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2008/08/27

キューブリックならではのバリー・リンドン

バリーリンドン - 出演:ライアン・オニール,マリサ・ベレンソン,監督:スタンリー・キューブリック

鬼才スタンリー・キューブリック監督の有名な映画ですが,私は初めて観ました.Wikipedia の解説はこちら

キューブリックの後年のフィルモグラフィからいくと,

1960 スパルタカス
1962 ロリータ
1964 博士の異常な愛情
1968 2001年宇宙の旅
1971 時計じかけのオレンジ
1975 バリー・リンドン
1980 シャイニング
1987 フルメタルジャケット
1999 アイズ・ワイド・シャット
というふうになっていますので,時計仕掛けのオレンジとシャイニングの中間に撮られたフィルムであることがわかります.

話の内容自体は,成り上がり貴族の悲劇的な人生,という一語に尽きますが,当時の貴族の習俗としてまだ決闘が残っていたり,母親の優しさがしみじみと感じられたり,話には結構起伏があって,インターミッションを含んで3時間以上の大作ながら,ダレたり飽きさせたりしません.

時代考証を経て細部にまで妥協の余地無く準備・演出された作品で,いかにもキューブリックらしいこだわりが随所に感じられます.特に豪華絢爛で優雅な18世紀後半の英国貴族の暮らしぶりが良くわかり,ルキノ・ヴィスコンティの貴族的で耽美的な映像美に通じるものがあります.

この映画で特筆すべきなのは,ろうそくの明かりだけの照明で撮影をしたシーンが多用されていることです.この "特殊照明" にはすぐに気が付きますが,本当にすごいことです.ろうそくの巨大なシャンデリアも見事ながら,そのゆらめく影と,ろうそくの光に映し出される室内の絵画,家具・調度品や,レースをふんだんに使った服装などが見事に演出されています.1975年時点では,ろうそくの明かりだけで撮影をするのは困難を極め,特別に配慮された方法がとられたことが上記 Wikipedia の記事で解説されています.

アイルランドの伝統的音楽を,今やアイルランドの重要無形文化財とも言うべき The Chieftains が演奏しています.Chieftains については過去にこのブログでも紹介しましたが,この映画撮影当時は無名に近かったはずです.また時代に合わせたバロック音楽が多用されて,重厚さをうまく演出しています.

ペーパー・ムーン(このブログでの紹介はこちら)を父娘で演じたライアン・オニール(Ryan O'neal)がこの映画の主役.名前からわかるとおり,彼自身がアイルランド系だということもあるのでしょうか,この映画の主人公にうまくはまっています.ペーパー・ムーンを撮って2年後の映画なのですが,まだ若々しくてシリアスな役に挑戦し,十分な成功を収めたと言うべきでしょう.

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