.特別に条件が整ったり,特別にうまい実践ができた場合にのみ破壊的技術は成長します.それにしてもHDDの歴史は何とそれに当てはまることでしょう!

著者のクリステンセンはその後も同僚たちと研究を続け,破壊的技術の理論はさらに発展しています.この本の続編というべき「イノベーションの解」も続けて読むと良いでしょう.

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一歩先へと進むRhonda Vincent

One Step Ahead, Rhonda Vincent,価格: \2,030

Rhonda_Vincent-One_Step_Ahead.gifBack Home Againで原点へ回帰したRhonda Vincentですが,このアルバムでついにアルバムタイトル通り一歩先へ前進した!と思っているのはこの私だけかなぁ?

抜群の歌唱力は相変わらずながら,ブルーグラスを一歩も二歩も前に推し進める力は大したものです.Alison Kraussをゲストに迎えた"One Step Ahead of The Blues"もとても良いのですが,"Pathway of Teardrops"もしっとりと聞かせます.情に流されないぎりぎりのところで踏みとどまって,ブルーグラスの未来を切り開く彼女に拍手!

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2004/11/17

外苑銀杏並木は黄葉いまだし

CA250034-S.jpg本日,東京青山の外苑前を通ったのですが,銀杏並木はまだ緑色が濃く,本格的な黄葉はまだ少し先のようです.例年東京の銀杏の黄葉は11月23日の勤労感謝の日前後のことが多いので,それほど平年からずれているわけでもなさそうです.

 しかし今日の日中は結構暖かく,地下鉄では冷房が入っていました.それでも朝晩はかなり冷え込み,コートが無いと寒いくらいです.霜が降りるようになるのもそう先のことではないでしょう.いよいよ冬が近づいてきました.

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2004/11/13

あるがままを受け入れられない西洋にとっての大発見

自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 スチュアート・カウフマン(著),米沢 富美子(翻訳),価格: \2,625

LawsOfSelfOrganizationAndComplexity.jpg自己組織化などというものは,東洋にとってはごく自然で当たり前のことのように思うのですが,因果関係をきちんと整理しなければならない西洋にとっては一大事のことのようです.原因もないのに物事が勝手に生起してはならないのでしょう.ところが自然界ではごくわずかの揺らぎが指数関数的に成長し,それらがエネルギーを散逸しながら非線形に干渉しては新たな構造を生み出しています.乱流は古典力学にすらある古くからの例ですが,究極の姿は生物ではないでしょうか?

私がこの本を読んだのは出版直後でしたが,流体力学で乱流を学んだ者にとっては取り立てて新しいことはありませんでした.しかしそれでもこの本は十分に楽しめました.化学反応のネットワーク,局所最適化などは汎用の使い出がある考え方です.

ただし,この本の著者のカウフマンが反ダーウィニズムの論者であることを知って読むと,また別の読み方ができます.ダーウィニズムとは,『中立でランダムな揺らぎ+環境との相互作用で決まる繁殖率の差異による淘汰』によって進化のメカニズムを説明する立場のことです.私にとってはダーウィニズムは一種の普遍的アルゴリズムであり神が仕込んだ宇宙的原理とすら思えるのですが,カウフマンたちはこれが気に入らず,別のメカニズムで進化を説明しようとあの手この手を繰り出してきて,その一つが複雑系ということです.しかし複雑系の原理は揺らぎの生成の初期段階を説明できるだけであり,ダーウィニズム全体へのカウンターパンチにはなりえていません.

とにかく西洋の哲学的枠組みでは,中立でランダムな揺らぎがよほど性に合わないらしく,揺らぎの生成にすらどうしても因果律を持ち込みたくて仕方がないようです.自分たちの哲学的枠組みが西洋の特殊な歴史経路に依存しており,世界には古くから他の哲学的枠組みも存在していると考えることができない,まさに西洋の伝統的知の限界を感じさせるエピソードにもなっています.

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2004/11/07

一皮むけた区切りのアルバム

Back Home Again Rhonda Vincent,価格: \2,030

Rhonda_Vincent-Back_Home_Again.gifアメリカでは人気があっても日本では知名度が低いアーティストは多いのだと思いますが,彼女もその一人ではないでしょうか?彼女はかなり長いキャリアを持っているブルーグラスの実力派シンガーですが,日本のレコード店ではほとんど見かけません.もったいないです.

このアルバムは心機一転という雰囲気が伝わってきます.アルバムタイトルの「Back Home Again」は「原点回帰」という意味が込められているのでしょう.これまでの様々な試行錯誤からは距離を置いて,ブルーグラスの真髄に回帰して,そこに新しい境地を切り開こうとしてるようにも感じます.とにかく歌唱力は申し分ないので,一聴をお勧めします.私はこのアルバムで Ronda Vincent に開眼しました.

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2004/11/06

戦場のリアリズムと,大切なものに捧げる命の尊さ

プライベート・ライアン Steven Spielberg (監督)

Saving_Private_Ryan.gifこの映画はまずビデオを買って,まずそのリアリズムに度肝を抜かれ,DVDも買って何度も何度も反芻して見ている映画です.

特筆すべき点は二つ.まず戦場のリアリズムを徹底的に追求しています.これは様々なWEBサイトで語りつくされているので省略しますが,階級ごとの軍服や装備の区別,銃の作動音の差異などもきちんと再現されているそうです.また戦闘シーンがあまりにリアルなため,アメリカでは退役軍人たちが戦場の悪夢を思い出して苦しむ事例が多発し,在郷軍人会がその対策に乗り出すなどのエピソードもありました.

もう一つは前半で本国の司令官が取り出して読むリンカーンの手紙.これは大切なものに捧げる命の尊さを述べたものですが,これがこの映画の大切な伏線となっています.なぜ一人の二等兵のために七人の兵士が命を危険にさらさなければならないのか.トム・ハンクスが演じるミラー中隊長も元は平凡な一市民.その兵士が妻に誇れる帰還の仕方とは何か?兵士が兵士に捧げた命であると同時に,アメリカという市民社会が同じ市民国家であるフランスに多数の命を捧げたというメッセージも読み取れます.しかしこの映画の冒頭とラストの星条旗は全く興ざめですね,スピルバーグともあろう者が.

いずれにせよ,戦争映画が「プライベート・ライアン以前」と「プライベート・ライアン以後」とに分類されるほどのインパクトを持った作品であることは間違いありません.

往年の名作「史上最大の作戦」や「パリは燃えているか?」と合わせて鑑賞するとさらに興味は深まります.前者は,プライベート・ライアンの冒頭のシーンに至るまでの米英軍のイライラと,迎えるドイツ軍のもやもやした不安がよく伝わります.昔は戦争娯楽映画と思って見ていたのですが,なかなか骨太の戦争映画だったことがよくわかります.

後者はノルマンディーの後,パリが解放されるまでをパリ市民の目で描いたものです.一向にパリ開放にやって来ない連合軍をやきもきしながら待ち続けるレジスタンス活動家たちと,パリ爆破を思いとどまったドイツ軍司令官の人間性がよく表現されています.戦後フランス映画スター総出演なのがすごい.

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2004/11/03

こ,これは何だ?

Kasama_03Nov2004-020.jpg笠間に行ったときに,会場の一角(会場は広い丘陵地帯の中にあり,その中の遊歩道の一角)で見かけた奇妙な物体.森の中からニョキニョキと生えてきた異様な生物群に見えますが,これは実は陶器のオブジェ.このあたりにはこのようなオブジェが配置されて,『野外陶芸美術館』のようになっています.

昼間だったらまだ判別ができるのですが,夜にこういうところに迷い込んだりしたら,パニックになるかも.

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休日は笠間で陶器選び

Kasama_03Nov2004-002.jpg今日,文化の日はお天気が回復傾向だったので,ちょっと足を伸ばして茨城県笠間市の陶器のイベントに出かけました.ちょうどイベント広場でお祭りをやっており,陶磁器,石細工,食べ物の出店がテントを連ねて大変にぎやか.その中で私が選んだのは素焼き風のビヤマグ(写真)一つと,ぐい飲み二客.今日はこれで晩酌です.

笠間の陶器は特定のスタイルがあるわけではなく,全国(一部外国からも)移り住んできた陶芸作家たちが思い思いの作品を作っている場所なのでスタイルも千差万別.だからこそこのようなイベントではものすごいバラエティが楽しめます.生活雑器から芸術作品まで,茶器から晩酌セットまで何でもあります.

笠間は首都圏からはちょっと離れており人出もせいぜい茨城県内からなので,東京や神奈川のように混雑することもありません.それでも数箇所ある広い駐車場が満杯になっていました.半年に一度くらいは訪れている場所なのですが,とても気楽に楽しめる良い所です.

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