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2005/05/18

核テロリストと闘う競馬シリーズ第37作

烈風 ハヤカワ文庫 HM ディック・フランシス (著), 菊池 光 (翻訳),価格: \777 (税込)

Dick_Francis-Second_Windディック・フランシスと競馬シリーズのファンなら,シリーズ長編37作目のこの本を手に取ることの喜びを,ひしひしと感じずにはいられないでしょう.なぜならば著者のディック・フランシスはすでにかなりの高齢だからです.この"烈風"の原作は1999年9月の出版でしたが,そのときすでに78才.その翌年の2000年に長編38作目の"勝利"を出したものの,妻を亡くしたせいもあってかその後の出版は途絶えたままです.今年彼は84才.高齢に加えて長年の伴侶を失った悲しみは相当のもののはず.執筆意欲が衰えるだけではなく,これまでの作品と同様の質の高さを維持していくだけの集中力を保っていけるかどうか,ファンとしては大変気がかりなのです.

さてこの作品では馬や競馬場の存在感はそれほど大きくありません.むしろハリケーンや放射性物質や乳牛といったエグゾティックな世界を取り上げています.そして主人公はBBCの気象予報士.しかしクールでストイックで忍耐強く苦痛にはとことん耐える,という競馬シリーズ特有の主人公像はここでもしっかりと守られています.私たちファンは,実にこの主人公に共感し,主人公と物語を共体験するために作品を読み続けるのだといっても過言ではありません.競馬シリーズのファンは,自分はこうありたいという理想の人物像を主人公に投影しているわけで,逆にその人物像に共感を覚えない人たちは競馬シリーズなどつまらないと思うことでしょう.そんな人たちがいるとしてですが.

とりあえずは長編38作目の"勝利"の文庫本出版を待ちたいと思いますが,それ以降のことが大変気がかりです.

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