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2008/07/21

宇宙ファン必見の秀作映画

アポロ13 (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第1弾) - 出演:トム・ハンクス,ケビン・ベーコン,ゲイリー・シニーズ,ビル・パクストン,エド・ハリス,監督:ロン・ハワード

この映画 "アポロ13" は宇宙を舞台にした映画としては,史実を基にリアリズムに徹し,かつ人間ドラマを加味してエンターテイメントに仕上げたと言う意味で,おそらくベストワンではないでしょうか?私は今回初めて全編を通して真面目に見ました.良くできた映画であることを改めて確認しました.私はもっと最近の映画かと思っていたのですが,実は1995年の映画なので,もう10年以上も前の映画です.主演のトム・ハンクスのフィルモグラフィーで言えば,1994年の "フォレスト・ガンプ" の直後の作品であり,1998年の "ユー・ガット・メール" や同じ年の "プライベート・ライアン" の少し前の映画だということがわかります.

この映画の元になったアポロ13号の事故と生還は,私自身,子供の頃に毎晩テレビのニュースで報じられるのを見ていたことを良く覚えています.この映画の中でも当時のニュース映像がふんだんに使われており,CBS Evening NewsWalter Cronkite の解説も流されているのがわかります.スタッフ・ロールに彼に対する謝辞が書かれていたのは言うまでもありません.

映画を見始めてすぐに気づくのは,フォレスト・ガンプでも共演したゲイリー・シニーズが出ていることです.ほとんど同時期に公開された映画なので,同じような連中が出てくる映画だなと思う人もいるかもしれません.

いくつか特筆すべきエピソードをあげるとすると・・・

指令船の内部や,ジョンソン宇宙センターの管制室の機械・計器類の造作は見事.また撮影当時としては世界最高レベルのコンピュータ・グラフィックスを駆使したサターンVの発射シーンなど,大変お金をかけてリアリズムに徹しています.特に発射シーンは,燃料タンク外壁から無数の氷の板が剥がれ落ちてくるシーンが必見.ロケットを支える支柱が次々に外れていく場面も真に迫っており,モデリングには相当の経費がかかったものと思われます.

自由落下軌道を飛行する飛行機内で本物の無重力状態を作り出して撮影することが行われました.このため,宇宙服の手袋を脱いだものがフワフワと浮遊したり,ジュースを大きな液滴にしてそれを口で捕まえて飲み込むシーンなど,本物の無重力状態での船内シーンの撮影が可能になりました.これは映画史上おそらく最初.この撮影はおそらく大変だったはずです.一回の無重力状態は数10秒間しか続きません.撮影のためには何10回,何100回と飛んだはずです.スタジオ撮影のカットと照明などの状態も完璧に合わせなければなりません.

1970年頃の時代雰囲気が良く伝わってきます.主人公の娘がヒッピーの格好をしてみたり,家のラジオからは当時のヒット曲が流れてきたり・・・まだベトナム戦争は終結していなかったものの,アメリカ中に厭戦記分があふれていました.

指令船と月着陸船の名前はそれぞれ "Odyssey" と "Aquarius" であり,前者の事を指して主人公が "2001年宇宙の旅だろ?" と言うシーンがあります."2001 A Space Odyssey" は1968年公開の映画であり,宇宙関係者は全員食い入るように見たはずの映画なので,これは十分ありえる話です.

アポロ11号で実際に月面に降り立ったニール・アームストロングバズ・オルドリンが主人公の母親を訪ねて不安をなだめるシーンがあります.母親は当人たちのことを良く知らず,「宇宙関係の人?」と聞き返すところが実に面白い.このときの二人は一瞬御本人たちのようにも見えたのですが,スタッフロールで確認するとやはり俳優さんでした.

強襲揚陸艦 "IWO JIMA (硫黄島)" が乗組員たちを回収に向かいますが,私が驚いたのはその名前.最初は何だこの名前は?と思ったのですが,すぐ次の瞬間に硫黄島のことだと合点がいきました.

実際の救出劇は,NASA のジョンソン宇宙センターだけで行われていたわけではなく,おそらく数万人以上のメーカーの人間が,アメリカ中で緊急の検討を重ね,NASAと連携していたはずです.NASA は日本の JAXA と同様お役所であり,宇宙ミッションのプランナーとオペレータではありますが,それ自体に技術が集積されているわけではありません.技術はそれを開発し製造したメーカーにあるはず.アポロ計画で指令・機械船を開発・製造したのは North American Aviation (後に Rockwell International) で,着陸船を開発・製造したのは Grumman でしたが,これらメーカーのエンジニアたちは,おそらく数日間は徹夜続きだったはずです.これらのエピソードは全く語られませんし,逸話も漏れ聞こえてきませんが,彼らの社史のようなものには記述が残っているかもしれません.時代的には,アメリカの製造業が最も輝いていた時期に当たり,技術に対する実力もプライドも十分にあった時代でした.

映画は登場人物たちの反目や葛藤などを絡めた人間ドラマに仕立てあがられていますが,実際には,宇宙飛行士たちは地上からの指示任務をこなすだけで手一杯で,喧嘩などしている余裕は無かったそうです.数々の応急対策も,ぎりぎりで間に合ったように描いてある映画とは逆に,早い段階で最良の案が決定され,十分な余裕をもって対策が打てていたのだそうです.不測の事態に対しても,万事このように対処しなければならないというお手本のようなミッションだったのですね.

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コメント

Henry S.F.Cooper,JRのルポルタージュ 13:THE FLIGHT FAILED は1973年に書かれましたが、「アポロ13」の映画公開に先立つ1994年に、立花隆によって邦訳され、ほぼ忠実なドキュメント番組がテレビ朝日で放映されました。
地上管制官のジーン・クランツがスタッフに言った"Keep it cool"という言葉が印象的に使われていましたが、実際の彼は、GIカットがよく似合うがっしりとした猪首の偉丈夫です。
人間ドラマという面からいえば、生還・救出時のニュース映像を振り返りながら、このプロレスラーのような偉丈夫が、「(お互いに)よくやった」といいながら目頭を押さえるところが キュンとしました。
映画のシーンより、よく再放送されるNHK特番のインタビューより、もっと彼の心情が伝わるワンカットでした。
放送以後、再び観る機会がないのが残念です。

投稿: 立花隆のドキュメント番組 | 2008/08/04 15:24

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