法と良識の価値を教えてくれた名作
十二人の怒れる男 - 出演:ヘンリー・フォンダ,リー・J・コッブ,監督:シドニー・ルメット
名作です.1957年の作品なので今年はちょうど50周年になります.最近再びテレビで放映されたので録画して楽しみました.鑑賞するのはこれで3回目くらいですが,とにかく何度見ても素晴らしい映画です.モノクロの密室対話モノ,しかも蒸し暑い夏の夕方という設定で,それだけで暑苦しくなってくるのですが,少年を冤罪から救えるかどうかというぎりぎりのところで,"Reasonable Doubt(合理的な疑い)"という言葉を軸にドラマは進みます.
ある殺人事件の陪審員として選ばれた12人の男たち.何日間にも及ぶ審判の後,陪審員たち自身の手で評決を下さなければなりません.状況は被告の少年にとって圧倒的に不利.誰しもが有罪を確信していますが,一人だけ,Henry Fonda 演じる男だけが有罪に確信をもてない,合理的な疑いがあると言い出します.それからドラマが始まるのですが,証拠や証言が実は曖昧だったり怪しかったりという事実が次々に明るみに出るにつれ,それまでは偏見も手伝って有罪を確信していた男たちが "合理的な疑い" という法の概念と良識に従い,次々に無罪を主張するようになっていきます.
とまあ,大変有名な映画なのであらすじはこのあたりにしておきますが,シナリオも良いし,演出も良いですね.カメラワークには不満もありますが,狭い密室での出来事なので,あまり無理はいえません.終盤近くになって雷雨が降り出す演出はなかなかのもの.蒸し暑いニューヨークの夏をよく演出しています.Henry Fonda の表情が良いです.良識,誠実,勇気などのキーワードが思い浮かびます.数々の戦争映画で見せた表情とそれほど違いはしないのですが,このときの表情に近い顔を戦争映画で見せたのは,John Ford が監督した "ミスタア・ロバーツ" かな?
この映画を見てすぐに連想されるのは,Sidney Poitier の大出世作 "夜の大捜査線" ですね.これも素晴らしい映画ですので,機会を改めて紹介しましょう.
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