PCR法が有名になった
ついに日本国内でも2009年新型インフルエンザのヒト-ヒト感染が始まったようです.これで WHO も Phase 6 の発動を真剣に考えざるを得ないでしょう.今のところ鳴りを潜めている中国や東南アジアではどうなっているのでしょう?パンデミックの中心になりそうな地域なのですが,情報が出てくるのが遅いのでしょうか?メキシコみたいになってからでは手遅れなのですが.
成田空港での水際検査や,今回の神戸や大阪での確定診断で一躍有名になったのがいわゆる "遺伝子検査" です.これはウィルスの遺伝子が,確かに新型インフルエンザのものであると判断するために無くてはならない方法.これまで一般にはあまり知られていなかった検査方法です.
まず,インフルエンザウィルスの遺伝子は RNA という高分子です.これが環境中では大変分解されやすいことはあまり知られていません.私たちの唾液や汗には RNA 分解酵素が含まれており,RNA と見るとこれをウィルスと見なして攻撃・分解するよう私たちは進化してきました.この RNA を注意深く採取し,分解されないように保存して,さらに RNA の特定部位の断片について "PCR 法"や類似の方法で数桁倍ものコピーを作ります.これを遺伝子を "増幅する" と言いますが,こうやって十分に濃度を高めた遺伝子について,その配列が想定したものに合致しているかどうかを蛍光標識で調べるのです.
PCR 法は数回にわたって温度を上下させて遺伝子を増幅するのですが,これには結構な時間がかかります.また相手が RNA なので,安定な分子である DNA の遺伝子検査とは異なり,RNA を想定したバイオ・クリーンルーム,RNA を想定した機材,そして RNA に熟練した技能が要求されます.これらを全て備えた施設はそう多くは無く,市町村の保健所で RNA の遺伝子検査が出来るところは限られているはずです.そんなわけで,インフルエンザの確定診断には手間取るのです.もっと迅速に確定できる診断法の開発が望まれますね.
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