味わい深い人生の交歓
列車に乗った男 (L'homme du train) - 出演:Jean Rochefort,Johnny Hallyday,監督:Patrice Leconte
ひょんなことから NHK 衛星映画劇場で放映されたものを録画して見ました.フランスの田舎町,そこに列車に乗ってやってきたやくざ者,そしてその町の貴族出身の老人.この二人が偶然に夜の薬局で出会い,互いに相手が何者であるかを悟り理解しますが,やがて二人の間には奇妙な友情が芽生えていきます.やくざが銀行強盗を計画した日は,老人が入院して手術を受ける予定の日.その日に至る数日に起こる些細な出来事が緻密に意味深に描かれるのがこの映画の白眉.やくざは堅気の金持ちの落ち着いた暮らしを垣間見,老人はアウトローの情熱に憧れるのです.
そして,仲間と銀行強盗に入ったやくざ者は警官に撃たれて死亡,同じ日に入院して手術を受けていた老人は容態が急変して死んでいきます.しかしラストではこの二人の人生が交錯し,入れ替わり,幻想的なシーンで締めくくられます.
この監督の映画の作り方は独特です.中世の絵画では,絵に埋め込まれた宗教的なメッセージを読み取ることが鑑賞者に要求されるのですが,この映画の中でも観る者に絵解きを要求されていると感じられるシーンがいくつもあります.その一つ一つにはついていけないのですが,私に最も受けたのは,悪党の一味の中の狂相の男,毎日午前10時に意味深な言葉を叫ぶ以外は一言も口を利かないこの男の存在です.犯行直前につぶやいたのは「我々は時と鳩のように去る!」何じゃぁこれは?
助演の Johnny Hallyday の苦渋に満ちた顔がいいです.この人は元々はフランスのロックンロール歌手だったのですね.Patrice Leconte のしみじみと味わい深い映画.フランス語の台詞がよく似合います.
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