« ダーウィニズムはアルゴリズムである | トップページ | ファンの期待を裏切らない珠玉の短編集 »

2004/12/18

うまく泣かせるアイドル映画

初恋のきた道 チャン・イーモウ(監督),価格: \2,625

The_Road_Homeいまや世界的に有名な映画監督となった張藝謀(チャン・イーモウ)の最近の三部作のうちの一作「初恋のきた道」です.ベルリンの金熊賞を受賞し日本でも大変にヒット,いろいろなメディアで好意的にレビューされました.他の二作は「至福のとき」と「あの子をさがして」で,これらも大変好意的に受け止められました.これで「赤いコーリャン」や「菊豆」で知られるようになったチャン・イーモウの名前が日本でも完全に定着することとなりました.

基本的には「純愛モノ」なのですが,それを寒村への下放青年の教育にかける情熱と絡めているのがうまいところです.20世紀中盤の中国華北地方の農村の風俗も垣間見ることが出来て大変興味深いものがあります.綿入れの衣服しかり,学校を建てる男たちに差し入れる弁当の出し方しかりです.また割れた陶器を修理するやり方は日本の古いやり方と全く同じです.黄葉の美しさも繰り返し強調されていました.これには黒澤に通じる美学を感じます.

終盤で,教師の息子が父親に倣って教壇に立って教科書を朗読するシーンは,その直前の母親の台詞から,こういう泣かせるシナリオ展開もあるなーと思っていたところに,まさにその通りに話が展開して,私は不覚にも涙をこぼしてしまいました.まさにチャン・イーモウにまんまとやられてしまったというわけです.

しかし全体としてこれは「アイドル映画」でしょう.主演女優のチャン・ツィイーをいかに可愛く見せるかに心血が注がれた(笑)プロモーション映画といっても過言ではありません.彼女が村の道を駆けるシーンは可愛く見せるための演技指導が相当はいったように見えます.彼女が自宅の入り口で恋人を迎えるシーンはその極め付けで,何カット撮ったことか想像すらつきません(笑)!

その後チャン・ツィイーも一流の女優として活躍していることを考えると,この映画は中国の監督と俳優のプレゼンスを向上させることに大いに貢献したことは間違いありません.しかし配給時のタイトルは"The Road Home"であり「家路」ではありません.ハリウッドのしたたかさは大したものです.

| |

« ダーウィニズムはアルゴリズムである | トップページ | ファンの期待を裏切らない珠玉の短編集 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: うまく泣かせるアイドル映画:

» 初恋のきた道 [キャバリア映画館]
2000年    中 国・アメリカ 監  督     チャン・イーモウ 出  演 [続きを読む]

受信: 2005/01/29 13:10

» DVDにて 初恋のきた道 (原題:我的父親母親、英題:THE ROAD HOME) [xina-shinのぷちシネマレビュー?]
TSUTAYAでレンタルしてきました。 実はあまり「チャン・ツィイー」のことは知りませんでした。 アジエンスのCMで出ている娘が「チャン・ツィイー」だとこの間... [続きを読む]

受信: 2005/01/30 17:12

» 「初恋のきた道」 [ひらりん的映画ブログ]
チャン・ツィイーのデビュー作。 見よう見ようと思ってて、忘れてましたっ。 こちらも「ひらりんのお蔵入りしそうな作品リスト」の中からの脱出作品。 (リストの中で「... [続きを読む]

受信: 2005/03/20 03:29

» ★「初恋の来た道」 張芸謀(チャン・イーモウ)監督作品 【米中合作】 [風の吹くまま〜昨日、今日そして明日]
原題:「我的父親母親」  英語タイトル:「The Road Home」  個人的には、英語タイトルがもっとも物語にあっているのではないかと思う。  監督の張芸謀(チャン・イーモウ)は、この作品で「ベルリン国際映画祭金熊賞受賞」。『紅いコーリャン』では「ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞」。『菊豆』と『紅夢』で2度の「アカデミー外国語映画賞ノミネート」。『紅夢』で「ベネツィア映画祭銀獅子賞」。『秋菊の物語』と『あの子を探して』で2度... [続きを読む]

受信: 2005/11/01 00:59

» 不治の病?SAYURI病〜そしてアン・リー監督のこと [万歳!映画パラダイス〜京都ほろ酔い日記]
 「SAYURI病」が治らない。21世紀のサユリストになってしまったようだ。アーサー・ゴールデンという人の原作本「さゆり」(文春文庫、上下)も買ってきた。これが非常に面白い。もとの京言葉、花街言葉を再現しているから、映画とはまた違った楽しみ方ができる。米....... [続きを読む]

受信: 2005/12/15 16:21

« ダーウィニズムはアルゴリズムである | トップページ | ファンの期待を裏切らない珠玉の短編集 »