軽妙な毒が心地よい社会学入門
反社会学講座 パオロ・マッツァリーノ(著), 価格: \1,500 (税込)
表紙のイラストが目を引きますが,内容にはちょっと不釣合いです.著者はイタリア系日本人,あるいは日系イタリア人,らしい・・・とにかく謎です.カタカナの著者名に気を取られていると,まさに現代日本的なギャグに足元をすくわれます.私が最も受けたギャグは環境問題に関するコメント「あちらを立てればこちらが立たず,EDの3Pみたいなものです」ぶはっ!
こんな調子で世の中の社会学的「通説」をめった切りに,それも軽妙な毒をこめてばたばたとなぎ倒してくれるのが実に爽快です.少年凶悪犯罪しかり,少子化問題しかりです.ちなみに戦後日本で少年の凶悪犯罪がもっとも多かったのは,昨今の少年犯罪を憂う今の60代が少年だった頃だとか・・・とにかくマスメディアにはびこる「社会学」の俗説がいかにいい加減なものかということを,日本の活字文化のお約束を無視して言いたい放題に打ちのめしてくれるのが実に痛快です.
どうも著者は日本の既存勢力(オヤジのことです)の真の実力の無さというものをとっくに見透かしていて,それを「社会学」という側面からチクチクといじめているようにも見えます.それはライブドアの堀江社長の自由奔放(と日本では受け取られていますが)な既存勢力との対決姿勢にも通じるものがあって,これは面白いことになりそうだという期待を持たせる内容になっています.
著者がどれほど社会学のアカデミアに通じているのかはわかりませんが,おそらくアカデミアからは無視されているのだろうと思います.しかしアカデミアが本当にそれでよいのかと問われれば,そうではないというのが答えでしょう.著者がこの本の中で提起してる問題点は一つ一つ吟味するに値します.特に教育の国家戦略に関する考察は,昨今の短絡的な学力増進キャンペーンに深刻な反省を強いるものです.
この内容でこの価格は大変お買い得.ページ数と軽い紙質から通勤電車の中での立ち読みも苦になりません.
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コメント
誤解の無いように付け加えておきますが,私はこの著者の社会学的解釈がすべて正しいと言っているのではありません.著者は巷のメディアと同じようにいい加減に社会学を使うと,こういう結論だって導き出せるのだという悪しき実例をたくさん示しているわけで,それは著者自身が警告している通りです.メディアリテラシーとかメディアに対する免疫力をつける良い訓練になっています.まあ,それにしても一理,いや二理くらいはありそうですが.
投稿: 俊(とし) | 2005/02/28 22:42