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2005年10月

2005/10/22

戦術の天才ハンニバル

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) 新潮文庫 塩野 七生,価格: \380 (税込)
ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) 新潮文庫 塩野 七生,価格: \460 (税込)
ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) 新潮文庫 塩野 七生,価格: \420 (税込)

Nanami-Shiono-Bellum_Hannibalicumローマの歴史の中でもハイライトの一つです.地中海をはさんで隣接するアフリカの通商大国カルタゴとの死闘を描きます.第一次ポエニ戦役ではカルタゴと戦うために海軍を創設したり,シチリアを勝ち取ってローマ化したりという具合に話が進むのですが,何と言っても主題は第二次ポエニ戦役でのカルタゴの天才的武将ハンニバルとの戦いでしょう.

若きハンニバルはスペインからアルプスを越えてイタリアに攻め込み,数々の会戦でローマ軍に壊滅的な打撃を与え,さらにはガリア人を懐柔して味方につけたり,ラテン同盟の都市に反乱を起こさせたりと,戦術,戦略の両面での天才ぶりを発揮します.イタリア半島に深く攻め込まれたローマはどうにかこうにか持久戦に持ち込み,戦局は長期間停滞するのですが・・・ローマにもハンニバルに多くを学んだ若き知将スキピオが現れ,戦いは徐々にローマに有利に展開していきます.

ハンニバル戦記最大のハイライトはハンニバルとスキピオのカルタゴでの会戦でしょう.この会戦は古くから戦術のケーススタディとして語り継がれ,研究されているもので,今日でも士官学校では必ず学ぶと言われています.マケドニアの若き天才武将アレクサンドロスの戦術に学んだハンニバルと,さらにそれを学んだスキピオとの対決はスキピオの鮮やかな勝利に終わります.これ以降ローマ軍は,各軍団が役割を分担し連携を取りながら敵を包囲殲滅する戦法を確立,同時代の歴史家が "戦争機械" と呼ぶにふさわしい効率的な軍隊を持つ最強の軍事国家に変貌するのです.

ハンニバルは天才でしたが孤独でもありました.祖国からの支援も補給も受けずに十年以上も敵地で野営し戦い続けました.しかし兵士と寝食を共にして戦う姿勢は兵士の絶大な共感を得て,スペインを発って以来彼に付き従う古参の猛者が多くいたそうです.ハンニバルは真のプロの武将だったと言えるでしょう.しかも自らの優秀さに関しても強烈な自負を持っていたようです.ただし彼が率いるカルタゴ軍は傭兵集団でした.

かたやローマですが,市民集会で毎年交替で選ばれる執政官が市民から構成される軍を率いるため,毎回優秀なプロが選ばれるとは限りません.これはローマの弱みでありましたが,しかし一方で長期的に見ると,個人の力量に寄らない組織としての強さを保ち続け,市民自らが血を流して戦うローマのほうが,戦略的優位を崩すことがなかったとも言えます.特に周辺国に対する外交戦略がしっかりしていたことが大変有利に働きました.ギリシャ諸国家,シリア,エジプトなどは,地中海西側をめぐるローマとカルタゴの死闘に乗じて両国を同時に弱体化することも可能だったはずですが,ローマの外交が功を奏し,地中海西側に対する無関心も手伝ってそういう行動を取らなかったことがローマを救うことになりました.

ハンニバル戦記の登場人物の中で誰に最も惹かれるかと問われれば,やはりスキピオと答えざるを得ませんが,しかし長期持久戦を主張し,実際にそれをやり遂げたファビウスも捨てがたい魅力があります.もっとも,ハンニバルという天才的個人に対比すべきものは,ローマという統治形態そのものなのかもしれません.いろいろなことを考えさせてくれる古代のエピソードです.

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2005/10/19

Alison Krauss が飛躍するきっかけとなったアルバム

So Long So Wrong [from US] [Import] Alison Krauss & Union Station,価格: \2,353 (税込)

Alison_Krauss_And_Union_Station-So_Long_So_Wrong人気絶頂の Alison Krauss は Union Station というバンドをバックに従えているのですが, "従えている" という表現は実際には適当ではありません.なぜならば,彼女が主でバンドが従という関係が成り立っているわけではないからです.バンドのメンバーの一人がリード・ヴォーカルを取り,彼女自身がハーモニー・コーラスにまわることもしばしばですし,彼女のフィドルは完全にバンドの一部と化しています.アルバムやライブでもメンバー各人の良さを引き出す工夫が随所に見られます.

そんなバックバンドとの関係を築いてきた Alison Krauss ですが,Union Station のメンバーは初期と現在ではかなり入れ替わっています.私の理解が正しければ,現在のメンバー構成が確立されたのが1997年3月25日にリリースされたこのアルバムからです.ギターの Dan Tyminskiバンジョーの Ron Block,ドブロの Jerry Douglas,そしてベースの Barry Bales です.特にこのアルバムからギターの Dan Tyminski が加わったことの影響は大きいと思います.彼はギターやマンドリンも上手いのですが,何と言ってもヴォーカルが良いのです.それは映画 "O Brother" の挿入歌 "A man of constant sorrow" で遺憾なく発揮されたことは記憶に新しいところですね.

そしてこのアルバムから Alison Krauss & Union Station の快進撃が始まったと言っても良いのではないでしょうか?彼らの音楽性と音作りはこのアルバムをきっかけに従来のブルーグラスの枠を徐々に超えて洗練の度合いを高めていきます.それは2001年8月14日にリリースされたアルバム "New Favorite" に見事に結実するのですが,それに至るには Alison Krauss と言えども長い時間がかかったのでした.Rounder での1987年のデビューから約15年です.

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2005/10/17

秋雨夜景

CA250084m秋の長雨がいまだに続いています.特に今日の夕方からははるか南方海上にある台風の影響か,雨あしが断続的に強くなってきました.外出した帰り道,雨が降るなかふと見上げると,巨大なイルミネーションが目に飛び込んできました.雨にけぶる東京タワーです.てっぺんは雨雲に隠されたり現れたりしていました.

この巨大鉄塔ももうそろそろ50年が経とうとしています.私が5歳の頃に訪れた東京では,どの観光スポットに行っても東京タワーのおもちゃで埋め尽くされていました.パリのエッフェル塔に比べると優雅さには欠けますが,それでもどっこいがんばっています.ここ10年くらいで随分とイルミネーションが洗練されて美しくなりました.地上波デジタルのための新たな電波塔建設が取りざたされているので,そのうち東京で最も高い建築物の座を明け渡すことになるのかもしれません.

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2005/10/16

秋めく

Fall2005_006m10月も中旬となり,さすがに秋めいてきました.今年は残暑が長く続き,いまだに秋雨前線が長雨を降らせているのですが,植物はすっかり秋のモードに移っています.右の写真は自宅前の土手に生えているセイタカアワダチソウとススキです.

セイタカアワダチソウは外来種なのですが,日本の秋を彩る花として今ではすっかり定着してしまいました.電車の窓からも黄色い花の群落をそこここに見ることができます.別名セイタカアキノキリンソウとも言うようです.確かに花の色や付き方がアキノキリンソウと似ていますね.

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2005/10/15

カントリー・ポップのスタンダード

I'm Alright [from US] [Import] Jo Dee Messina,価格: \1,045 (税込)

jo_dee_messinaim_alrightJo Dee Messina はアルバムジャケットを見る限りどこにでもいるような気さくなお姉さんといった感じです.いわゆる "スター・シンガー" という印象ではありません.垢抜けているようにも見えません.しかし彼女がカントリーポップのシンガーであることを考え合わせると,これはむしろ利点として働いているのではないでしょうか?洗練されてはいないけれど,草の匂いが心地よいヴォーカルによって,聴く者を楽しい気分にさせてくれる第一級のシンガーだからです.

このアルバムはまさに典型的なカントリーポップが詰まったアルバム.静かな秋の夜長に耳を澄まして聞く音楽ではありませんが,ドライブのお供にはもってこいだと思います.アルバムタイトルの "I'm Alright" はその典型でしょう.カントリーポップを初めて聴くという人にお勧めします.

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FreeBSD 6.0 リリース間近

当初予定では8月中にリリース予定だった FreeBSD 6.0 ですが,やはり開発が遅れており10月11日にやっと Release 6.0-RC1 がリリースされました.これからそれほど日を置かずに src/tree がタグされ,いよいよ 6.0-Release のビルドが始まるはずです.どんなに遅れても10月中にはリリースされることでしょう.

メイジャー・バージョン・アップなので,いきなりインストールして運用するのは控えたほうが良いと思いますが,いろいろと新機能が追加されているはずなので楽しみですね.

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2005/10/09

まさに,ローマは一日にして成らず

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) 新潮文庫 塩野 七生,価格: \420 (税込)

ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) 新潮文庫 塩野 七生,価格: \460 (税込)

Nanami-Shiono-Roma_Non_Uno_Die_Aedificata_Est塩野七生さんの有名なシリーズの文庫版です.これはその第一巻と第二巻.ローマの建国期を扱っています.塩野さんの著作を読むのは全く初めてだったので,世評の高さに期待をもって読み始めたのですが,大変読みやすい日本語と,知的で抑制された筆致が素晴らしく,買って良かったと思わずにはいられないシリーズです.

歴史モノは,しばしば特定の人物や体制への思い入れが強いあまり,それを素直には受け入れられない読者にはついて行けない代物に仕上がってしまうことが多いのですが,この著者はローマへの極めて強い思い入れを持ちながらも,冷静で公平な歴史家の目で,あたかも経営学の教科書を書くように淡々と書き綴ります.しかも後代を生きる者の特権を振りかざして,あと出しジャンケンのように"歴史の総括"を行ったりはせず,あくまでローマの同時代人の視点を大切にしているところが実に素晴らしいところです.

伝説のローマ建国が紀元前753年で,それからローマ半島を統一するまでに実に500年もかかっているのですね!まさにローマは一日にして成らずということでしょう.イタリア半島中部の遊牧民が若きリーダーに率いられて定住生活を始め,周辺勢力と数限りない戦争を繰り返しながらも少しずつ領土を拡大していきます.すでにその頃から,被征服民にもローマ市民と同様の権利と義務を与えてローマ同盟に同化させていくやり方を取っていたとはちょっとした驚き!

長期的な戦略に裏付けられてそのような政策を採ったわけではなく,当時の弱小勢力としては少しでも自分の身内を増やし,直接税の賦役として戦ってくれる兵士の数を増やしたかったというやむをえない事情があったのでしょう.しかし,このポリシーが地中海全域を支配するに至ったローマの,最も強力でローマ的な特徴であることは古来から繰り返し主張されているので,おそらくそれはその通りなのでしょうが・・・もうすこしガバナンスの問題として自分なりに考えてみたいと思っています.

また貴族対平民の権力闘争も大変興味深いです.帝政を否定し,かといってギリシャ都市国家のような直接民主制を取り入れることもせず共和制を敷くのですが,そこには元老院という寡頭制の仕組みが取り入れられて,民意の吸い上げと,少数だが複数の権力者による統治の安定の間の危ういバランスを取ることにどうにか成功していきます.

上巻でのローマはまだまだ小国,滅亡していないのは単に運が良かったからとも言えそうな程度なのですが,下巻でイタリア半島統一を成し遂げるまでの長い道のりは,地中海世界の多様性を改めて教えてくれる素晴らしい教材です.それにしてもガリア人はこのころからローマを悩まし続けていたのですね.

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2005/10/08

病院の待ち時間

CA250082m持病があるので半年ごとに近くの総合病院で検査と診察を受けています.その長さはもう10年を越え,担当医師も二人目となりました.自分の体の癖もかなりわかるようになっていますので,昔のように毎回の検査結果に一喜一憂することもなくなりました.何しろ過去5年分くらいの検査数値はいつでも取り出せるようにファイルしてありますので,長期的な傾向がつかめていますし異常値はすぐにわかります.

それにしても,総合病院での待ち時間の長さは何とかならないでしょうか?朝9時前に受付を済ませたとしても診察の順番が回ってくるのは早くても10時台,遅いときには11時を過ぎます.その後会計に回って再び順番を待ち,支払いを済ませて病院を出るのにさらに30分程度はかかるので,午前中は完全につぶれてしまいます.

歯科医のようにあらかじめ時間を予約するようなことでもしてはどうかと思うのですが,総合病院のようなところではなかなかそうもいかないようです.医師や看護婦も休む間もなく働きづめで,かなりお気の毒です.なぜこのように病院が混雑するのか,人口当たりの医師や病院の数が少なすぎるのか,それとも皆が病院に行く頻度が高すぎるのか,なんとも解せません.国民皆保険で,比較的安心して医療を受けることが出来る日本のシステムは素晴らしいとは思うのですが,簡単な検査と診察に半日を費やさなければならないのも不満が募ります.これはトレードオフなのでしょうか?

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