何という洞察と慧眼!しかし理論と実践のギャップは大きい
イノベーションへの解―利益ある成長に向けて クレイトン・クリステンセン (著), その他,価格: \2,100
前作イノベーションのジレンマはビジネス書としては世界的な大ベストセラーになり,ビジネススクールや企業内研修では必須の課題図書となり,そして何よりも「破壊的技術」という言葉の定義を変えてしまうほどのインパクトがありました.
本作品はその続編なのですが,前作が破壊的技術の脅威が身辺に及んでいることを警告する内容であったのに対し,破壊的技術をいかに味方につけて応用すればよいのか,しかもそれを組織の業務プロセスにまで組み込むにはどうすればよいか?という大変困難な課題に対する「理論構築」の書となっています.これが理論であることは著者自身が繰り返し述べていて,勘と経験ではなく理論に基づく経営をしようという呼びかけには,いかにも学者らしい良心を感じます.理論とはいえその内容は自身や同僚との長年の研究成果,そして自身の経営者としての経験に基づく洞察と慧眼に満ちていて,世界中の全ての経営者に読んでほしいと思わせるレベルです.
しかし破壊的技術が成功するのは極めてまれであり,それはとりもなおさず実践が生易しいものではないことを物語っています.この本を羅針盤にして新事業の海に漕ぎ出す人たちも多いと思いますが,海図と現実の航海の差はあまりにも大きいと言わざるを得ません.そのギャップを具体例をもって埋めていくのが現実世界の経営なのですが,その成功と失敗の実例が数多く紹介されていれば,さらに魅力のある本となったことでしょう.
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