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2007/04/21

複雑な気分にさせられるAlison Kraussの新譜

Hundred Miles or More: A Collection [Best of] [from US] [Import] - Alison Krauss

約2年半ぶりとなる Alison Krauss の新譜です.前作から間が長く空いており,その間他のアーティストのアルバムには随分出演したり,Grand Ole Opry やコンサートツアーなどは精力的にこなしていただけに,どんなアルバムが出るのかと不安と期待が持たれていました.リリース直前にはその内容が明らかになり,新曲は5曲でその他の曲は他のアーティストのアルバムに収録されている彼女の曲のコレクションということがわかりました.

この時点で今回のアルバムの性格はほぼわかってしまいました.要するに2年半のギャップを埋めるだけの新しい試みや模索の成果は期待できず,従来路線をさらに洗練させたエンターテイメント性が強い作品だということです.実際に全16曲を聴いてみると,その予想通りの性格でありながら,しかし予想をはるかに上回る質の高さに驚きを禁じえません.

これまでの彼女の音楽は New Favorite *1 に象徴されるように純粋なアコースティックでありながら現代的な洗練の度合いを先鋭化させたものとして人気を博し,他の若手のブルーグラスのアーティストにも多大な影響を与えてきました.しかし2004年の前作 Lonely Runs Both Ways *2 からはコンテンポラリー的な色彩を強く出したものに音楽性が変化してきました.さらに今回のアルバムではあの Ron Block *3 がエレキギターを弾くなど,従来では考えられなかった爛熟というか成熟というか,そのようなものを示し始めました.

これは従来からのファンにとっては踏み絵のようなものかもしれません.狭い世界の清教徒であり続けるのか,それともより広い世界に布教の範囲を広げるのか.小乗仏教の厳しさを貫くのか,大乗のおおらかさに乗り換えるのか・・・

ただし洗練されたエンターテイメント性は超一流です.ブルーグラスやカントリーのファンだけでなくより広い階層に対して商業的に当たりを取れる,そういう音楽性の広さを持っていると同時にディテールの質の高さが加わって,完全に安心してゆったりと聴いていられる完成度の高さを誇っています.大部分の曲のエンジニアリングは今やお決まりとなった Gary Paczosa です.

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