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2005年4月

2005/04/30

複雑系から見た進化生態学

持続不可能性―環境保全のための複雑系理論入門 サイモン レヴィン (著), Simon A. Levin (原著), 重定 南奈子 (翻訳), 高須 夫悟 (翻訳),価格: \2,940 (税込)

Simon_Levin-Fragile_Dominionこの本は非線形力学系(すなわち複雑系)に通じた数理生態学の専門家が,その視点から進化生態学を論じた本です.しかし数式が一切無くあくまで一般の読者を対象にしているので,書店では一般啓蒙書の分類がされていると思いますが,内容はかなり高度です.しかもこの分野の過去の思想や研究の系譜がある程度頭に入っていないと理解できない文脈も含まれています.例えば"ガイア仮説"に関する批判がそれに当たりますが,これはラブロックの本(例えば"ガイアの時代""地球生命圏"など)を読んでいないと理解することは困難でしょう.またカウフマンの著書"自己組織化と進化の論理"も著者が引用している通り,この本の内容を理解するための下地としては重要です.

まあそのようなこともありますが,この本の著者が繰り返し主張していることの本質は,生態系は目的論的進化はしない,進化も適応も,局所的に個体のレベルで起きたものが,繁殖率の差によって個体群内に局所的に伝播するだけであって,生態系全体が一つの有機体であるかのように考えることは誤りということです.これはかなり強い主張であって,では中枢神経形を持った生物,例えば人間,の体内の細胞生態系もそのようになっているのか?と問いかけたくなりますが,自然生態系に内分泌系や中枢神経系のような系全体を対象とした指令・フィードバック系が無いという前提では,著者の主張は当然正しいものです.

この主張の帰結として,地球生態系を守るためには,個々の人間や組織に対する適切なインセンティブが必要であるという結論が導き出されますが,これはなにも進化生態学を持ち出さずとも,市場原理の導入や経済的インセンティブとして従来から言われていることの繰り返しに過ぎず,竜頭蛇尾の感が強いです.

どうも著者は,正統派アカデミズムの立場から,擬似科学としての観念的エコロジーや非西洋思想由来の自然観に警鐘を鳴らしているのではないかという気もしますが,和訳のタイトルの不適切さとあいまって,この本の主張と意義がぼやけてしまっているのが大変残念です.もっと,非線形力学系としての生態系の特質に話題を絞って議論を展開したほうが,はるかに価値の高い本になったのではないでしょうか?複雑系から見た進化生態学としては非常に質が高く読み応えのある本です.

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2005/04/24

歌唱力と官能の絶妙のバランス

Single White Female [FROM US] [IMPORT] Chely Wright, 価格: \1,236 (税込)

Chely_Wright-Single_White_Femaleこれほどの歌い手が日本でほとんど知られていないというのは,本当にもったいないことです.カントリーポップの女性歌手としてまず第一級の部類に入ることには,誰しも異論の無いことでしょう.抜群の歌唱力と情感表現が見事に調和しており,聴けば聴くほど官能的な快感を覚えます.また曲のアレンジが現代的で非常に洗練されており,彼女の声の特質を十二分に生かしたものになっています.特に第二曲目の "She Went Out for Cigarettes" は抜群の出来です.ルックスもなかなかなので,アメリカでは非常に人気が高いのではないでしょうか?

このアルバムには良い曲ばかりが収められており,それが彼女の実力とあいまって聴く者に至福の時を与えてくれます.それなのに Amazon.com のレビューに五つ星が無く,全体に辛めの評価になっていることが私には全く解せません.文句なしの五つ星です.

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またアンプが不調

DENON_PMA-201SAまたアンプが不調になりました.DENON のミニコンポ Presta シリーズのプリメインアンプ PMA-201SA です.購入したのは3年ほど前.購入後半年ほどで左チャネルからの出力が極端に弱くなりザザーというノイズが入るようになりました.特に電源投入直後にこの症状が強く現れ,2,3時間ほど鳴らし続けると直ることもあるのですが直らないこともあり,また右チャネルからのヒスノイズも強めです.これまで3度も修理に出し,毎回帰ってきた直後には調子が良いのですが,数ヶ月使うとまた同じ症状が出るということの繰り返しです.これから4度目の修理に出そうかどうしようか悩んでいるところです.あーぁ,いやんなっちゃう.

症状を自分なりに分析すると,左チャネルのどこかの伝送路で信号線がわずかに浮いている,高インピーダンスになっていると判断できます.これは出力が極端に弱いこと,アンプへの入力が高インピーダンスになっているときに特有のノイズが乗っていること,それでも鳴らし続けると信号線の接触状態が良くなってきて途切れ途切れに音が出てくるようになることから明らかです.しかし3度も修理に出して直らないことは非常に不満です.おそらく部品実装レベルではなく,部品内部で断線しかかっているために症状の再現と原因の特定が難しいのではないかと推測しています.サービスセンタの担当者も毎回頭を悩ませていることでしょう.

もう一度修理に出すか,新品との交換を要求するか,自腹で新品を買って悩みを解消するか,はたまた思い切って上級機種に買い換えるか・・・悩みは尽きません.PMA-SA1 欲しいなぁ.

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2005/04/20

ローマ法王選出

先日ポストしたローマ法王死去のニュースのあと,コンクラーベという日本語のような儀式を経て新しいローマ法王が選出されました.今度の法王は78歳のドイツ人.ちょっと高齢なのが気になります.

面白いと思ったのはカトリック世界と世俗権力の地理的関係です.宗教は国境に関係なく国をまたがって信者を持ち,彼らに共通のメッセージを伝え,国境によって分断されている世俗権力とは別の軸の権力を行使しています.これが中世ヨーロッパから延々と続く宗教対世俗の権力闘争なのです.しかし・・・

この新しいローマ法王の選出が伝えられると,出身地のドイツでは首相自ら祝福を述べ,新法王がドイツ出身であることを誇りに思う旨のコメントが出されました.国境など関係ないはずなのですが.しかもドイツではカトリック教徒は少数派.そもそも宗教改革でローマンカトリックに反逆したのはドイツの改革派たちだったはず.今回の法王は超保守派と言われているだけに,ドイツのキリスト教徒にとっては必ずしも歓迎すべからぬ相手のはずなのですが,まずは自国人がカトリックの最高権力者に選ばれたことを素直に喜んでいるように見えます.

権力構造の軸は異なるものの,これら二つの軸は完全に直交しているわけではなく,かなりの平行成分を持っていることが見て取れます.仮に日本人がローマ法王に選出されたらどのような反応が起きるのか,大変興味深いです.

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2005/04/09

反日サイバー攻撃か?

リンク: Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 外務省HPがパンク…反日サイバー攻撃か
なかなか対応が難しい問題ですが,グローバルリアリストを自認する私としては,以下の対応を取るように提案したいと思います.

(1) 首相官邸や外務省など,中国からのサイバー攻撃の対象と目されるサイトに対するドメイン別のアクセス制限をする.過激なやり方が許されるのであれば ".cn" ドメインからのすべてのアクセスを拒否する.ただしこれは中国からのすべてのアクセスを拒否することになるのであまり現実的な解ではない.

(2) 首相官邸や外務省など,中国からのサイバー攻撃の対象と目されるサイトのキャパシティを極端に大きくする.彼らの想像を超えるキャパシティを用意しDNSサーバへ適切な情報を設定すれば,ネットワーク上のボトルネックは中国から世界に出るところに発生するので,日本国内での障害は発生しない.この方法の欠点はひたすらコスト.ギガビットルータと高性能サーバをを数多く設置するコストは馬鹿にならない.

(3) 中国向けに中国語によるPRサイトを設置する.これが最も現実的かもしれない.中国当局により直ちにブロックされてしまうかもしれないが,メーリングリストの形式を取るなど工夫のしがいはある.香港や中国国内に偽装中継サイトを設けることができれば効果は大きい.中国国内の政治的不満の捌け口が日本に向いている傾向は否定できないので,このサイトを有効に活用して,かつてのVOAと同じだが,できる限りの親日プロパガンダを張ることが現実的ではないだろうか?

まあ,中期的には中国という国がどのように民主化されるか,ということが本質的ですが,それまで日本が待てるかどうか,なかなか難しい問題ではあります.日本も外交音痴の傾向は否めないのでとても心配.

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さくらさくら

Along_The_Inarigawa_09Apr2005_017今年は新年から寒い冬が続いたので春の到来が遅れていましたが,ここへ来て急に気温が上がり,今はウメもコブシもサクラも同時に咲いています.まるで北海道のよう.関東では珍しいことです.

今日は昨日ほどは気温が上がらず非常に快適.日なたを2時間ほど歩いてもそれほど汗ばみません.近所の川沿いの桜並木はまさに今が満開.近所の人たちがポツリポツリと花見に訪れていました.サクラの木の下でピクニックをしているカップルも2,3組.これが東京近郊だったらすごい人出になるところですが,桜並木を歩いてもたまに人とすれ違うくらいで済むのが田舎の良いところです.宴会やカラオケの喧騒とも無縁の,日本本来の春を楽しむことができました.

ついでにコブシの写真も紹介しましょう.コブシは木々が芽吹く前,森に最初に春を告げる花です.まだ殺風景な森の中に白いパッチがいくつか見えるので遠くから見てもすぐにわかります.例年だとコブシの花が散ってからサクラが咲き始めるのですが,今年はそれが同時に見られます.川面にはオオバンだけが残り,カモは去ってしまいました.サクラが葉桜になると日本のはるか南西から湿った空気が流れ込み,アジアモンスーン地帯の東の端のこの国に短い初夏がやってきます.
Along_The_Inarigawa_09Apr2005_031

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今だから作れたベトナム戦争映画

グッドモーニング,ベトナム ロビン・ウィリアムズ(主演),価格: \1,313 (税込)

Good_Morning_Vietnam以前このブログで紹介したマクナマラ回顧録でも書きましたが,ベトナム戦争は今からざっと40年ほど前の出来事です.当時は冷戦時代の真っ只中で,イデオロギーという軸に沿って世界は分裂し互いに対立していました.ベトナム戦争は,東南アジアの小国が強大なアメリカのプレゼンスに頑強に抵抗し,最後にはアメリカ軍を追い出すことに成功した稀有な出来事です.ベトナムはもちろん甚大な犠牲を払ったのですが,アメリカ軍もアメリカ社会も深い傷を負うことになりました.

このような深い傷を負った場合,それを題材にしたまともな映画は癒しの時が経たないと日の目を見ないものです.フランシス・フォード・コッポラが地獄の黙示録でカンヌのグランプリを獲ったのが1979年です.やはり10年程度の時間が必要だったのですが,この映画はベトナム戦争というよりは人間の内面や戦争の狂気というより普遍的な題材をえぐったものでした.

それに対して,この"グッドモーニング,ベトナム"はロビン・ウィリアムズの魅力満載,ホンネ満載のほろ苦いヒューマン・エンターテイメント映画です.まずはマシンガンのような毒舌ディスクジョッキー,これがすごい.当時の政治家や有名人をコケにした声帯模写のジョークの数々は本当に笑えます.アメリカ人にとっては不快極まりないベトナムの気候そのものに対するジョークも彼らのホンネをよく表していると思います.軍の上層部と現場の兵士たちの距離もよく描かれており,極限状態の戦場で過ごす兵士たちの精神安定剤として,このディスクジョッキーが絶大な人気を得ていったのは当然の成り行き,というシナリオです.

軍が運営するラジオ局の内幕が垣間見られるのも非常に興味深いです.ブースは二つで交替で使用.ニュースは必ず事前に検閲.この検閲官が双子の巨漢というのは監督のジョークでしょうが,この双子の俳優さんは"ターミネータ 2"でも活躍しましたね.音楽は扇情的でないものをという方針のどうしようもない上司が,戦場にポルカを流すのもとても笑えます.これに対してロビン・ウィリアムズ演じる主人公はギンギンのジェームズ・ブラウンで対抗!

ベトナム人の美少女に対する主人公の恋と,彼女の兄で実はベトコン工作員の少年とのやり取りは,アメリカ人の独善的な思い込みをアジアの側から痛烈に批判するエピソードとして画期的です.こういうエピソードがアメリカ映画でやっと取り上げられるようになったのも,ベトナム戦争終結後30年以上が経ったことの証でしょう.アメリカもようやく他者の視点で自分を見ることができるようになってきました.と思っては見たものの,アフガニスタンやイラクでのアメリカのやり方はベトナム以前への歴史的逆行であることも事実なので,かの大国は一枚岩ではないものの,この国とのお付き合いは楽ではありません.

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2005/04/03

早春の盛り

UshikuShizenKansatsuNoMori_Kobushi_03Apr2005_020m
日曜日の今日は気温がぐんぐんと上昇しています.おそらく今年一番の暖かさになることでしょう.午前中にちょっと足を伸ばして近隣の自然観察の森に出かけてみたのですが,このあたりでは今がコブシの満開時期.華麗な花が見事に咲き誇っていました.早春の盛り,とはちょっと変な言い方ですが,今の時期はそういう言葉がぴったりきます.

UshikuShizenKansatsuNoMori_Kusaboke_03Apr2005_002m足元を見るとクサボケの花が咲いていました.春先に野山に出かけると必ずお目にかかる花です.しかしこの辺りではまだウメの花が残り,サクラの花はほとんど開いておらず,例年に比べると1週間ほど春が遅れているようです.先週もうすら寒かったですね.来週になればこのあたりもサクラが満開になることでしょう.

朝,駅に向かって歩き始めるときにはコートが必要ですが,電車に乗ってしまえば汗ばんで上着も要らない,そういう季節ですので,なかなか服装の調節が難しいです.うっかり汗をかいた直後に体を冷やして風邪をひくというパターンが多いので気が抜けません.

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ローマ法王が死去

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <ローマ法王>死去、84歳 激動の国際政治に深く関与

全世界10億人のカトリック世界に隠然たる影響力を持ち続けるバチカンの盟主が死去しました.中世ヨーロッパ以来の世俗権力と宗教権力のせめぎあいの歴史の中で,このヨハネ・パウロ2世は国際政治に深く関与したばかりでなく,カトリックの過ちを認めるなど社会とも積極的に交流してきた法王でした.それはイタリア人ではない初のスラブ出身の法王という出自も影響していたのかもしれません.体制は中枢ではなく辺縁から見たほうがよく見えるということの現われとも思えます.

バチカンの影響力をどう見るかが国際政治学的に正統なのかわかりませんが,昨今のネオコンに対抗する最も強力な良心と道徳の枢軸であったことは間違いありません.資本主義は道具であって従うべき宗教ではないと述べたムスリムの政治家がいますが,冷戦が終わってイデオロギーの対立が無くなった代わりに宗教原理主義が台頭してきたいま,再び世俗と宗教の新しい役割分担が求められています.次のローマ法王には難しい課題が突きつけられているのです.

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2005/04/02

Celtic Soul?

Too-Rye-Ay [US Bonus Tracks] [FROM US] [IMPORT] Dexy's Midnight Runners, 価格: \1,730 (税込)

Kevin_Rowland_And_Dexys_Midnight_Runners-Too_Rye_Ayこのバンドがどのような出自で,どのようなジャンルを得意とするかなどということには一切関係なく,1984年頃に大ヒットした曲 "Come on Eileen" をもう一度聴きたいという一心で検索し手に入れました.小林克也さんが DJ を務める当時のTV番組 "Best Hits U.S.A." でもかなり長い間紹介されていましたから,アメリカのヒットチャートでも長期間上位にあったものと思われます.ビデオクリップが素晴らしく,あぁブリティッシュロックはやっぱりいいなぁ,と思ったものです.

そんなわけでつい最近まで,イギリスの下層階級の若者の鬱屈した不満をモチーフにしたパンク系のバンドとばかり思っていました.しかし改めて聴いてみると,管楽器やフィドルを使いこなした,むしろケルトの色彩を色濃く持ったソウル系であるということがわかりました.Mods White Soulとも言われているようです.Kevin Rowland の力強く端正な発声法のヴォーカルが聴きモノ.

日本のヒットチャートはアメリカの方ばかり向いているので,ヨーロッパのポピュラー音楽シーンがほとんど見えず,とくに商業的な主流から外れるジャンルはなかなか日が当たらないのですが,このバンドを知ることができたのは幸運でした.最近17年ぶりに再結成されたらしいので,今後の活躍が楽しみです.

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