Gene Kellyだけが見事だったXanadu
ザナドゥ - 出演:オリヴィア・ニュートン=ジョン,ジーン・ケリー,監督:ロバート・グリーンウォルド
Xanadu というのは,Wikipedia によれば,モンゴル帝国のクビライが,モンゴル高原南部に設けた夏の都,上都(現代中国標準語で Shangdu)のことで,イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)が "クーブラ・カーン(Kubla Khan)" で歓楽の都と歌いだして以来,幻想的な桃源郷の代名詞として使われるようになった地名とのこと.以来,この名前は西洋においても広く使われるようになります.その挙句が,このようなミュージカル・ファンタジーになったというわけです.
この映画の主題となったオリヴィア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)のヒット曲 "Xanadu" は,ELO (Electric Light Orchestra) のきらびやかなアレンジが功を奏して大ヒットしました.私もこの曲を聴きたいばっかりにこの衛星映画劇場の放映を録画して観たわけですが,映画自体は世評どおりの全くのスカ.よくもこれほどひどい映画を撮れたものだと思いますが,唯一素晴らしいと思ったのは,往年のダンス・スターである Gene Kelly の名ダンスです.タップは相変わらず見事ですし,この映画でやたらと目に付くローラースケートの腕前もなかなかのもので,オリヴィア・ニュートン=ジョンとのスケーティングも見事なもの.この映画は,この往年の名スターだけが存在感を放っていて,本来,可愛い子ちゃんスターのプロモーションだったはずの映画も,これでは何のために制作したのか分かりませんね.
思えば1970年代後半から80年代前半,日本の高度成長期はとっくに終わり,しかし知識集約型の高収益産業は育たず,生活水準は上がったものの,もうこれ以上の経済発展は無いという閉塞感はむしろ強まっていた時期,私は学生生活の末期を迎えていました.あの頃,このザナドゥや,ジェニファ・ビールス(Jennifer Beals)のフラッシュダンス(Flashdance)のようなミュージカルのヒット曲がディスコでの定番曲でした.この映画の中で披露される数々のヒット曲を聴いていると,あのころの時代感覚が蘇ってきます.なにかもやもやしていた時代ですが,とても懐かしいですね.
考えてみればこの映画はもう30年近く前の映画なのです.それなのに,私たち50台の大人たちと,それより30歳も若い20台の若者たちが,それほど違和感無く共に楽しむことができます.ところが私たちよりも30才年上の,今では80台の世代になると,私たちとは音楽的,文化的に大きな断絶があって,この映画を共に楽しんだり批評したりすることが難しくなってきます.これは1960年代に始まる世界的な文化大革命の前と後に青春時代を迎えた二つの世代の間の深い溝,と言ってよいでしょう.この溝の深さは相当のものなのですが,それだけに,その後の時代には大きな溝は出来ていません.これが良いことなのか悪いことなのか,判断はつきません.
英語の Xanadu の日本での読み方には "キサナドゥ" というものもあります.この読み方では,イギリスのロックグループ "Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich" の1968年のナンバーワン・ヒット曲 "The Legend of Xanadu" を,日本のグループサウンズ時代のザ・ジャガーズが同年にカバーした "キサナドゥーの伝説" という曲が有名.わたしも中学生の頃聴いていた覚えがあります.これはもう40年前,さすがに古い・・・
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