やはり20世紀の最高傑作
2001年宇宙の旅 出演:キア・デュリア, ゲイリー・ロックウッド 監督:スタンリー・キューブリック
この私にとって特別な映画は,少年のころ映画館の 70mm スクリーンで観て,その後ビデオや DVD でも何十回も観ているのですが,今回は BS-hi での放送ということで,HD 画質に期待して録画しました.結果は大当たり!プリントの質が恐ろしく良いです.もう40年も前の作品ということを忘れさせるほど.HD 画質にリマスタリングした際に相当のエンジニアリングを施したと思われます.DVD では失われてしまっていた微妙な階調やテクスチャーが再現され,特に人肌の描写が大変リアルで秀逸.宇宙船や船外活動 POD の質感も大変素晴らしいです.
HD 画質だとこれまで見落としていたこともいろいろと見えてきます.まず,地球軌道上の宇宙ステーションに到着時,入境審査を機械で行うのですが,そのときの言語選択ボタンの中にはちゃんと "Japanese" がありました.68年の映画でこれは立派.
この映画はリアリズムを徹底させた最初の SF 映画としても記念碑的な作品ですが,それはソフトな面にも反映されていることは良く知られています.例えば,地球から宇宙ステーションに向かうシャトルには "Pan Am" のロゴが付いていますし,テレビ電話は "Southwestern Bell" のサービス.そして宇宙ステーションの中にはちゃんとホテルの "Hilton" のサービスデスクが置かれている,ということまでは熟知していたのですが,今回,実は "Howard Johnson's" の "Earthlight Room" もあったことを発見!
改めて感じたのは,Discovery 号の船外活動 POD のデザインの素晴らしさです.見れば見るほど惚れ惚れします.機能と美が見事に調和しています.これほどの工業デザインが,アポロ11号が月に到達する前に作られた映画に登場していること,これがすごい.当時は宇宙船はもとより,コンピュータですら一般の人には得体の知れない遠い存在だったのですが,それを物語の主役に据えたこともしかり.この映画がアメリカではなくイングランドのスタジオで作られたことと関係しているのかもしれません.
いずれにせよ,SF 映画の最高峰であることはもちろんですが,それにとどまらず,映画という表現手段の到達限界を突破して新たな高みに引っ張り上げた記念碑的作品であることも,異論を唱える人は少ないでしょう.Wikipedia の解説記事はこちら(日本語)とこちら(英語).
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