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2006/05/11

紛争を生き延びたユーゴの名監督

オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える 木村 元彦 (著),価格: \1,680 (税込)

Kimura_motohikorijeci_ivice_osima新聞の書評で本書を知り,買い求めて数ヶ月経ち,連休中にやっと読むことができました.本書に関しては語録という面が強調されていますが,私にとってはオシム語録がいかに人生の教訓たるかという議論にはさほど興味が無く,彼が旧ユーゴの出身で,忌まわしい紛争を家族ともども生き抜いた末に今日本にいる,ということのほうがよほど衝撃的でした.

ハルバースタムの近作 "静かなる戦争 " の書評で紹介したとおり,20世紀末にバルカン半島で起きた出来事は冷戦後の世界に深刻な警告を突きつけました.その悲劇のさなか,ユーゴのサッカー界がいかに崩壊し,その崩壊に精一杯抵抗した挙句,多民族統一国家だった祖国の誇りを失わずに外国を転々として生き延び,しかも素晴らしい結果を上げ続けていった,という稀有な人物が日本にいるなんて・・・

オシム監督の語録そのものには,さほどの印象を持てませんでした.ちょっとひねりすぎの表現が私には合わなかっただけだとは思いますが,それほどすごいことを言っているようには感じません.それよりも私が感心したのは実行の面です.言行一致をここまで貫くことは大変勇気と度胸がいることです.しかし,それが結局は直接の指導を受けた選手全員はおろか,彼と関係のあった多くの人々から確固たる信頼と評価を受けることにつながっていることが実にすごいことだと感じます.

著者はバルカン半島に魅せられたとおぼしき,日本人としては珍しいジャーナリスト.紛争後の現地取材の記述は生々しくて胸が痛みます.しかし,オシム監督の真髄に迫ろうとする気迫と尊敬の念がひしひしと感じられ,取材する側としては傾倒しすぎではないかと思うほどです.今後も継続的な報告を期待したいところです.

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コメント

日本は2006年6月のワールドカップ一次リーグで一勝もできずに敗退しました.監督はジーコ.その後任にこのオシムが推薦されているという報道されています.決まれば快挙!きっと選手を走りこませるんでしょうね.

投稿: 俊(とし) | 2006/06/25 08:34

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