パンデミックへの備え
前回に引き続き新型インフルエンザの話題ですが,問題はウィルスの検査法に留まりません.インフルエンザのワクチンを作るには非常に長い期間がかかります.日本ではワクチン接種が政策の影響で抑制気味であり,インフルエンザ・ワクチンの生産は商業ベースに乗らないほど少量です.すなわち生産設備の容量はわずかなものでしかありません.従って,いざ豚や鳥のインフルエンザのワクチンを大量に作ろうと思っても,全国民に行き渡るだけの量を迅速に生産することは出来ません.これで国家安全保障が成り立つのだろうかと思われるほど心もとない体制です.
アメリカでは鳥インフルエンザに備えて,プレパンデミック・ワクチンだけではなく,重症患者向けに多数の人工呼吸器が用意され,しかもそれを使用する優先順位が国民的議論を経て決定されているなど,パンデミックへの備えが進んでいます.それに比べると日本の対応は先進国とは思えないほど遅れています.鳥インフルエンザのパンデミックは確実に起こり,人口の 1% 以上が死亡するという恐ろしい警告もあります.そうなると今の経済危機とは比較にならないほどの大恐慌を世界にもたらします.
私が危惧するのは,今回の豚インフルエンザの比較的軽い症例によって,鳥インフルエンザへの対処がおろそかになってしまうということです.今回の豚インフルエンザは H1N1 亜型という型で,私たちの体の免疫機構にとってある程度馴染みがあります.しかし鳥インフルエンザは H5N1 亜型という未知の型.特に高病原性のままヒトに感染するよう変異すると,私たちの知っているインフルエンザとはかなり異なる症状となり,内臓から出血したり,重度の呼吸器障害を起こしたりと,よく誤解される "風邪の一種" では済まされません.特に若年健常者がサイトカイン・ストームというヒト免疫系の変調により重症化することが指摘されています.
そうなる前に,考えられるあらゆる備えが必要です.社会インフラを預かる電力会社やガス会社では,パンデミック時の対応計画の策定が既に始まっています.例えば社員の通勤手段の確保や会社への篭城の準備など.さすがですね.一方,わが家では昨年秋にはマスク一か月分を確保しましたが,自宅篭城に備えての食料は備蓄が全く足りません.パンデミック時には8週間の自宅篭城が必要で,しかもパンデミックの波は3回ほど起きるということです.本当にそんなことが出来るのだろうかと思いますが,マスコミが騒ぎ出してからでは売り切れて間に合わないのも確か.どの程度の備えをしておいたものか悩むところです.
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