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2007年4月

2007/04/30

田んぼに水が入りカエルの大合唱が始まる

私の住む地域では連休中に田植えをすることが多いのですが,私の自宅の目の前の田んぼでもいよいよ水が入り始めました.これに伴い日が暮れる頃からカエルの大合唱が始まるようになりました.混声合唱なので,どういう種類のカエルなのか聞き分けるのは難しいのですが,少なくともニホンアマガエルシュレーゲルアオガエルは確実です.

大合唱は夕暮れ時から始まり,一晩中続きますが,明け方近くになるとだいぶボリュームが下がり,夜明けとともに終息します.このような状態が約1ヶ月ほど続きますが,これは大変重要な風物詩.これが無いと水田地帯に住んでいる甲斐がありません.梅雨の時期を過ぎると,これらの大合唱は聞かれなくなり,ウシガエルのつぶやきが聞こえるのみになります.

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山本邸の人力車

Shibamata_29apr2007065m

昨日の柴又散歩の続き.山本邸の玄関に置いてあった人力車.昭和の初め頃までこのような生活様式が残っていたのですね.谷中の浅倉彫塑館に比べると,山本邸は極めてオーソドックス.それでも日本庭園を取り囲むように建っている和室は落ち着いて心和みます.

話は変わりますが,金属光沢の輝度が高い部分にパープルフリンジが派手に出ているのがわかります.PENTAX FA31mm/F1.8 AL Limited で撮ったのですが,このレンズはこういう特性なのかしら?銀塩カメラ時代の銘玉がデジタル時代にも100%通用するわけではないという実例ですかね?ちなみに山本邸の主はカメラ部品の製造で財を成した人だそうですが,この時代の日本のカメラって,どの程度のものだったのでしょう?

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2007/04/29

柴又散歩

今日は昨日のような寒気の襲来による夕立は無いという天気予報だったので,かねてから行きたいと思っていた葛飾柴又の散歩に出かけました.常磐線金町駅でいったん下車し,京成金町線に乗り換えて一駅目の柴又駅で下車.連休に入っておりお天気も絶好という条件なので,すでに駅前には人の群れ.しかしその中で目を引くのが下の写真の寅さんの銅像.うーむ,なかなかよくできた銅像ですね.

Shibamata_29apr2007002m

帝釈天の参道に入ると,"男はつらいよ" シリーズでおなじみのお団子屋さんを発見,しかも複数."高木屋" と "とらや",どちらがより "本家" なのかはわかりませんが,映画のロケにも使われましたという張り紙を発見.詳細は上記 Wikipedia の解説をどうぞ.

Shibamata_29apr2007024m

柴又帝釈天はどうということのない普通のお寺・・・と思っていたらこれが大間違い.なんと,大正末期から昭和初期にかけて作られた木彫の仏画シリーズがお堂をぐるりと取り囲んでいます.今では周囲をガラスで囲って風化から防ぎ,彫刻ギャラリーとして有料公開.そのために入館料400円を払わなければならないですが,それでもその価値は十分.昼間も照明に工夫をしてほしかったとは思いますが,これほどレベルの高い木彫を見ることはそうそうできません.これはうれしい誤算でした.

その後,山本邸や矢切の渡しを見学し,下の写真の金町浄水場の取水塔を見ながら金町駅まで歩きました.気温は20度を越え日差しも強く,ちょっと汗ばむほどの初夏のお散歩.連休の楽しみ方としてはまずまずかな?何でも金町駅前には地上41階建ての高層ビルが建設されるとのこと.このあたりの景観も一変しますね.

Shibamata_29apr2007078m

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2007/04/28

権力構造のホンネを説いて庶民に逃走を迫る

誇りを持って戦争から逃げろ! (新書) - 中山 治 (著)

中山治さんの著作は過去にも一度取り上げたことがあります.それは日本人が戦略的思考ができないことを取り上げて解説したものでした.今回のこの本は目を引くタイトルだったので買ってみたのですが,著者の名前を思い出してさらに興味を覚えました.

この本はまず,憲法改正に進もうとしている日本人に対して,それがどのような結果をもたらすのか,美辞麗句の裏側にどのような意図が隠されており,それによって誰が得をし誰が損をするのかを戦略論的に解説します.そしてアメリカの属国の軍隊として前線に送られることになる日本の庶民に対し,あまり聞き慣れない "逃走権" を行使しろと説きます.これはどんな国のどんな国民であっても(たとえ軍人であっても)侵されることのない自然権の一つであり,権力者にとっては行使されるのを最も恐れ忌み嫌う権利であると言います.要するに,戦争に巻き込まれそうになったり戦争に行かされそうになったら必死で逃げよ,たとえ国を捨ててでも,と言うのです.

本書の構成は実はそれほど単純ではなく,今日の国際社会の状況では日本は軽武装中立で行くべきなのだがそれは当分無理なので,憲法改正が行われ戦場に送られそうになったら,自然権である逃走権と反撃権のうち逃走権を行使しろ,という論理の組み立てになっています.

これ以外にも昨今の右派の言説に対する強烈な反論がちりばめられているのですが,それが著者自身が右翼そして左翼としてかつて活動した経験に基づいているだけに,なかなか迫力があります.目に留まったキーワードだけ取り上げても

  1. 庶民は騙されて戦場に行く
  2. 「一国平和主義」が日本の伝統
  3. 先制核攻撃を受ける根拠を日本自身が作り出している
  4. 戦場に「書斎武士道」など存在しない
  5. 「健軍の本義」がない
  6. 「逃げる」にも覚悟と訓練が必要
  7. 応援愛国心と戦争愛国心を混同するな
  8. 脱政治イデオロギーのススメ

のようなものがあります.おしなべて昨今の右派文化人の言動が強烈に批判されていることが特徴的ですが,これは憲法改正への動きに対する著者の危機感の表れでもあるのでしょう.

著者の国際戦略論やリアリストぶりには私はおおむね賛成できます.このような権力構造のホンネが解説された本が手軽に読めることも大いに歓迎します.しかし私が不満を持ったのは,逃げろと言い,しかも逃げるには覚悟と訓練が必要と言うわりには,その具体的な手練手管が述べられていない点です.2000年台前半,日本が金融危機から脱出できずにこのまま経済的に衰退していくのではないかという危機感が盛り上がった時期に,日本の富裕層は国外に資産の一部を移し始めました.日本でも持てる者はいつでも逃げられるように備えているのです.中国人は子供を世界に分散して住まわせ,いざというときに備えています.中東では財産の一部をいつでも持ち出せる貴金属にしています.このような手段を一つ一つ解説し,それに備えることを説いてほしかったと思います.それがあってこそリアリズムに徹した議論が可能です.

自分自身と家族が外国語を使いこなせること,財産を世界に分散して持っていること,いざというときに頼れる良心的な友人知人の国際的なネットワークを持っていること,などをすぐに思いつきますが,庶民にとってこれらを実現することは容易ではありません.だからこそそれらを実現するための方法を親切に解説してほしかった.それがリアリズムに徹して生きるということに他ならないと思います.

いずれにせよ,今までこういう考え方をした経験がない人にとっては,目から何枚も鱗が落ちること請け合いの面白い本です.

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2007/04/23

才能が爆発する圧巻のライブ

Reasons Why: The Very Best [Best of] [from US] [Import] - Nickel Creek

ブルーグラスの若手トリオNickel Creek のベストアルバムです.彼らについては私自身が最も注目するブルーグラスのアーティストとして追跡してきたつもり (*1 *2 *3 *4 *5) なのですが,最近は方向性を失って迷走気味と感じ,大変気をもんでいるところでもあります.このアルバムは彼ら最新のベストアルバム.ボーナスとしてビデオクリップが収録された DVD も付いてきますが,これはほんのおまけと考えておいたほうが良さそうです.

ほとんどの曲はすでに過去のアルバムに収録されているものなので,みな聴き覚えがあるものばかり.Mandolin の Chiris Thile の才能にはただただ脱帽するばかりなのですが,しかし単なる技巧だけで人を感動させることには限界があります.この点が最近最も気をもんでいたところで,彼ら自身の音楽性がなかなか形を成さないことに苛立っていました.

ところが・・・衝撃を受けたのは第13曲と第14曲のライブ録音のテイク.これが素晴らしく良いのです.第13曲の "You Don't Have to Move That Mountain" は Sara Watkins のヴォーカルがリードする美しい小曲なのですが,ライブの圧力に対して一歩も引かない楽器の緻密なパフォーマンスが実に素晴らしく,感動させられます.ライブでそれに引き続く第14曲の "The Fox" は彼らのデビューアルバム (*1) に収録されているスタンダードナンバーなのですが,これがなんと9分を越える変奏曲になっており,メンバーの各パートがそれぞれの持ち味をライブの緊張感の下で最大限に披露する素晴らしい一曲に仕上がっているのです.オンマイクで収録したらしく,弦の擦過音が生々しくライブの緊張感を伝えてくれます.ライブでここまでできるとは実に圧巻!この最後の2曲のためだけにこのアルバムを買う価値があります.まだまだ行けるぜ,Nickel Creek!

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2007/04/22

がんばれ老麦客

NHK ハイビジョン・スペシャル "麦客" を見ました.2002年作品の再放送.何とまあ素晴らしい作品です.

舞台は中国河南省の大穀倉地帯.小麦はその性質から収穫期が短く,実が熟してから1週間ほどの短期間で刈り取りを済ませなければならないそうです.穀倉地帯では農家自分たちだけでは刈り取りができず,昔から麦刈りの出稼ぎ農民である麦客(マイカ)を雇ってきました.かつては全て鎌一本でやって来た者たちだったのですが,最近では豊かになった河北省の大都市近郊農民がコンバインに投資し,それを三日三晩走らせて河南省に駆けつけ,人手とは比べ物にならない効率で麦刈りを請け負って現金収入を稼ぐようになっています.これを昔ながらの鎌一本の出稼ぎ農民 "老麦客" に対して "鉄麦客" と呼びます.番組は,豊かになった河北省の農民がさらなる豊かさを目指してコンバインに投資し,昔ながらの鎌一本で出稼ぎに来る貧しい内陸農民を駆逐していく様を描きます.

カメラが追う老麦客はイスラム教系少数民族である寧夏回族の村の農民たち.子供たちを学校にやれないほどの貧しさですが,何とかして貧しさから這い上がろうと必死です.しかし彼らは出稼ぎに行くための交通費すら工面に苦労するほどの貧しさ.貨物列車を無賃乗車し,バスの運賃の値切り交渉をしてようやく河南省にたどり着きます.麦畑では厳しい労働が待っています.番組では言及がありませんでしたが,小麦の "芒(のぎ)" は鋭くて素肌に刺さりやすく,炎天下で腕を出して作業をすると芒がチクチクと痛いはずです.しかし寒村から来た農民たちはそんなことに弱音を吐かず,摂氏38度の猛暑の中,黙々と作業をこなしていきます.映像で垣間見る直線鎌の扱いが見事.一株を刈るのに鎌を二度振るのですが,一振り目は刃を立てずに根本を束ねるのに使い,二振り目で刃を立ててサクッと鮮やかに刈ります.労働の厳しさに耐えて働く彼らの姿には目頭が熱くなります.

番組後半,汚れた姿でこき使われる彼らは,一時は自らの惨めさに腹を立てて取材を拒否するのですが,翌日は気を取り直し「俺たちは自らの力で金を稼いでいるのだ」と誇りを取り戻します.そして「3年先5年先にもう一度俺たちの村を撮りに来てくれ」「俺たちがどれだけ変わったか確かめに来てくれ」とまで言います.彼らに暖かく寄り添う取材の視線が見事です.しかし現実は厳しい.鉄麦客の桁違いの効率のお陰で老麦客の賃料は年々下がる一方.賃料は畑の面積あたりいくらで決まるのですが,以前は一畝(ム)660m2 あたり60元を越えていた老麦客の賃料は今では30元でないと雇い主が現れない有様.結局期待したほどの現金は手にできずに帰途についたとナレーション.今年は5年目なのですが,取材に行きます?

一方,稼ぎまくるはずの鉄麦客.その高い効率からコンバインの到来を待ち望む農家は多く,順番を無視して鉄麦客の奪い合いが起きるほどなのですが,一畝あたりの賃料の交渉がうまくできない人がいたり,地形の関係からコンバインを入れることができずに手刈りの部分が残って農家とトラブルになったり,思ったほど楽ではありません.それでも彼らは老麦客が一日かかって稼ぐ賃料を30分で稼いでしまい,豊かな農民はますます豊かになっていきます.彼ら豊かな農民の目標は,都市部の外資系企業で高給を稼ぐ知識労働者です.自分の子供にそうなって欲しいと願う親心を責めるわけにはいきません.この部分の取材の視線も見事としか言いようがありません.

一足先に豊かになった沿海部に比べてまだまだ貧しいままの内陸部.その格差を是正することが中国の最も重要な政治課題のはずなのですが,番組を見る限りこの格差はますます拡大されていくように見えます.これを正すためには積極的な介入政策が必要なはずで,それは中央政府もよく理解していることでしょう.マクロには沿海部の成長の果実をピンはねして内陸部に還流することが必要で,農民銀行のような融資の仕組み,公的資金による農業基盤整備,農産物加工食品の起業,軽工業などの内陸誘致などいくらでも思いつきますので,それらは少しずつ進められていることとは思います.しかし,外の世界を知るようになってその格差に目覚めた農民たち,いまだ劣悪な地方政府の統治の質,さらに加速する沿海部の発展の速度などを考えるにつけ,格差是正は遅々として進んでいないように感じます.

本作品は2003年の ATP(社団法人全日本テレビ番組製作社連盟)第20回 ATP 賞グランプリを受賞しています.

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2007/04/21

複雑な気分にさせられるAlison Kraussの新譜

Hundred Miles or More: A Collection [Best of] [from US] [Import] - Alison Krauss

約2年半ぶりとなる Alison Krauss の新譜です.前作から間が長く空いており,その間他のアーティストのアルバムには随分出演したり,Grand Ole Opry やコンサートツアーなどは精力的にこなしていただけに,どんなアルバムが出るのかと不安と期待が持たれていました.リリース直前にはその内容が明らかになり,新曲は5曲でその他の曲は他のアーティストのアルバムに収録されている彼女の曲のコレクションということがわかりました.

この時点で今回のアルバムの性格はほぼわかってしまいました.要するに2年半のギャップを埋めるだけの新しい試みや模索の成果は期待できず,従来路線をさらに洗練させたエンターテイメント性が強い作品だということです.実際に全16曲を聴いてみると,その予想通りの性格でありながら,しかし予想をはるかに上回る質の高さに驚きを禁じえません.

これまでの彼女の音楽は New Favorite *1 に象徴されるように純粋なアコースティックでありながら現代的な洗練の度合いを先鋭化させたものとして人気を博し,他の若手のブルーグラスのアーティストにも多大な影響を与えてきました.しかし2004年の前作 Lonely Runs Both Ways *2 からはコンテンポラリー的な色彩を強く出したものに音楽性が変化してきました.さらに今回のアルバムではあの Ron Block *3 がエレキギターを弾くなど,従来では考えられなかった爛熟というか成熟というか,そのようなものを示し始めました.

これは従来からのファンにとっては踏み絵のようなものかもしれません.狭い世界の清教徒であり続けるのか,それともより広い世界に布教の範囲を広げるのか.小乗仏教の厳しさを貫くのか,大乗のおおらかさに乗り換えるのか・・・

ただし洗練されたエンターテイメント性は超一流です.ブルーグラスやカントリーのファンだけでなくより広い階層に対して商業的に当たりを取れる,そういう音楽性の広さを持っていると同時にディテールの質の高さが加わって,完全に安心してゆったりと聴いていられる完成度の高さを誇っています.大部分の曲のエンジニアリングは今やお決まりとなった Gary Paczosa です.

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2007/04/18

寒く湿った春

週末に気温が大幅に上がったかと思ったら,週明けとともに気温は急降下し,昨日,今日と真冬並みの寒さに戻りました.お天気はしとしと雨.関東地方に北東気流が流れ込んで,寒く湿ったお天気が続いています.しまいかけたコートやマフラーを引っ張り出し,ストーブやコタツのお世話になっている御家庭も多いのではないでしょうか?

しかし私の記憶ではこの季節のお天気は本来大変不規則で,このように寒い日が続く年も珍しくなかったように思います.それにしても暖冬の今年に桜の花が散った後でこれほどの寒さが続くのは意外でした.

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2007/04/15

ナナカマドの新緑

Home_apr2007027m

昨日に続いて自宅の庭の木々の新緑を紹介しましょう.今回はナナカマドです.本州中部だと2,000メートル前後の亜高山帯で見られる木で,秋に赤い実をつけ,また紅葉が大変美しい木なので,昔から憧れていました.たまたま近くのホームセンターで苗木を安く売っていたので,買ってきて植えたものです.東北では低山でも普通に見られ,かなり大きく育つようです.十和田湖畔のナナカマドの街路樹には大変感激した覚えがあります.

毎年桜の花が満開になる頃に芽吹きだし,それからすぐに蕾をつけて白い花を咲かせます.花が終わってから若い枝がぐんぐんと伸び,秋になると赤い実をつけて紅葉します.・・・という具合に順調に育ってくれれば良いのですが,植えたところが日当たりが良すぎる暖地なので,猛烈にアブラムシがたかって葉がしおれたり,夏の高温で元気が無くなり,台風の風で葉が傷んだりして,秋にはボロボロの状態になり,なかなか実をつけてくれませんし,紅葉を楽しむことも出来ません.毎年剪定を行い,肥料もあげて,それなりに気を使っているのですが.ああ,無念.

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2007/04/14

アオモジの新緑

Home_apr2007010m

早春に薄黄色の美しい花をつけて庭を彩ってくれるアオモジ.本来は西日本に分布する木なのですが,造園屋さんの気まぐれで北関東のうちの庭にも♂の株が植わっています.もう花の季節は終わり,新緑が芽吹きだしました.季節が早春から初夏に移り変わるにつれて,この木の葉の茂り具合がどんどんと深くなっていくのを眺めるのは大変楽しいものです.もうしばらくすると,初夏の風に気持ち良さそうにそよぐアオモジの葉が見られることでしょう.

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驚愕すべきドキュメンタリーの傑作「延安の娘」

タイトルは聞いたことがあるものの見たことが無かったので,気楽な気持ちで録画予約をしておきました.それを週末になって見てあまりの質の高さに驚きました.それが NHK の平成13年の作品「延安の娘」です.

1970年代,北京から革命の聖地延安に下放された紅衛兵の中には,かの地で子供を生んだカップルがいました.しかし当時の状況ではそれを表ざたにすることは出来ず,密かに里子に出された女の子がいました.娘の両親は下放が終わって北京に戻ってから離婚.二人はそれぞれ再婚し,別々の道を歩むのですが,父親は良い職には就けず,今でも貧しい暮らしを強いられています.そこへ当時の仲間から娘が会いたがっているという思いがけない知らせ.父親は戸惑い迷い悔い悩みます.娘のほうは里親を転々とし,継子の扱いを受けながらも成人して地元の青年と結婚.男児をもうけてようやく生活の展望が見えたところで,両親に会いたいと思い始めます.そこで下放後も北京に戻れず残留している男性に両親捜索を依頼.これからさらに話は発展.娘はついに北京に行って父親との面会を果たしますが,母親は面会を断り,会うことは適いません.このエピソード以外にも,当時の理不尽な処罰を受けた者が,真実を明らかにし名誉と尊厳を回復したいという執念に駆られて行動するエピソードが並行して走ります.

文化大革命という狂気に満ちた政治権力闘争に巻き込まれた若者たちの30年後の姿.文革は私も子供心に覚えていますが,それが毛沢東が始めた権力闘争だったと知ったのはだいぶ後になってのことです.当時は北京放送局の日本語放送が毎晩のように毛沢東語録を語りかけ,実は私も面白がって北京放送局から送ってもらった粗末な印刷の毛沢東語録(日本語版)を持っていました.そのような政治的な時代だったことを改めて思い出します.

土壌浸食が進む黄土高原の映像が見事.ただし雨と風による表土流出が大変気になりました.音楽も一流です.しかし何よりも驚くのはこのドキュメンタリーを制作した監督 池谷薫さんとスタッフたち.2年間という長い時間をかけながら,状況が刻一刻と変わる中,北京と延安の現場にカメラを入れ,何の演出も通用しない当人たちを執拗に撮影し続けます.ナレーション無し,当人たちの発言だけで全編を構成.しぐさや表情を淡々と写しているようにも思えるのですが,実はそこには生身の人間から放たれる強烈な想いが満ち満ちています.よくぞこのような画が撮れたものだと感激します.ドキュメンタリーとして最高のでき.世界中でいくつもの賞をとったこともうなずけます.現在でも各地の映画館で上映が行われているようですね.

放映当時からすでに6年が過ぎ,中国はさらに変化が進んでいます.歴史のうねりに翻弄され,しかし歴史の闇に葬り去られてなるものかともがく庶民たち.中国の経済的発展はさらに彼らの真実を葬り去ろうとしているように見えます.北京の父親の家は,再開発のためにひょっとしてもう取り壊されてしまったのではないでしょうか?

余談ですが,実は私が最も感動したドキュメンタリーは他に一つだけあります.これも NHK が放映した第2次大戦中に日系人強制収容所に収容された少年の数十年後のドキュメンタリー.もう20年以上前の作品だと思います.カリフォルニアのあるハイスクールに野球が得意だった日系人の少年がいました.ところが日米開戦で強制収容所に送られることに.放課後の教室で金髪のガールフレンドと抱き合って別れを惜しむ姿を見たと当時のクラスメートが証言します.その日系人の少年と思しき老人を取材陣は捜し当てインタビューを試みます.単刀直入に聞かれた瞬間,老人は一瞬だけハッと言う表情を見せ,かなり長い間無言でいるのですが,ようやく「きっと人違いでしょう」とだけ寂しげに答えるのです.この30秒ほどに彼の人生の全ての想いが詰まっているのだということが,見るもの全てに強烈に伝わる,そういう映像だったことに私はショックを受けました.映像の力の凄さを思い知らされ,全身が震えたことを覚えています.

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2007/04/10

キジムシロ

Ushikunaturefield_apr2007040m

キジムシロとは,雉筵と書く植物.春先に黄色い花をつけます.里山の林床ではごくごく一般的な植物.キジがその上に座るような植物という意味なのでしょう.上の写真は一昨日,近隣の自然観察公園で至るところ見かけたキジムシロのうちの一枚.

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2007/04/08

里山にゼンマイにょきにょき

近隣の自然観察公園に出かけてみたら,コブシはほとんど終わり,桜は散りかけ,そして次なる花たちがだいぶ咲き始めていました.林床ではスミレやカキドオシが満開ですが,それ以外にも下の写真のようにゼンマイがニョキニョキと触手を伸ばしている最中です.きっと巨大なゼンマイの葉が繁ることでしょう.

Ushikunaturefield_apr2007016m

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法と良識の価値を教えてくれた名作

十二人の怒れる男 - 出演:ヘンリー・フォンダ,リー・J・コッブ,監督:シドニー・ルメット

名作です.1957年の作品なので今年はちょうど50周年になります.最近再びテレビで放映されたので録画して楽しみました.鑑賞するのはこれで3回目くらいですが,とにかく何度見ても素晴らしい映画です.モノクロの密室対話モノ,しかも蒸し暑い夏の夕方という設定で,それだけで暑苦しくなってくるのですが,少年を冤罪から救えるかどうかというぎりぎりのところで,"Reasonable Doubt(合理的な疑い)"という言葉を軸にドラマは進みます.

ある殺人事件の陪審員として選ばれた12人の男たち.何日間にも及ぶ審判の後,陪審員たち自身の手で評決を下さなければなりません.状況は被告の少年にとって圧倒的に不利.誰しもが有罪を確信していますが,一人だけ,Henry Fonda 演じる男だけが有罪に確信をもてない,合理的な疑いがあると言い出します.それからドラマが始まるのですが,証拠や証言が実は曖昧だったり怪しかったりという事実が次々に明るみに出るにつれ,それまでは偏見も手伝って有罪を確信していた男たちが "合理的な疑い" という法の概念と良識に従い,次々に無罪を主張するようになっていきます.

とまあ,大変有名な映画なのであらすじはこのあたりにしておきますが,シナリオも良いし,演出も良いですね.カメラワークには不満もありますが,狭い密室での出来事なので,あまり無理はいえません.終盤近くになって雷雨が降り出す演出はなかなかのもの.蒸し暑いニューヨークの夏をよく演出しています.Henry Fonda の表情が良いです.良識,誠実,勇気などのキーワードが思い浮かびます.数々の戦争映画で見せた表情とそれほど違いはしないのですが,このときの表情に近い顔を戦争映画で見せたのは,John Ford が監督した "ミスタア・ロバーツ" かな?

この映画を見てすぐに連想されるのは,Sidney Poitier の大出世作 "夜の大捜査線" ですね.これも素晴らしい映画ですので,機会を改めて紹介しましょう.

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これぞ「行き当たりばっ旅」

NHK の番組"世界ふれあい街歩き"は,昨年暮れから大画面テレビで衛星放送を見ることが出来るようになった我が家で,このところ私が最も楽しみにしている番組の一つです.リハーサル無し,行き当たりばったりの海外での街歩き,それも有名観光地ではなく,庶民が暮らす裏通りをあてども無くふらふら歩く.何の変哲もない中国の街の裏通りで,突然素晴らしいお屋敷や庭園に行き当たる魅力はたまりません!しかも撮影はハイビジョンのステディカムなので,まるで自分が歩きながら目の前に現れる光景を見ているような,用意周到な撮影テクニックで収録されています.

通常の取材では,まずロケハンをやり,街角のお店や工房などと出演交渉をやってから,あたかもそれらに偶然行き当たったかのような画作りをするのですが,この番組ではそれは極力避けられていることが画面からわかります.しかし,そのためには撮影前に何度も街を歩いて,出会うとすればどのあたりでどのようなものに行き当たるはずかという推定は行い,あとは運に任せるのだそうです.このような行き当たりばったりを楽しむ旅を "行き当たりばっ旅" と命名した知人がいますが,この番組はまさにそのような体験を味わうことが出来ます.ニューヨークのビレッジで犬を散歩中の Billy Joel に出くわすというハプニングもありましたね.

私はムービーを撮る趣味はありませんが,デジカメを持ってこのような街歩きをしたいものだといつも思います.それこそ絵になる裏通りが世界中に何と多いことか.早く定年になりたい!

シリーズは2005年3月に開始されました.第1回目はベネチア.すでに70回近くが放映されています.放送は原則として BShi で毎週火曜日の19時からですが,金曜日9時から再放送が行われ,日曜日の正午からアンコール放送が行われています.また地上波でもときどき放送されているので,全体としては大変複雑で入り乱れた順番になっています.私はいつも録画しては見たら消すをくりかえしていますので,もう忘れてしまったものもありますが,週末になると平均2本は見ているかな?長続きしてほしい番組です.

Wikipedia の記事はこちら.私と同様の解説が書いてありますが,上の私の感想は Wikipedia を参照する前に書いたものであり,盗用したわけではありませんので念のため.

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2007/04/07

霧の朝

Ca250001m

桜も満開を過ぎましたが,まだまだ冬と夏のせめぎあいは終わっていません.いまだに気まぐれのように寒気が日本列島にまで南下し,なごり雪をちらつかせたりした今週ですが,そういう日には私の通勤路には朝霧がたちこめることが多いです.上の写真は4月5日木曜日の朝の風景.あたり一面に霜が降り,近くの沼から沸きあがった水蒸気が朝の寒気に冷やされて霧になったものです.こういう景色を見ながら駅に急ぐ私の通勤ももう10年を超えました.

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2007/04/04

うんベー!

Nonta2007045m

猫のしぐさはいくつかの大変特徴的なパターンから成っていますが,これはその中の一つ.前足のお手入れをするときの顔.猫好きにとっては見慣れたしぐさですが,犬に比べると表情に乏しい猫ではあっても,このしぐさのときには普段とは異なる顔相になります.

話は変わりますが,この猫はデジカメにとっては大変やっかいな被写体です.なぜかというと,頭部や背中は濃いキジトラなので反射光が弱く,下面は白いので大変反射光がつよくなります.こいつが日向にいるときの写真を撮ろうとすると,現在のデジカメの能力では,背中が黒ツブレするか,腹が白トビするか,そのいずれかは避けられません.上の写真は直射日光は当たっていませんが,右後足の部分が白トビして階調が無くなっているのがわかります.

これを回避するには,露出を変えて数枚撮り,Photoshop上で合成するなどのテクニックが考えられますが,動く被写体なのでそれも無理.デジカメのセンサーのラティテュードが拡大されるのを待つしかなさそうです.

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2007/04/02

スミレも満開

Aroundhome_apr2007051m

昨日散歩をしているときには桜以外に様々な植物の開花を確認しました.その中でも毎年お馴染みとはいえ,スミレの仲間を林床で見つけるとうれしくなってきます.上の写真はタチツボスミレ.おそらく最もよく見かけるありふれたスミレです.花びらの色のバリエーションは大きく紫色の濃さが様々です.これ以外に見かけたのはスミレ.こちらはもっと紫色が濃くて,葉が全て根出しなので簡単に区別がつきます.

スミレという日本語は,花びらが大工さんが墨付けに使う墨ツボに似ていることから "墨入れ" が語源だという説があり,これはかの牧野富太郎が唱えたらしいのですが,あまり確かなものではなさそうです.

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今年は咲いたコブシの花

Aroundhome_apr2007003m

今年はコブシの花が咲きました.うれしいことです.というのも昨シーズンはほとんど咲かず,大異変だったからです.昨シーズンはコブシのつぼみが形成される時期が異例に寒く,つぼみの成熟が阻害されたらしいのです.関東地方の広い範囲でコブシが花をつけず,大騒ぎになったのでした.

関東地方では,落葉樹が芽吹く前の枯れ木ばかりの雑木林の中で,いち早くたった一人で純白の花を咲かせる気高い木として,早春の人々の心に訴えかける魅力を持っている植物として名を馳せています.

コブシの親戚のモクレンを英語では Magnolia といいます.中華圏ではこの言葉はホテルやレストランによく使われる言葉.日本の雑木林での気高さとはかなり趣きが異なりますが,それでもある種の敬意を払われていることは感じられます.

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2007/04/01

誰の羽毛?

Home_apr2007001m

我が家の玄関のナツツバキの新緑に,鳥の羽毛が引っかかっていました.大きさと色から判断すると,どうもヒヨドリのもののようです.昨晩は強風が吹き荒れたので,鳥たちにとっては過ごしにくかったのではないでしょうか?すでに抱卵が終わって子育てに入っている鳥たちも多く,モズの親子がつい最近まで玄関の至近距離で営巣していました.これから木々が芽吹き,昆虫が動き出し,鳥たちが巣を作り,生き物の世界が騒がしくなってきます.サシバはまだやって来ないかな?

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桜咲く

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東京の桜の開花に遅れることほぼ一週間ですが,我が家の周辺でもこの週末にようやく桜が三分咲きほどになりました.歩いていける距離のところに大きな沼に注ぎ込む川のほとりの桜並木があるのですが,その素晴らしさにも関わらず,地元の人しか訪れることがない場所であるために,花見の人出や喧騒とは全く縁がないその風景が,その素晴らしさを知っている者にとってはたとえようもなく価値のあるものに思えます.

Aroundhome_apr2007030m

桜並木を歩いていると,地元のかなりお年を召した農家のおじいちゃんが,沢山の肥料の袋を耕運機に曳かせた荷車の上に積んで,田んぼの方へ降りていきました.それを見守っているのは私と妻の二人くらいのもので,それが長年繰り返されてきた日常なんだなということがよくわかるとともに,その美しさもひとしおに感じられます.

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