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2006/02/01

問題作を含むコンテンポラリー・カントリーの名アルバム

The Metropolitan Hotel [from US] [Import] Chely Wright,価格: \2,114 (税込)

Chely_Wright-The_Metropolitan_Hotel先日ポストしたアルバムに引き続きリリースされた Chely Wright の第6作目のアルバムを紹介しましょう.

彼女は第一級のコンテンポラリー・カントリー・シンガーですが,その現代的な面が強く出たのがこのアルバムだと思います.その意味でこのアルバムの中心は第6曲目の大ヒットシングル "The bumper of my S.U.V." です.メロディーラインは滑らかにしっとりと聞かせる高質のものなのですが,その歌詞は深く政治に関与する内容を含んでおり,イラク戦争からしばらく時間がたった2004年時点でのアメリカの賛否両論が渦巻く状況を反映したものになっています.歌詞はざっとこういう内容です.直訳に近くこなれていない点は御容赦ください.

私のS.U.V.のバンパーには赤い "アメリカ海兵隊" と書かれたステッカーが貼ってある.昨日それを見て私に罵声を浴びせた女性がいた.

兄のクリスはもう14年もそこにいる.父はベトナム戦争のときには海軍にいた.祖父はノルマンディーで勲章をもらった.

でもだからといって私が戦争を望んでいるわけではない.私は共和党員でも民主党員でもないけれど,この狂った世界をたくさん旅して回った.それをより良く理解したいから.でもまだわからないことがたくさんある.自由だからこそ訊きたいことがたくさんある.

私はヒロシマにも,朝鮮半島の非武装地帯にも,バグダッドにも行った.答えを全て得たわけではないけれど,あの女性はわかったうえで海兵隊を嫌っているのか?知ってほしい,平和に日々を暮らせるそのために,私はステッカーを貼っているということを.

てな感じです.どうです?先日,前作 Everythingレビューをポストしましたが,その中で紹介した DVD 映像の体験が歌詞に歌い込められていることが良くわかります.また混迷の度合いを強め世論が分裂してバルカン化しているとも言われているアメリカ社会に対し,相互理解と和解を勧めるメッセージにもなっていますね.ちなみにヒロシマに行ったということは日本では岩国の海兵隊に行ったということなのでしょうね.私のレビューで三沢と書いたのは間違いでした.

ただしこの曲が収録された CD-Single のジャケットは馬鹿でかい星条旗を背に立つ彼女の写真なので,彼女の真意がどちらに傾いているかは明らかなように思います.このシングル版の Amazon.com でのレビューが,アメリカの分裂した世論を反映してか★か★★★★★の両極端に分かれているところがまた悲しい.でもカントリーの愛好者が保守派だけではないこともわかってちょっとほっとします.

さて,私はむしろ第2曲目の "Back of the bottom drawer" のほうが彼女の良さを引き出すこのアルバムきっての名曲と思うのですがいかがでしょうか?第4曲目の "The river" もとても良い曲です.

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