元禄の如意輪観音
これも本日つくば市北条を訪ねたときのスナップ.とある神社の境内にあった如意輪観音像です.石に刻んである碑銘を読むと,何と元禄六年!西暦では1693年のはず.十干十二支では癸酉(みずのと・とり)の年です.時の将軍は徳川綱吉.今から300年以上前に奉納された観音像です.非常に良い状態で残っていました.この観音像は法輪が大きくて見事.また石の頂点の梵字も大変きれいに残っています.
なお,アップした画像は,石肌のテクスチャを強調するために,白黒画像とオーバーレイするという Photoshop の常套手段を用いています.
このあたりには十九夜講の風習があったらしく,街道筋にその石碑がありましたが,実は如意輪観音と十九夜講とは大いに関係があります.十九夜講とは女性たちが妊娠・出産・子育てを助け合い,知恵を伝え合うという主旨の講だったようで,近世になってから発達したもののようです.すなわち江戸時代から明治にかけて流行ったもののよう.そして十九夜講の女性たちの信仰の対象となったのが,この如意輪観音だったというわけです.お隣の千葉県でも同様の講が盛んだったそうなので,かなりの地域的な広がりをもって流行していたのでしょう.
ちなみに,街道筋には二十二夜の石碑も合ったのですが,これは日本全国でもかなりマイナーのようです.一般的には二十三夜の "月待ち",すなわち二十三夜講が普通でした.これも十九夜講につながる女人講の一種のようです.日本の近世の習俗でもすでに失われ忘れられようとしているものがいかに多いか思い知らされます.
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コメント
トラックバックありがとうございました。
十九夜講は、私の地区では年3回行われていますが、如意輪観音がその信仰の対象であると言うのは、初めて知りました。
参考になりました。
投稿: RX5 | 2008/06/19 06:08
この観音像も,右側の碑文を良く見ると「十九夜念仏」という文字が読み取れます.写真をクリックすると一段大きな画像が現れますので,それで見てください.
投稿: 俊(とし) | 2008/06/19 21:07