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2006/07/30

ロングテールとべき分布

先日「Web進化論」という本このブログで紹介しましたが,その中に "Long Tail" というキーワードが出てきます.これは,一般に言われる "パレートの法則",80対20の法則などと言われるものに対比させて説明されることが多いようです.例えばビジネスの文脈では,全体の売上の80%は(売れ筋の)20%の商品から成っている,というような話です.

この部分を読んだときには「これって結局は確率分布を仮定しなきゃ決まらない話なのになぁ」と思ったものです.それには背景知識があって,最近の経済物理学で一躍脚光を浴びるようになった "べき分布" のことを "正規分布" と対比させて知っていたからです.正規分布は裾が急速にゼロに近づく分布です.その速さは尋常ではなく,2次関数の指数関数の逆数の速さですから,あっという間にゼロに近づき,しかもその速さはしつこくぐいぐいと加速していきます.これに対してべき分布は非常にのんびりとゼロに近づく分布で,正規分布と比較すると減衰しないも同然のゼロへの近づき方であり,従って長大な裾を引きます.世の中には大多数の庶民とは桁違いのお金を持つ大富豪が存在しますが,これは正規分布で説明できるよりもずっと数が多いことがわかっており,まさに個人の所得はべき分布に乗ることが実証されています.そうなんですよ,悔しいことに,大富豪ってたーくさんいるんです.

さて,パレートの法則を語るときには,どうも正規分布の常識が潜在意識にあるのではないでしょうか?これに対して,ロングテール理論はべき分布の性質を暗黙のうちに仮定しているように思います.実は前者は大きな誤解であり,パレートの法則こそ実はべき分布を前提にしています.後者のロングテールにも考察不足があり,そもそもどのような分布でもかまわないのだけれども,裾の部分の活用を考えるときには,コストとの見合いで考えなければ結局は成立しないはずです.だって,1年に1冊しか売れない本を1000万種類も在庫するコストを誰が払うのでしょうか?

あるブログでこの誤解をもっときちんと説明した記事がありましたので,リンクを張ってトラックバックを打たせていただきます.ロングテールにまつわる過剰な期待を,要するコストと秤にかけて判断すべきと冷静にいさめている点は,まさに私が言いたかったことでした.

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