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2006/07/24

石油を巡る欲望の複雑な構造

シリアナ 特別版 - 出演: George Clooney, Matt Damon, Jeffrey Wright, 監督: Stephen Gaghan

この映画は新聞のレビューでかなり前から知っており,ぜひ見たい映画だと思っていました.そうこうするうちに図らずも国際線の機内で3回ほど見ることができたのですが,日本語字幕がなく,中国語字幕ではちょっと理解するのが難しい・・・英語をそのまま聞いて理解すれば良いではないかと言われるかもしれませんが,日本語字幕を見ながらでも一通り理解するのは容易ではないほど複雑なストーリーなので,細部がわからないまま消化不良状態になっていたのです.7月になってやっと DVD が発売になったので早速購入して見てみました.

うーん,やはり話が複雑すぎます.日本語字幕を見ながらでも一度見ただけでは細部までの理解ができません.4つくらいのエピソードが断片的に平行して走るのですが,それらがしだいにつながりを持ってくる,そうすると人名とその役割が重要になってきて,あれ?この名前は誰のことだったっけな?この顔のおじさんは誰だっけ?という具合に頭が混乱し,なかなか細部の理解までには至らないのです.特に各エピソードが複雑に絡み合ってくる後半では,あるエピソードでの一言とその後の他のエピソードとの因果関係の解釈が難しいのですが,シナリオは事実のみをドキュメンタリーのように淡々と描くのみで,後は自分で推測するしかありません.例えば終盤,なぜボブ・バーンズが中東に強行し,ナシール王子の車列にたどり着いて何かを言おうとしたのか?単に暗殺指令が下っているので用心しろと言いたかっただけなのか?シナリオはそこまで説明的ではありません.そういう意味で,何度でも楽しめる?映画に仕上がっています.

あまり詳しいストーリーを紹介するわけにはいかないのですが,石油利権をめぐるビジネスと国家権力のせめぎあい,産油国の心ある改革者が巻き込まれた後継者争い,シリアとイランが糸を引くレバノンのヒズボラ貧困と差別と劣悪な統治というテロリスト育成三条件がぴったり当てはまる湾岸地域の現実,などなど,現代史の重要な一部を勉強するには大変良い教材です.今,似たことがカザフスタンモンゴル国でも起こっているらしいことを考えると,日本に住む私たちにも大変関係の深い世界であることには間違いありません.大変残念なことですが,中央アジアにもテロリストが生まれるのは時間の問題でしょう.監督自身が Making で語っていますが,この映画では個々の登場人物が主役なのではなく,彼らは石油利権を巡る闘争の歯車に過ぎないという解釈を感じ取らざるを得ません.

George Clooney はこの映画の役作りのために 13kg も太ったそうです.確かに太ったおじさんになっていましたが,この人は役作りが本当に上手いですね.プロフェッショナルです.一方,Matt Damon は Private Ryan の頃に比べるとだいぶ上手くなり,幼い息子の死をきっかけに夫婦の間に生じた微妙な溝に苦悩する夫の役を上手く演じることには成功していますが,産油国の改革王子の参謀としての役作りには完全に失敗しています.Geffrey Wright は完全にプロフェッショナルな俳優で,とにかく上手いの一語に尽きます.特別版のおまけディスクには監督の語り付きの Making 映像がふんだんに含まれ,撮影の意図と苦労を知ることができます.40度を越える酷暑の中,撮影はさぞ大変だったことでしょう.俳優さんも,製作スタッフの皆さんも,大変ご苦労様でしたと言いたくなる映画です.

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