せつなくほろ苦いロードムービーの傑作
ペーパー・ムーン ピーター・ボグダノヴィッチ(監督),価格: \1,575 (税込)
ロードムービーの傑作です.何年も繰り返し見ているのですが飽きることはありません.ロードムービーのご多分に漏れず舞台は1930年代大恐慌時代のアメリカ.その時代の雰囲気を出すためにわざとモノクロ・スタンダード画面でプリントされています.劇中の音楽やラジオ番組もその時代のもの.
母親が死んで孤児になった女の子を,聖書行商の詐欺師が親戚に送り届ける役を仰せつかります.女の子はひょっとすると自分の父親はこの男ではないかと期待を寄せるのですが,男のほうはこの女の子を厄介払いしたくて仕方ありません.詐欺の旅を通して二人の関係は疑似親子関係に近づいていくのですが,この関係は実に危うく,近づいては離れ,離れては交わるを繰り返します.このあたりはおそらく,ブラジル映画の傑作 "セントラルステーション" がぱくっていますね.
ところがこの女の子はしたたかな商才と交渉力を発揮します.旅に出る前に詐欺師が女の子をネタに他人からカネをゆすり取るのですが,女の子がそのカネは私のものだ,返済しろと迫ることから旅が始まります.孤児にとっては頼りになるのはカネしかないということでしょう.その借金の残高が物語の進行とともに上下していく,というのが話の重要な伏線になっています."You still owe me two hundred dollars!" などという台詞がリズム良く出てきて一つ一つのエピソードを締めくくるのが何とおかしいことか!
しかし移動遊園地の紙のお月様の写真館で,カネでは父親の愛は買えないことにも気が付く彼女.ラストで親戚の家を飛び出し再び詐欺師との旅を続けることを決断する彼女は,やはり親子の愛情を信じたかったのでしょうか?
疑似親子を演じるライアン・オニールとテイタム・オニールが実の親子ということを誰もが知っていてこの映画を見るという点が実に重要でうまく出来ているところです.このテイタム・オニールが実に可愛くて小憎らしくて演技がうまい!彼女はこの映画でアカデミー助演女優賞を獲得しましたがそのとき10歳.きっとライアンは撮影のあいだ心配のし通しだったと思いますが,同時にわが娘が可愛くて仕方がなかったはずです.それを劇中ではわずかな表情にも出していないのがまた面白いところです.
とにかく飛び切りのお勧めロードムービーです.音楽もいいですよ.
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