デジカメはこう進化する (2)
デジカメの進化の第一はクイックリターンミラーを廃止することだと書きましたが,その第二は補償光学の採用です.
レンズの収差にはいくつかのモードがあります.まず本質的な収差として球面収差があります.次が色収差です.さらに歪曲収差があります.これらの収差は複数のレンズを組み合わせたり非球面のレンズを使ったりすることによりかなりの程度解消することが出来ますが,それでも撮像素子の一ピクセル以内に収差を抑えることはなかなか難しいことです.さらに本質的な問題として大気の揺らぎによる像の揺れやボケという問題もあります.
銀塩の乾板やフィルムを使っていた時代であれば,話はこれで終わりだったのですが,撮像素子が世に現れ,画像をコンピュータで処理出来るようになってからは話が変わってきました.あらかじめレンズの収差の特性を詳しく調べておけば,その収差を打ち消すような数学的処理が出来るはずだというのが元々の発想です.こうして補償光学という技術が生まれました.歴史的にこの技術の最初の適用先は衛星写真でした.偵察衛星が地上の画像を詳細に捕らえるためにはこの技術は不可欠です.次の応用先は天文学です.衛星天文台であるハッブル宇宙望遠鏡にも補償光学が最大限適用されています.
やっと本題にたどり着きましたが,これをデジカメ本体,あるいはその処理ソフトに生かせばよいということを言いたかったのです.ちなみに代表的なフォトレタッチソフトである Adobe Photoshop の最新版 CS2 では,色収差がかなりの程度補正できるようで,これはかなり画期的なことです.
しかし本当に補償光学を生かすためには以下のことを行わなければなりません.まずレンズ特性のデータベース化です.単焦点レンズの場合には,全ての絞りと合焦距離の組み合わせにおいて,撮像面の全ての位置における収差の情報を測定し,特定のフォーマットでデータ化します.ズームレンズであれば,これに加えて全ての焦点距離に対して上記のデータをそろえる必要があります.次に,カメラに内蔵されたソフトウェア,またはパソコン上で使用するソフトウェアは,撮像素子が捕らえた画像データをレンズのデータベースを用いて演算し,収差を打ち消すような処理を行う必要があります.この処理はかなり重たい処理となることが予想されますので,カメラ内臓のソフトウェアの手に余る可能性が大です.その場合には,カメラからパソコンに取り込まれた後で,Photoshop のようなソフトウェアで処理を行うことになります.
この技術のメリットは,レンズに対する収差補正の要求を大幅に緩和させ,レンズをもっと低コストで小型軽量のもので済ませることが出来るという点にあります.現状では,あらゆる収差を良好に補正するためにレンズの枚数が増え,高価なレンズ材料が必要となり,光学設計も非常に複雑で時間がかかるものとなっています.しかし補償光学を使えば,多少の色収差や歪曲収差は画像処理で救済することが出来ますので,大幅なコスト削減が可能となります.
補償光学が全面的に採用された後のデジカメは,ある意味において画像取得ターミナルです.もはや高価で重たいレンズは必要ありません.生の画像の質は悪く収差だらけですが,それをパソコンで処理することにより収差の少ない十分な画質のデータを再構成できるようになります.こういう世界がきっとそのうちやって来ると思うのですが,いかがでしょうか?
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