規格の囲い込みはほどほどに
通勤用のデジタルオーディオプレイヤーを買おうと思ってはや5年ほど経ちましたが,まだ決断に踏み切れません.以前はポータブルの MD プレイヤーを持っていました.しかし,歩いているときはまだ良いのですが,電車内の騒音はかなり大きく,よほどボリュームを上げるか,ノイズキャンセリング機能のあるヘッドフォンを使うわないと,なかなか音楽を楽しめないと気が付きました.
しかし,さすが日本の音響メーカーは大したものです.ソニーがノイズキャンセリング機能を内蔵したウォークマンを発売するようになったのです.これは良いと思って買おうとしてハタと気が付きました.PC から音楽を転送するのに,専用のソフトウェアである SonicStage を使わなければならないのです.これはアップルの iTunes を真似たということでもありますし,複数の音楽レーベルを持つ巨大なコンテンツホルダーとして著作権保護は絶対条件であったと共に,MD 以来培ってきたオーディオコーデックである ATRAC3 を普及させようという戦略にも沿ったものだったのでしょう.しかし,SonicStage の評判は良くありません.私自身,試しにインストールして使ってみたことがあるのですが,動作が遅く,また機能もユーザインターフェースもダサくて,全く馴染めないものでした.残念ながらこの状況は現在でも続いています.
この評判は海外でも同様だったらしく,さすがに海外向けのウォークマンは2007年に独自コーデックから戦略転換して "WALKMAN goes OPEN" というスローガンの下に,WMA に対応すると共に,WMP やエクスプローラからの直接コピーにも対応するようになりました.私のように数千曲の WMA ライブラリを PC の中に持つ者にとって,これは朗報のはずでした.ところが海外向けにはノイズキャンセリング機能を持った機種はなかなか発売されず,ようやく2008年から細々と発売されるようになったに過ぎません.しかも海外の通販サイトでこれらの機種を買おうと思っても,アメリカ国外には発送できないという但し書き付きなので,事実上オープン規格対応のウォークマンは国内では入手できないという状況が続いています.
私がソニーに提案したいことは,評判が悪く国内市場にしか通用しない SonicStage を捨てることと,オープンなコーデックとファイル転送方式に幅広く対応した機種を国内でも発売することです.コーデックの囲い込みが市場のの立ち上がり時期にうまく行けば良かったのでしょうが,コーデックの発展段階はすでに成熟期で,多種のコーデックを利用できるプレイヤーや,コーデックを自由に相互変換できる管理ソフトがこれから求められるものです.オーディオコーデックは一種の規格ですが,一度規格の壁が出来てしまい,それを相互に乗り越えることが出来なくなると,規格間の健全な競争が行われなくなり,それ自身の進歩が阻害されてしまいます.これはアップルについても同様.規格の囲い込みはほどほどにとお願いしたいものです.
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