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2008年2月

2008/02/24

あなたの死を心から悼む

アラスカ 星のような物語 写真家・星野道夫 はるかなる大地との対話 - 出演:オダギリジョー

NHKBS hi放映された映像を録画して繰り返し観ては噛みしめ,酒を飲みながら観ているときには時々涙を流しています.

星野道夫が千葉県市川市の小学校の卒業文集に記した言葉は,なんと "浅き川も深く渡れ".こんなことを書く小学生が一体いるのでしょうか?星野道夫の最大の魅力は,彼の National Geographic クラスの素晴らしい映像美もさることながら,映像と一体となった彼独特の数々の箴言です.上記以外にしばしば紹介されるものには,"時々,遠くを見ること" や,"厳しい冬の中に,あるものは美しさを見る.暗さではなく,光を見ようとする.それは希望といってもいいだろう","冬をしっかり越さないかぎり,春をしっかり感じることはできない" などがあります.いずれも,星野道夫の映像と合わせると,深い味わいを得られるものばかりです.

星野道夫の写真集は,そういうわけで,写真集であると同時に一つの詩集ともなっており,それがなかなか胸に響く,それで熱心な固定ファンが増えロングセラーが多い,ということなのだろうと思います.動物写真家にとって National Geographic 誌に載った時点で商業的な成功は半ば約束されたようなものですが,彼の場合には,さらに自らの言葉という付加価値がそれをより高いレベルに押し上げた,ということができると思います.もちろん,不慮の事故による早世が,伝説的価値を高めている点も否定できないでしょう.一方,彼の言葉は日本語なので,市場は日本国内に限られているという制約はつきまといます.

さて,この番組の取材班が,星野道夫の写真集の動画版と見まごうばかりの数々の素晴らしいハイビジョン映像をものにしたことは驚異的です.Katmai National Park and Preserve は Brooks Fall の Brown Bear の映像や,Denali National Park and PreserveMooseGrey Wolf の映像も素晴らしいのですが,特に Caribou の渡りの映像はあまりに感動的.この映像を撮るために取材陣がどれほどの日数と苦労を重ねたかを想像すると,それはもう涙無しには観ることはできません.

ただしこの番組の編集では,所々に日本の若いサラリーマンのあまり意味のない映像が加えられており,これはちょっと興ざめ.全編で1時間50分もあることも気軽に観る気を失わせます.サラリーマンの部分を取り去り全体を短く55分程度に収めた版も放映されましたが,私はこちらのほうをお勧めします.

星野道夫の死因は,カムチャツカ半島でのテレビ番組取材の野営時にヒグマに襲われたことですが,これには色々と尾ひれがついています.一般に,熊が生息するベア・カントリーでは,食べ物(特に臭いが強いチーズやソーセージ)をテントの中に持ち込むことは厳禁なのですが,現地では地元テレビ局がヒグマを定期的に餌付けしていた,そして野外での食事の後で一人眠っていた星野道夫のテントに,人馴れした熊が食事の匂いに引きつけられてやってきて,食事の匂いが残っている星野道夫を襲った,日本から来た取材班は例によって "夜は宴会" だったのですぐには気づかず,助けることもできなかった,云々.用心が足りなかったと言えばその通りなのですが・・・

本当に惜しい人を亡くしました.地球温暖化がこれだけはっきりした現在,彼が愛した極北の土地の変化を,彼ならばどのような映像として残していくのか,あれこれ想像して思いは尽きません.

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2008/02/23

リアリズム政治学の白眉

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1 (単行本)
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 2 (単行本) - ジョン・J・ミアシャイマー (著),スティーヴン・M・ウォルト (著),副島 隆彦 (翻訳)

現代人必読の書です.私は,昨年秋の朝日新聞の書評で酒井啓子さんが絶賛していたのを読み,これは読まねばと思って買い求め,年明けにようやく読了しました.

こういうものを骨太の知性とでも言うのでしょう.長年続いたイスラエルロビーによる極端なイスラエル優遇政策が,アメリカの戦略的利益にも,イスラエルの利益にすらなっていないという論を,膨大な証拠をあげて徹底的に論証した大作です.著者のミアシャイマー John J. Mearsheimerウォルト Stephen Walt はアメリカ政治学本流のリアリストとしてあまりに有名な学者たちだそうですから,これにはさしもの熱情に浮かれたイスラエル・ロビーも,常套手段である反ユダヤ主義のレッテルを貼るわけにはいかず,正面切っての反論はしにくいでしょう.これでアメリカ外交政策の潮流は確実に変わるものと期待されています.

イスラエル・ロビーとは,アメリカに住むユダヤ人を中心とする各種団体,イスラエル寄りのシンクタンク,イスラエル寄りのマスコミ人などによる緩やかな連合として実質的に構成され,アメリカにおける最も強力なロビーイング団体の一つと考えられています.イスラエルに有利な政策を連邦議会の議員や政府関係者に働きかけ,イスラエルに有利な意見をマスコミで行き渡らせ,イスラエルに有利な学説を大学に広めるなどの活動を行っているそうですが,これらの活動を著者たちは事細かに紹介し,その影響を評価していきます.

9.11テロの動機はイスラエルとアメリカによるパレスチナに対する不当な扱いだった,イラクへの侵攻はイスラエル・ロビーの影響で決断された,イスラエル・ロビーの圧力によりイスラエルのレバノン侵攻を支持したことで,パレスチナ和平交渉は頓挫し反米テロを抑えることはますます困難になったなどなど.一つ一つのイベントについて,その意思決定の過程にイスラエル・ロビーがいかに介入したかを論証するくだりは見事とした言いようがありません.

著者たちの評価の基準は全くぶれていません.それは著者たちがリアリズム政治学の本流であることからも来るのでしょうが,常に "アメリカにとっての戦略的価値" から離れることはありません.これは実に立派.そして,イスラエルにとっての戦略的価値とアメリカにとってのそれとは異なるということを繰り返し論証し,イスラエルが今ではアメリカにとっての戦略的お荷物になっていると主張します.つまり,アメリカがこれほど極端にイスラエルを優遇する理由は無いし,それはアメリカ,イスラエル双方にとって不利益となっていると主張するのです.これではイスラエル・ロビーの毛を逆撫でること間違いありませんが,著者たちの筆はいささかもひるむことはありません.

イスラエルが核弾頭を200発も保有しているという暗黙の事実を,事もなげに繰り返し記述しているあたりはさすがリアリスト.物事をきれいごとで覆い隠したりせず,冷徹に現実を直視して,複数の政策オプションの戦略的価値を互いに比較して優先順位をつける,という作業を淡々と進めます.

私がうれしかったのは,アメリカの中東政策は石油のためだ,石油ロビーの影響を受けているという "古めかしい俗説" を明確に論破していることです.世界中の人々が,時には政策担当者すらこのような誤解をしていることが多くていつも腹が立つのですが,ここでもリアリストの面目躍如たるものがあります.

アメリカ民主党で大統領予備選挙を戦っているバラク・オバマの外交顧問はかのブレジンスキーだそうですが,ブレジンスキーはこの本の内容を支持すると明言しており,オバマがアメリカ大統領に当選するようなことがあれば,アメリカの外交政策は大きく舵を切ることになるでしょう.そうすれば,アメリカはイラクの泥沼から抜け出すことが可能になり,イスラエル,パレスチナ,レバノンにも平和が訪れることになるかもしれません.アメリカの中東政策はガラリと変わるでしょう.

日本語版は上下2冊で合計700ページほどもある大作であり,しかも政治学の本として書かれているので,通俗書を読むようには読み進められませんが,全体としては大変読みやすく配慮され,私は通勤電車の中で10日ほどで読み終わることができました.とにかくお勧め.この本を読まずして外交問題を正しく理解することは難しいでしょう.

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2008/02/21

温暖化時代には北へ向かえ

NHK BS1 でシベリア鉄道モスクワからウラジオストクまで旅するという番組 (*1 *2 *3) を観ているうちにふと思いつきました.これから数百年は人類は温暖化の時代を生きていかなければなりません.もちろん,地球の気候というものは大変複雑な非線形力学系なので,温暖化は100%確実なものではなく,ひょっとすると氷河時代への入り口となる寒冷化の時期も経験するかもしれません.しかし,このまま行けば地球全体が,地球の歴史上かつてなかった速度で温暖化していくことはほぼ確実だろうと考えられています.これほど短期間に温暖化が進むと,人間の代謝機能は高温への適応が間に合わず,現在暖温帯に住んでいる人類の大部分は,現在の寒冷帯への移住を迫られるのではないでしょうか?そうすると,シベリア鉄道の長大な沿線は,ひょっとすると最適な移住先になるかもしれません.なにしろ,モスクワからウラジオストクまで 9,000 km 以上もの長さがあります.食料の確保は問題ですが,沿線の面積だけからすると,相当の人間を養えることは間違いありません.

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2008/02/17

正統派の実力を聴け

Stones in the Road [from UK] [Import] - Mary Chapin Carpenter (アーティスト)

Mary Chapin Carpenter はカントリー音楽の押しも押されもせぬ正統派の,そのまたフェアウェイ・センターにいるような人です.以前にこのブログでも紹介したとおり,彼女は1958年の生まれなので,現在49才の中年の歌手です.Princeton, New Jersey に生まれ,Life Magazine の役員を父に持ち,幼少期の2年間を日本で過ごしています.

彼女の音楽性は,すでにこのブログで表現したとおり

光と影の濃淡のバランスの見事さ

現代に生きる人々の希望と不安を高度に音楽的に表現し,カントリー・フォークを今日に十分通用するコンテンポラリーな音楽に洗練させた
ということに尽きると思います.彼女の音楽は,能天気でもなく,かといって陰鬱でもなく,悩みに苛まれながらも明日もがんばって生きていこうという希望に満ちています.

このアルバムは1994年のイシューですが,US Country で第1位,2X Platinum を勝ち取っただけのことはあり,正統派のカントリー・フォークの実力を余すところなく聴かせてくれます.録音やアレンジの秀逸さは前作と同様です.

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寒さ続く

先週から非常に強い寒波が到来し,日本全体を寒気で覆い続けています.当地の朝の最低気温はこのところマイナス4度程度.気温の低さは,毎朝新聞を取るためにドアを開けるときの空気の冷たさと,そのときに見る玄関脇の常緑の木カクレミノの葉の縮こまり具合で知ることができます.あるときマイナス7度くらいにまで下がったときには,カクレミノの葉は本当にくしゃくしゃに縮こまっていました.

Ukishima_feb2008056m

風が強いことも寒さに拍車をかけています.冷たい向かい風にコートの襟を立てて長時間歩くのはなかなかこたえます.それでも,日照時間はどんどん伸び,日差しも日に日に強くなっています.朝はカチカチに凍っている水溜りも午後には溶けますので,春は着実に近づいているのがわかります.

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2008/02/13

大寒波襲来

Ca251061m

日本列島に雨や雪を降らせた低気圧が,例によって北海道を過ぎて猛烈に発達し,日本全体が強い冬型の気圧配置にすっぽりと入っています.大陸からは強い寒気が南下し,関東地方の日中の最高気温は快晴で強い日差しがあったにもかかわらず何と4度.風も強くて外を歩くのは辛いです.夜に入ってもこの寒さは一向に衰えず,寒風が吹きすさぶ高層ビルの谷間を月が煌々と照らしています.こういう日は熱燗でおでんというのが定番なのでしょうが,なかなかそうも行かないのが現実.今日はホットワインを寝酒にするかな?

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2008/02/11

日だまり

これも昨日のアシ原で撮った一コマ.薄い雲を通して柔らかく暖かな光が降り注いでいましたので,アシ原全体が淡い金色に包まれたように輝いていました.そういう光を写真に撮ると,かえって明度も彩度もコントラストが低くなってしまい,眠たい絵になりがちです.そういうときには,こういう色の濃い被写体を持ってくると,全体がグッと引き締まります.

Ukishima_feb2008020m

細いアシのテクスチャーはデジカメ泣かせ.下手をするとディテールがつぶれて壁を塗りつぶしたようになってしまいますし,かといって下手にシャープネスをいじるとこれまたディテールが破綻してしまいます.上の作例では,絵全体のピクセル数を縮小するときに,縮小に最適化されたバイキュービック法でシャープネスを維持しています.これは Adobe Photoshop CS3 の機能ですが,こういう高度な機能を手軽に扱えるようになったことは素晴らしいですね.

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春遠からずとも風強し

昨日は朝から柔らかな日差しがあり,最高気温は久しぶりに10度を超え,これならば春遠からじ,という気がしてきました.その春の日差しに誘われて,今シーズン初めて広大なアシ原で有名な某所に家人とともに鳥見に出かけてみました.

Ukishima_feb2008028m

しかし,しかし,湖岸では北風が強く吹き,まだまだ冬枯れのアシ原が茫漠と広がっていました.鳥の影もまばらでしたが,定番のミサゴが魚を取り,チュウヒがアシ原の中の動物を狙っては低空飛行を繰り返していました.これだけでも結構な見ものなのですが,鳥見人は私たちの他に見当たりませんでした.さもありなん,冷たい風の中に身をさらし続けるのは非常に辛く,しばらく歩き回りましたが,寒さには勝てず,いそいそと引きあげました.

春はもう少し先ですね.

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2008/02/10

戦略的撤退のケーススタディ集

撤退の研究―時機を得た戦略の転換 (単行本) - 森田 松太郎 (著),杉之尾 宜生 (著)

書店で撤退の研究というタイトルが目立ったので,中味もろくに確かめずに思わず買ってしまいました.内容は,軍事篇と企業篇が交互に並んだオムニバス形式のもので,過去の戦史と企業経営の歴史を題材にとり,撤退に関するいくつかのキーワードを軸に話を進めています.

最も面白かったのは,キスカ島撤退作戦と,日露戦争における乃木希典の戦術に関する名誉回復の二つで,いずれも軍事篇です.前者は有名な撤退作戦で,幸運にも恵まれたのですが,有能な司令官が作戦を行うとこのようなことも可能だという稀有な記録です.古代からの古今東西の戦史の中でも光り輝く帝国海軍の金字塔です.

後者は司馬遼太郎の "坂の上の雲" において徹底的に批判された乃木大将の戦術の無能さに対する反論で,理路整然と乃木を擁護する内容です.これまで坂の上の雲の内容を史実に準ずるものと思っていた私にとって,これは大変に反省を強いられる内容でした.

日露戦争に関しては,別のエピソードで,児玉源太郎大山巌ら陸軍の司令官たちが,戦争のこれ以上の継続は無理であり,戦略的目的達成のためには講和で有利な条件を引き出すことこそ重要と考えていたことが紹介されます.戦争は政治戦略のための手段に過ぎないという考え方を,明治の軍人たちは素養としていたことは大変興味深く,その後の昭和の帝国陸軍の偏狭さとの対比が引き立ちます.

特に,日露戦争の戦史の編纂において,都合の悪い事実がほとんど隠蔽されたままになったことは,その後の帝国陸軍の戦術理論を著しく歪め,日中戦争や太平洋戦争において大敗を喫する遠因となったことが詳細に検証されている点は素晴らしいです.これは企業経営において失敗から何をどうやって学ぶかに直結する重要な点です.組織において,失敗をどう記録し,どう反省し,何を教訓として学び,記憶し語り継いでいくのか,身につまされる話です.

これら軍事篇のエピソードに比べると,企業篇は掘り下げが足りず,消化不良というか,そもそも素材の質・量の蒐集が足りません.企業経営における撤退にも,色々な目的,局面,葛藤,そして人間的なドラマがあるはずなのですが,いずれのエピソードにおいても,通り一遍の説明だけで,異論,反論を含めた十分な内容になっていないのが大変残念です.

戦略的撤退の研究においては,この著者らが表現したような方法論のほかに,ゲーム理論に則った経済合理性からの人間行動学という方法論もあると思います.今後はそのような研究も増えていくことと思います.どちらかが他方より優れているということは言えないと思いますが,お互い補い合って,戦略的な決断における合理性と人間の行動についての研究が進むことを期待します.

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2008/02/09

トラディショナルな曲作りが光るシンガー・ソングライター

My World [Enhanced] [from US] [Import] - Cyndi Thomson (アーティスト)

Cyndi Thomson は歌手と言うよりはソングライターと言ったほうが良いのかもしれません.このアルバムは歌手としての彼女のデビューアルバムですが,聴いてみると良い曲が多いアルバムだということがすぐにわかります.全て彼女自身の作曲によるものなので,曲作りの才能に恵まれていることには確信が持てます.これだけ良い曲が多いアルバムは大変お買い得感があります.歌のほうもなかなかの実力ですが,ちょっと素直すぎて特徴には乏しいかな?

アルバムタイトルの第1曲目 "My World" もなかなか良い曲ですが,第3曲目の "What I Really Meant to Say" は聴いてみてすぐに素晴らしい曲だということがわかります.この曲は US Country Chart で堂々の1位を獲得していますので,その実力が広く認められたということでしょう.第8曲目の "Hope You're Doing Fine" も良い曲ですね.良いと言えない曲を指摘するほうが難しいくらい,良い曲の密度が高いアルバムです.

彼女の曲はトラディショナルなカントリー・ポップが主体で,現代的な陰影や実験的な試みとは無縁,しっかりと商業的大衆路線に乗っていますが,これは悪口でも皮肉でもなく,それだけに安心して聴いていられます.彼女が Carrie UnderwoodTaylor Swift の曲を書いたらきっと無敵の組み合わせになるのではないでしょうか?これ,真面目な話です.

2001年のデビューの後,2002年に結婚してからレコーディング活動を止めていたようですが,2006年にはレコーディング活動を再開したようです.1976年10月生まれですので,まだ31歳.歌手としても作曲家としてもこれからの活躍が期待できます.

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2008/02/08

革命家を育んだバイク旅行

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 - 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル,ロドリゴ・デ・ラ・セルナ 監督:ウォルター・サレス

ちょっと評判になっていた映画だったので,気にはなっていたのですが,運良く NHK 衛星映画劇場で放映されたので録画して鑑賞しました.

良い映画です.純粋無垢な医学生の青年を革命家に変貌させた原体験がこのようなところにあった,というのはある意味うれしい驚きでした.当初は気楽で興味本位のつもりの南米大陸横断のバイク旅行だったのですが,行く先々での貧困と差別と搾取を目の当たりにしていくにつれ,純粋無垢な医学生だったチェ・ゲバラの中に,これを何とかせねば,という思いが湧きあがっていきます.

バイク旅行のコンビを組む生化学者で現実主義者の友人との対比・組み合わせが大変良く計算されており,演出も見事.良質のロードムービーです.主人公を演じるガエル・ガルシア・ベルナルの演技は特に光っており,アカデミー主演男優賞ものです.当初の無垢で頼りなげな青年の表情から,悩み苦しみながらも次第に自らの意思を固めていき最後にはそれが確固とした確信に変わる,そういう青年の内面の成長を見事に演じきっています.

えーと,それでですねぇ,最後に気がついたのですが,この映画の監督のウォルター・サレスって,ブラジル映画のロードムービーの傑作 "セントラル・ステーション" を撮った人なのですね.なーんだ!彼なら世界中から資金とスタッフが集まること請け合いです.道理で良くできた映画だと思いました.

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2008/02/03

肉は硬いほうが旨い

昨日所用で外出したときに,手早く昼食をとる必要があり,数年ぶりにファーストフードのハンバーガーを食べました.食べてみて改めて感じたことは "何と柔らかくて食感に乏しいことか!" ということでした.フワフワと噛み応えが無く,調味料の味ばかりで食材そのものの味がせず,何を食べているのかすらよくわかりません.店内を見回してみると,若い子連れのカップルや高校生の友達連れなど,若い世代が圧倒的に多い.この国の味覚の行く末について心配になってきました.

私は食べ物の硬さについては家人と意見が合いません.家人はしゃぶしゃぶをするときには,肉が硬くならないうちに早めに引き上げたほうが美味しいと言うのですが,私はじっくりと硬めにゆでててから食べるほうが好きです.これはステーキも同じ.日本では一般的に肉は柔らかいほうが高級で美味しいものとされているようですが,私はこれには全く反対です.硬い肉を噛みしめているうちに滲み出てくる旨みがわからないのでしょうか?

パンについても同様です.日本人は食パンの耳を切り取ってサンドイッチを作ります.硬い耳は敬遠され,ひどい場合にはハトの餌として捨てられてしまいます.パンの固い皮を噛みしめることで味わえる旨みを知らないのでしょうか?面白いのはフランスパンです.バゲットの硬い皮は私にとっても手強いのですが,大変噛みしめ甲斐があり,わずかに塩気を含む素晴らしい旨みが滲み出てくるのですが,日本人はこれが苦手のようで,中の白い柔らかい部分だけを食べて皮を残す人がいます.ところがフランス人にはこれと逆の人がいるのです.つまりバゲットの中味の白い部分をスプーンで掻きだして捨ててしまい,薄い皮の部分だけにバターとジャムをつけてむしゃむしゃと噛みしめるのです.こういう人をフランスのビジネスホテルで見かけたときは絶句しましたが,しかし理にかなった贅沢な食べ方をしているとも思いました.

日常的にファーストフードのハンバーガーのような柔らかいものばかり食べていると,あごが発達せず,唾液の分泌も悪くなり,その結果味覚が退化していくのではないでしょうか?私たちの祖先は,今からすると相当硬いものばかりを食べていたのではないかと思います.木の皮,木の実,昆虫,魚介類,そして動物の肉.そうそう柔らかいものは無かったはずです.1万年ほど前に農耕をするようになってからも,パンやナン,雑穀の類はそれなりに歯ごたえがあったはず.その結果発達してきた味覚を大切にしたいと思います.肉やパンは固いほうが美味しいのですよ.他にもせんべいや豆菓子,するめにジャーキー,ああ,よだれが出てきた・・・

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判断しがたいフォークの新人

One Cell In the Sea [Enhanced] [from US] [Import] - A Fine Frenzy (アーティスト)

A Fine Frenzy という奇妙な名前の女性フォーク歌手の本名は Alison Sudol で,1985年に Seattle で生まれました.曲を聴いてみると現代的なフォークが主体です.やはり西海岸の匂いがします.曲調は Lucinda Williams を思わせる叙情的なものが多く,Lucinda 系が好きな人にはすんなりと入り込めるように思います.Lucinda には熱烈なファンが多いにもかかわらず私はその部類ではないので,このアーティストの魅力は何とも判断しがたいところです.彼女自身が曲を書く人なので,曲作りと歌の両面からの評価が必要ですが,曲作りは私には判断できず,歌い手としての評価は可もなく不可もなく,といったところです.

とにかくまだまだ十分に若いので,これからどのような音楽性に変化していくのかは本人ですらわからないでしょうから,あまり先入観を持たずに見守ることにしたいと思います.流通しているジャケットには2種類あるようで,私が購入したものは,なかなかケバイ色調とデザインなのですが,Amazon に掲載されているものはこれよりはずっと清楚で万人受けするものです.マーケティングの都合で差し替えたのかもしれませんね.

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Winterhome_feb2008005m

昨日は一日薄曇の寒い一日でしたが,今日の明け方からは雪が降り出したようで,朝目覚めるとすでに積雪3センチほどになっており,湿った雪がどんどん降っていました.お昼前には雨になったので木々の梢に積もった雪は落ち,その雨もほとんど止んだ状態になりました.しかし,家の前の道路は完全なシャーベット状態になっています.これを雪かきするのは難しいなぁ.夜になるとまた雪が降り出すという予報なので,明日の朝が大変心配です.夜半に晴れ上がって放射冷却で凍結でもしたら最悪です.

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