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2005年5月

2005/05/28

タイトル負けのマクロ金融政策批判

金融立国試論 光文社新書 櫻川 昌哉 (著),価格: \735 (税込)

Kinyu_Rikkoku_Shironオーバーバンキングから出発して日本の現在の金融状況を分析し,そこからマクロ金融政策の批判と提言を行っている新書です.論旨は明解ですしそこから導き出される提言も筋が通っているように思えるのですが,データの引用と分析に漏れが無いのか気になるところです.というのも,マクロ経済のデータなどというものは,誰かが責任を持って網羅的系統的に集めているわけでも,集めることが出来るわけでもないので,それに立脚した論理展開がどれほど的を得ているのか大変心配になるからです.少なくとも郵政改革の議論では地方経済の比重が高まるので,タンス預金やアングラ経済の規模の推定が必須です.

著者が言うように不良債権の処理やペイオフが厳格に実行に移されればマクロ経済が健全な姿になるのかといえば,そこには大きな不確実性が残ると言わざるを得ません.ある国の国民経済にとってどれほどのリスク許容度があるのかは,その国の国民性や文化や歴史経路によって大きく異なるはずだと私は思うからです.この国の民間セクターで金融資産の大部分を持っているのは中高年の世代ですが,彼らは非常にリスクを嫌うことで特徴付けることが出来ます.理由の分析は難しいのですが,一つにはこの国の国民は近代に入ってから政府に裏切られ続けた苦い歴史を持っているからではないか,戦争前後に国家が国民の生命と財産を守ってくれなかったことが身に染みているからではないでしょうか.その記憶が残っている間は政府の政策を信用して自らの金融資産を付託することには強い抵抗を示すはずです.そのような場合,マクロ経済のきれいな結論を実行しようとしても,強い抵抗が待っていると考えざるを得ません.

タイトルの"金融立国試論"から本書の中身を想像するのは困難ですし,タイトルの意味する領域にたどり着く前に紙数が尽きてしまっているので完全にタイトル負け.これは著者の責任なのか編集者の責任なのか,大変残念です.金融資産を活用した国家戦略でも出てくるのかと思って買った私が馬鹿でした.

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ニューグラスの金字塔と呼べるアルバム

Faraway Land [FROM US] [IMPORT] Ron Block,価格: \2,235 (税込)

Ron_Block-Faraway_LandDan Tyminski を紹介したので Ron Block も紹介しておきましょう.この人も Union Station のメンバーなので,Alison Krauss + Union Station のコンサート DVD を見るとどういう人かよくわかります.ギターやバンジョーを弾きヴォーカルもなかなか上手いのですが,ちょっと小柄で見た目はかなり地味.Dan Tyminski と並ぶと明らかに脇役に見えます.そう,こういう人は実力があっても日の目を見ないで終わることが多いのですが,しかし,彼の場合は曲作りの才能がそれを補って余りあります.このアルバムには彼のオリジナル曲が多く収められており,いずれも斬新で素晴らしいものばかり.最近の新しいブルーグラスの担い手は実はこういう人たちなのだということがよくわかります.アルバム自体が Ron Block のプロデュース.ライナーノーツを丹念に読むと録音やミキシングにも彼自身が深く関わっていることがわかります.うーん,あくまで質にこだわる職人なんですね.こういうところが非常にニューグラスらしくて私は好きです.

ニューグラスの豪華な仲間たちがこぞって参加しているのが目をひきます.Union Station のメンバーは全員が参加していますし,Nickel Creek のメンバーの名前も確認できます.パフォーマンスも録音も本当に素晴らしく,ニューグラスの金字塔と呼ぶべきアルバムに仕上がっています.アーティスト+プロデューサとしての Ron Block の才能が光り輝くアルバム.

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2005/05/22

Dan Tyminski のソロアルバム

Carry Me Across the Mountain [FROM US] [IMPORT] Dan Tyminski,価格: \2,235 (税込)

Dan_Tyminski-Carry_Me_Across_The_Mountainブルーグラスの優れたギターとマンドリン奏者であり,かつ優れたヴォーカリスト,映画 "O Brother" の挿入歌 "A Man of Constant Sorrow" を歌ったアーティスト,人気絶頂の Alison Krauss + Union Station のメンバーの一人,とくればもうこの人 Dan Tyminski です.Alison Krauss + Union Station のコンサートDVDをご覧になった方ならわかると思いますが,マンドリンのテクニックもさることながら,歌いっぷりがなかなか良く,また飾らない表情も大変好感が持てる人なので,おそらくアメリカでの人気も相当のものでしょう.

このアルバムは彼のソロアルバム.とはいっても Union Station のメンバーや他のアーティスト達も多数参加していますので,大変聴き応えのある充実した内容になっています.例えばアルバムタイトルと同名の一曲目 "Carry Me Across the Mountain" は Alison がハーモニーヴォーカルとして参加しているのがすぐにわかります.こんな調子ですからファンにとっては大変お買い得.

ブルーグラスの革新の担い手の一人であり,かつブルーグラス復権に貢献した一人として,その存在感は大変大きなものがあります.ここ当分はこの人の活動から目が離せません.

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2005/05/21

湾岸戦争勃発と人面魚報道

リンク:事件・事故報道で今一度考えたいメディアの責任と体質(下)

このブログで数日前に書いたことと関連する上の記事を読みながら,昔のことを思い出しました.

今を去ること10数年前,第一次湾岸戦争が勃発するかどうかという頃,新聞各紙は,スポーツ新聞も含めて毎日第一面は多国籍軍の準備状況とそれを迎え撃つイラク軍の動向を大きく報じていました.戦争が始まると報道はほぼ戦争一色.ちょうど昭和天皇崩御の時と同様の様相でした.このときほど報道の根深い横並び体質を感じたことはありません."特オチ"を極端に恐れ,"他社に抜かれるくらいだったら不正確でも記事にしてしまうほうがマシ"という報道者の心理は,報道の公正とは全く相容れないものです.

そんな中,一人良識?の気を吐いていたのは当時はプロレス新聞だった東京スポーツ.毎日第一面にはでかでかと人面魚の病気の容態を取り上げていたのです.アメリカがミサイル攻撃主体の"Operation Desert Storm(砂漠の嵐作戦)"を開始したとき,東京スポーツ第一面の見出しは一ページぶち抜きで"人面魚重態を脱す"だったことをよく覚えています.

東京スポーツは当時から娯楽性を重視しており,その後芸能ネタの比重も増えて,"日付以外はすべて誤報"と揶揄されるくらいになってしまったのですが,この湾岸戦争開戦の時にどういう編集方針だったのかぜひ知りたいものです.おそらく横並び報道の中で"いかに目立つか"ということを重視した判断だったのだろうとは思いますが,編集者の心の片隅には"大政翼賛会に組してなるものか"という良識があったと信じたいものです.

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2005/05/18

核テロリストと闘う競馬シリーズ第37作

烈風 ハヤカワ文庫 HM ディック・フランシス (著), 菊池 光 (翻訳),価格: \777 (税込)

Dick_Francis-Second_Windディック・フランシスと競馬シリーズのファンなら,シリーズ長編37作目のこの本を手に取ることの喜びを,ひしひしと感じずにはいられないでしょう.なぜならば著者のディック・フランシスはすでにかなりの高齢だからです.この"烈風"の原作は1999年9月の出版でしたが,そのときすでに78才.その翌年の2000年に長編38作目の"勝利"を出したものの,妻を亡くしたせいもあってかその後の出版は途絶えたままです.今年彼は84才.高齢に加えて長年の伴侶を失った悲しみは相当のもののはず.執筆意欲が衰えるだけではなく,これまでの作品と同様の質の高さを維持していくだけの集中力を保っていけるかどうか,ファンとしては大変気がかりなのです.

さてこの作品では馬や競馬場の存在感はそれほど大きくありません.むしろハリケーンや放射性物質や乳牛といったエグゾティックな世界を取り上げています.そして主人公はBBCの気象予報士.しかしクールでストイックで忍耐強く苦痛にはとことん耐える,という競馬シリーズ特有の主人公像はここでもしっかりと守られています.私たちファンは,実にこの主人公に共感し,主人公と物語を共体験するために作品を読み続けるのだといっても過言ではありません.競馬シリーズのファンは,自分はこうありたいという理想の人物像を主人公に投影しているわけで,逆にその人物像に共感を覚えない人たちは競馬シリーズなどつまらないと思うことでしょう.そんな人たちがいるとしてですが.

とりあえずは長編38作目の"勝利"の文庫本出版を待ちたいと思いますが,それ以降のことが大変気がかりです.

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2005/05/15

やっぱり気持ちいい彼女の歌声

Never Love You Enough [FROM US] [IMPORT] Chely Wright,価格: \1,692 (税込)

Chely_Wright-Never_Love_You_Enough先月ポストした記事に引き続き再び Chely Wright のアルバムを御紹介します.やはりこの人の歌声は実に耳に心地よいです."舌触り"ならぬ"耳触り"という言葉は日本語には無いのですが,官能をくすぐるザラリとした聴感は実に"耳触り"が良いと感じてしまいます.猫に耳たぶをなめられる感触という言い方はおかしいかなぁ?例えば7曲目の"Her"や10曲目の"Horoscope"はその典型.

もともと歌唱力は十分だし情感表現もうまい人なので,もう何もいうことはありません.アルバムのアレンジは彼女の声にマッチしていつも見事なので,あとは彼女に合った曲をどれほど量産できるかでしょう.

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2005/05/14

Fedora Core 4 test 3 available!

リンク: Fedora Project, sponsored by Red Hat.

5月10日に FC4 の test 3 がアップされました.もう test 3 なので,最終版のリリースは近いものと思われます.Fedora Core シリーズは,Red Hat が先進個人ユーザ向けに提供を続けている Linux の開発版シリーズです.常にその時点での最新の(でも何とか実用に耐えられる安定性を確保した上で)開発成果が取り入れられるのが人気の秘密でしょう.Red Hat がいつまでこのサービスを続けていけるのかわかりませんが,現在では最も主流の Linux ディストリビューションの地位を得ていることは間違いありません.書店に行けば Fedora Core のインストール本が目立ちます.

私は老舗のディストリビューション Slackware を長年利用してきたのですが,Fedore Core シリーズのように Windows ユーザにも取り付きやすいように配慮されたパッケージには,使いやすさという点で到底かないません.Debian のように堅固なスタイルにも独特の魅力がありますし,日本のゲリラ的ディストリビューション Momonga Linux も使ってみたい気がしますが,全体としては Fedora Core の優位は当分続くことでしょう.

しかし私自身は System V 系の Linux よりは BSD 系の FreeBSD のほうに従来から一貫して強い魅力を感じています.同じ BSD 系で最近完全にライセンスフリーになった Solaris も同様です.ファイルシステム,タスクスケジューリング,ネットワーク周りなど,カーネルの根幹のところが BSD のほうが安心できる,という考えはもう古いのですが,それでも昔の経験はしつこく頭に残っていて,やっぱり BSD はいいなぁ!と思ってしまいます.

あれ?Fedora Core のことを書こうと思っていたのに.

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コンテンポラリーブルーグラスの最先端

Not All Who Wander Are Lost [FROM US] [IMPORT] Chris Thile,価格: \2,102 (税込)

Chris_Thile-Not_All_Who_Wander_Are_LostChris Thileは子どもの頃からマンドリン奏者として頭角を現していたそうですが,私が彼を最初に知ったのは先進的なブルーグラスの若者トリオである Nickel Creek のアルバム(Alison Kraussがプロデュースしています)を聴いて感銘を受けてからです.ほどなく Chris Thile のソロとしての経歴を知り,興味を持つようになったという次第です.

このアルバムでは相変わらずの素晴らしい演奏テクニックが楽しめるだけではなく,曲自体が,絶妙のアレンジと相まって,非常に斬新なブルーグラスの世界を作り出していることがわかります.まさにコンテンポラリーブルーグラスの最先端です.新しい世界を切り拓く切っ先の鋭さは大変なもので,数年後が大変楽しみですが,本当に失速せずにやり続けられるのか,方向性を見失わずに価値ある世界を作り出す実力があるのか,心配もつきまといます.ハラハラドキドキしながら見守っていくことになるのでしょう.Alison Krauss らも同じ思いだと思います.

なお,このアルバムのジャケットは二種類あるようで,Amazon.com で出てくるのは全く別のデザインのジャケットです.どちらが本物?なのかよくわかりません.ライナーノーツはChris Thile の手書きでとても読みにくいのですが,写真からはアルバム制作の雰囲気がよく伝わってきます.ブルーグラスの最先端を知りたい人には必聴のアルバムです.

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2005/05/13

メディアは事実と意見を混同するな

リンク: asahi.com: ミツバチ40万匹死ぬ いたずらの疑い 千葉・我孫子?-?社会.

マスメディアでの"いたずら"という言葉の使い方に違和感を感じませんか?よくあるものでは,"少女にいたずら","線路に置石のいたずら",などなど.どう考えても犯罪(それも故意)なのに,それを軽微なものとして済ませようとする場合にこの言葉が使われているように思います.メディアの見識を疑わずにいられませんが問題はそれに留まりません.この"いたずら"という言葉は事実ではなく意見を表す言葉です.このような報道は明らかに事実と意見を混同しています.

木下是雄さんの有名な著書から引用すると,事実とは証拠をあげて裏づけできるもので唯一性があります.一方意見とはあることについて各人が下す判断で,それぞれの主義,主張,価値観などにより異なる場合がありますので,この二つの区別は非常に重要です.例えば,

ジョージ・ワシントンは米国の初代大統領であった
というのは事実ですが,
ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった
というのは意見です.

マスメディアの第一の使命は,事実を正確に,しかも漏れなくダブり無く伝えることです.政府に都合の良い事実のみを伝えたのがかつての大本営発表であり,何も嘘は言っていないのですが,漏れが多すぎて情報の質はきわめて低いものでした.今日でも非民主国家(例えば中国)ではこのような報道が日常的に行われています.

第二の使命は立場を明確にした上で事実に対する意見を表明することです.アメリカの新聞はいずれもローカル紙であるせいか旗幟鮮明な意見表明が行われますが,日本では全国紙が一般的であり,社説やコラムを別にすれば本文での意見表明は避ける傾向にあります.意見の表明は,立場を明確にし,事実ときちんと区別されるのであればむしろ積極的に行われて良いと思います.

質の低い報道記事や大衆週刊誌では,事実と意見がごちゃ混ぜにされ,本来は意見のはずのものがさも事実であるかのように誘導・偽装される文章がよく見られますので要注意です.冒頭の"いたずら"についても,事実と意見の混同・すり替えが行われており,注意しないと読者に"いたずらなのだから大したことではない"という潜在意識が植え付けられる恐れがあり,非常に危険です.

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2005/05/10

FreeBSD 5.4-RELEASE 出ました!

リンク: FreeBSD 5.4-RELEASE Announcement.

先日ポストした予定の通り,アメリカ時間の2005年5月9日17時に,FreeBSD 5.4-Release がリリースされました.今回はそれほどの遅れも無く予定通りリリースされてほっとしています.5.0系列になってから5番目のリリースなので,かなり安定度と完成度が上がっているはずです.もうたいていのインターネットサーバには安心して使えることと思います.

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2005/05/08

ますます洗練されるコンテンポラリーブルーグラス

This Side [FROM US] [IMPORT] Nickel Creek,価格: \2,296 (税込)

Nickel_Creek-This_Sideコンテンポラリーブルーグラスのトリオ Nickel Creek のデビュー作に続くアルバムですが,さらに洗練の度合いを強めているのがすぐにわかります.第一曲目の"Smoothie Song"はその象徴でしょう.特に楽器間のコラボレーションが絶妙で,いったいこういうアレンジは誰が考え付くのだろう?と感嘆してしまいます.録音も秀逸で,これなら SACD でのリリースも十分に価値があります.私はプレイヤーを持っていないので実は良くわからないのですが(笑)

課題があるとすればヴォーカルでしょう.Alison Krauss 級のヴォーカリストを加えることができればベストですが,現在のメンバーでもハーモニーは十分に美しいので判断は難しいところです.このグループの色や形はまだ定まっているとは言いがたいので,積極的にコラボレーションを行って実験を繰り返すのが良いかもしれません.

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2005/05/07

FreeBSD 5.4 リリース秒読み段階

FreeBSD 5.4 のリリースが秒読み段階に入りました.アメリカ時間5月6日の時点で src tree に 5.4 のバージョン番号がタグされ,最終ビルドが行われました.ミラーサイトへも新しいバージョンのアップロードがまもなく開始されることが連絡された模様です.これから ftp-master へのアップロードが始まり,その他最終的な作業が行われます.アナウンスは5月9日の予定です.楽しみですね.

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電子辞書はなぜPCのコンテンツにならないのか?

Koujien_V4_EBXA日本では今から10年以上前,CD-ROMの普及期にEBXAなどの規格が作られ,いわゆる電子ブックEPWING規格の電子書籍が数多く出版されました.しかしこれら規格はオープンではなく,コンソーシアムに加入した企業にのみリーダやブラウザの配布が許されるという時代錯誤のものでした.幸いなことに規格を解読してブラウザをフリーソフトとして出版する試みがいくつかなされ,最後まで生き残っているのがDDwinで,私は現在でも広辞苑や研究者の新英和・和英中辞典をブラウズするときにお世話になっています.

しかし電子書籍のコンテンツとしての流通は下火になり,代わってコンテンツホルダーが活路を見出したのはモバイルブラウザにコンテンツを載せるという方向でした.実際,子供の進学祝としてモバイル電子辞書の人気が高まっています.これは日本特有の現象で,私には好ましいものと思えません.誤解を恐れずに言えば,日本ではキーボードの使いこなしが遅れていること,そしてターンキー(電源を入れるとすぐに使える)の統合化システムが好きという国民性がこの現象がはやる理由だと思います.

KenkyushaShinEiwaWaei_EBXA電子辞書は普段文章を読み書きするパソコンに搭載してこそ威力を発揮します.それは紙の上の読み書きに比べて格段の知的生産性の向上をもたらします.しかし日本ではパソコンで文書を読み書きすることがいまだに一般的ではなく,従って辞書もパソコンとは別の場面での使用が前提になっています.これが欧米だと,70才のおばあちゃんでもオフィスに勤めた経験があれば,キーボードをブラインドタッチでバシバシ打てるのが当たり前という文化基盤の差があります.そこでは,知りたい単語をマウスでクリックし瞬時に電子辞書で意味を調べる,ということがシームレスに行われています.これに対して日本では,いくらパソコンが普及したとはいえキーボード操作の敷居は依然高いのではないでしょうか?これがまず第一の理由ですが,これでは知的生産性の差は広がるばかりです.

二番目の理由はもっと深刻なものです.日本人はモジュール化された部品を自ら組み合わせてシステム化して使いこなすことが得意ではありません.それよりは出来合いの統合化されたシステムで細やかにチューニング・差別化されたものを,好みに合わせてシステムごと選び取って使うことを好みます.特にコンピュータではこの傾向が強く,ワープロ専用機がつい最近まで売られていたことが何よりの証拠です.アメリカではワープロ専用機は20年前に絶滅してしまいました.パソコン上に同機能のソフトが移植されたからです.専用機に比べると汎用機のパソコンははるかにいろいろな事が出来るのですが,そのためにはパソコンのオペレーティングシステムを熟知し,その上のアプリケーションソフト群を覚え,さらにはそのような知的作業の文化的基盤にまで踏み込んだ理解が必要となります.そこまで覚えるのは耐えられない,それならば自分が今やりたいことだけを気楽にやれる専用機を使おう,という行動に走るのも無理ありません.

しかし,モジュール化された部品を組み合わせて多様なニーズにすばやく応えるというシステム化の利点を理解できなかったことが,IT革命の各局面で日本が大きく出遅れた主要な原因の一つです.モジュール化については産業政策上の意味が非常に大きいのですが,それには日本人のこのような性向が強く反映されていることも十分に考慮すべきでしょう.モジュール化に慣れろといってもそれは一つの文化を波及させるのと同じで長い時間がかかります.当面はモジュール化の脅威とどうにか付き合っていくしかありません.電子辞書はそのための良い題材になるはずと思ったのですが,現状をみるとなかなか悲観的です.

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2005/05/05

Celtic Bluegrass?

Nickel Creek [FROM US] [IMPORT] Nickel Creek,価格: \2,296 (税込)

Nickel_Creek-Nickel_Creek才能あふれる三人の若者によるケルトやフォークの色彩が強いブルーグラスです.アルバムをプロデュースしたのは Alison Krauss,なぁるほど,ブルーグラスの革新勢力が送り出してきた新星だなということがわかります.彼らの拠点は何と San Diego!あまりブルーグラスという感じはしませんが,先進性を生み出すには良い場所かもしれません.

マンドリンの天才 Chris Thile,ギターの Sean Watkins とフィドルの Sara Watkins 兄妹のトリオですが,抜群の演奏テクニックだけではなく,アコースティックサウンドの魅力を最大限に生かした曲作りなど,きらめく才能を感じさせる仕上がりになっており将来が非常に楽しみです.二曲目の"The Lighthouse's Tale"は聴いていて涙がこぼれそうになるほどの名曲.一度 Chieftains とのコラボレーションをやると面白いことになるでしょう.

すでに日本でもコンサートツアーが行われているようなので,彼らの素晴らしさを肌で知った人たちも多いことでしょう.ブルーグラスは革新を始めているのです.

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2005/05/04

アメリカンロックの金字塔

ベスト・コレクション (初回限定DVD付) [LIMITED EDITION] イーグルス,価格: \3,497 (税込)

Eagles-The_Very_Best_Of_Eaglesアメリカのロックシーンを代表するバンドとしてあまりに有名.1971年にカントリーの歌手リンダ・ロンシュタットのバックバンドとして活動を開始し・・・というお決まりの話から始まる解説はWikipediaにお任せしましょう.カントリーとハードロックの間を振り子のように揺れた曲作りは,まさにアメリカ西海岸の雰囲気そのままです.このバンドの絶頂期はなんと言っても"Hotel California"の大ヒットを飛ばした76年.この曲はいつ何度聴いても名曲です.しかし活動のピークは70年代だったので,その時代に旬だったファンの世代も今は50歳前後になっています.再結成され,いまだに"さよなら公演"を続けているのは老後のため?僕たちの青春の思い出のために,過去の栄光もそろそろ凍結・封印されても良いのではと思ってしまうのは私だけでしょうか?

ベストアルバムも数種類作られていますが,ここで紹介するのはつい最近2003年10月にリリースされた最新版.新曲"Hole In The World"が二枚目の最終トラックに収録されているのが特徴.力図良いリズムセクションとヴォーカルのハーモニーが穏やかなメロディーを奏でる佳作です.このアルバムは二枚組で全33曲.しかもこの日本語版では特典DVDも付いているという大変お得なセット.すでにベストアルバムを持っているという人にもお勧めです.

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田植え

EarlySummerAtHome_May2005_031m私の住む地域では4月末から5月前半にかけてが田植えの季節です.早稲のほうが秋に高値で売れるという理由以外に,サラリーマンの兼業農家も多いので連休を利用して田植えを済ませてしまうという動機も働くのだと想像しています.実際この時期に水田地帯に行ってみると,普段はほとんど車のいないあぜ道を農家の軽トラックが走り回り,お父さんが田植え機の運転,お母さんと子どもたちは苗のスタッカーの運搬を手伝っています.家族総出の一大イベントなのでしょう.

畦や水田にはちょうどこの時期に飛来する旅鳥のシギ・チドリたちがやってきて羽根を休めています.日本は内陸部にも水田が広がっているので,この時期に突如として大湿地帯が現れる仕掛けになっており,莫大な数の旅鳥が稲作の恩恵を受けていることになります.田植え作業をする人たちのすぐ隣の田んぼに,ムナグロ,キョウジョシギ,チュウシャクシギなどが群れている光景は,日本が誇るべき人と自然の共生の姿と映ります.水田が食糧生産だけの場所ではないことがよくわかります.

連休が終わると,整然と田植えが済んだひと気の無い田んぼが延々と広がっていますが,よく見ると農家のおばあさんが田植え後の水と畦の管理,そして時間と手間がかかる補植作業を何日も黙々とこなしています.これだけは本当に昔ながらのきつい農作業で,おばあさんしかやり手がいないようです.

私が興味を持っているエコ稲作の一種,不耕起栽培では代かきや整地をせず,田んぼには前年の稲の株が残ったままになっているため,特殊な仕様の田植え機でなければ田植えをすることができません.具体的には苗を植える条線を地面に切っていくための仕掛けが必要になります.このあたりでは不耕起栽培も冬季湛水も見たことが無いのでなかなか実感が湧きませんが,誰か先進的な農家が始めてくれないものかと期待しています.

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2005/05/02

ナナカマド開花

EarlySummerAtHome_May2005_001m庭に植えてあるナナカマドが開花しました.真っ白い花がとても美しいのですが花期は短く,あっという間に花は茶色くしおれてしまいます.そのためか花アブやハチたちが忙しそうに花粉を集めにやってきます.今年は2月に寒肥を施したので,このあとも順調に育って赤い実をつけてほしいと願っています.

昨日は南風が強く,そういうときには高台に位置する我が家では風の強さが倍化して木々の若葉を痛めることが多いのですが,どうやらたいした被害ではなかったようでほっとしています.木々の花が続々と咲き出しました.

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2005/05/01

春から初夏へ

UshikuShizenKansatsuNoMori_01May2005_017m連休に入り,日なたを歩くと汗ばむほどの陽気になってきました.いよいよ夏が近づいてきたわけです.それとともに林の中の様子もだいぶ変わってきました.早春を飾ってきた春の妖精たちは姿を消し,林床にはシャガやマムシグサが顔を出し,木々の花もハナミズキなどの第二陣が盛りになってきました.鳥たちも巣立ち雛を連れて子育ても後半です.右の写真はもういささか盛りを過ぎたスミレの仲間,日本古来のスミレ Viola mandshurica です.タチツボスミレなどに比べると大変色が濃いのが特徴で,林床に咲いていると遠くからでもそれとわかります.今日は曇り空で光が良くなかったのですが,それでも目で見た色に近い色合いで撮ることができました.

アジアモンスーンが吹きだして今夜は雨です.

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