現代経営学にとって必須の教科書
モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 青木 昌彦 (著), 安藤 晴彦 (著),価格: \2,940
産業のモジュール化の大きなうねりが世界中を席巻しています.過去20年間にわたりPC互換機の発展を目の当たりにしてきた私たちにとっては,それは大変強大で避けがたい波に見えます.すなわち,IBM PCは当初からオープンでモジュール化されたアーキテクチャであったために,あっという間に解体され,IBM自身には利益をもたらさなかったものの,世界中に膨大なビジネスを生み出しました.そういえばつい最近,IBMはPC事業を中国企業に売却することを決定しました.
しかし一方で日本の車作りに目を向けると,統合型アーキテクチャの製品も相変わらず強い競争力を保っていることに気がつきます.日本のデジカメも然り.特にデジタル一眼レフは,おそらく日本のカメラメーカにしか作れない代物です.人々を満足させる画質は撮像素子とレンズのすり合わせの妙から生まれます.シャッター音一つ,手に持ったときの微妙な質感にケチをつける消費者に答えるには,一機種ごとに部品間の微妙なすり合わせ(全体最適化)が必要で,これらはモジュール化された製品に対応できるレベルではありません.世の中モジュール化された製品ばかり元気が良いわけではないのです.
モジュール化が我々にどのような衝撃を与えるのか,それに対処するにはどのようにすればよいのでしょうか?あるいはもっと積極的にモジュール化を経営に生かすにはどのようにすればよいのでしょうか?
この本は,モジュール化の長所と短所,産業や経営にもたらすインパクト,具体的な対応方法などについて,世界一流の識者たちの解説と意見がぎっしりと詰まった玉手箱です.今日の経営にとって,モジュール化の意味を知らないままでいることは致命的であり,そのインパクトの大きさは「イノベーションのジレンマ」に述べられた破壊的技術以上のものがあると言って良いくらいです.多様な執筆者群の多面的な解説は大変参考になり,経営改革への刺激を与えてくれます.全てのビジネスパーソンにお勧めの良書,というより必須の教科書です.読むべし!
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