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2009/12/12

消化不良の超ひも理論

はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く(講談社現代新書) - 川合 光(著)

超ひも理論の本を読むのが全く初めてだったのですが,やはり消化不良は免れませんでした.素粒子の世界をできるだけ統一的に記述することを目指してきた現代物理学の最前線で,重力まで含めた究極の統一理論として期待される超ひも理論.特に,理論の中に定数を含まないという特徴は,この理論が究極の宇宙原理であることの証拠かもしれないと期待させる一方,数学的な整合性のためには10次元という高次元が必要で,しかもそのうち6次元が量子スケールで縮退しているという屁理屈は,この理論の本物度に疑問を投げかけるものになっていて,まだまだ気を許せるものではありません.

また,定数を含まないと言いながら,この理論の系として出てくるカラビ-ヤウ多様体の形状は多様たりえるので,その無数の選択肢の中からどれを取るのか,それぞれが異なる宇宙に対応すると言う屁理屈はここでもありえるものの,では我々のこの宇宙はどれか,という選択の問題が本質的には解決されていないように思えます.このあたり,高次元のポアンカレ予想や,サーストンの幾何化予想と整合性は取れているのかなぁ?

理論の歴史的な系譜が詳しく解説されているのは大変良いと思います.このような高度な内容は,科学者たちがどのように悩み切り開いていったかという歴史を知らずには理解することが難しいからです.量子力学相対性理論を学ぶたびに特にそれを感じます.著者によれば,現在は超ひも理論の3回目のブームに当たっているとのことで,更なる発展を願わずにはいられません.

面白かったのは,インフレーション宇宙論への批判と,サイクリック宇宙論です.前者は,宇宙初期に起こったとされるインフレーションは,よほど入念にインフレーションの種(ポテンシャル)が仕込まれていないとうまく行かないということを超ひも理論の立場から批判したものです.これは,インフレーションが必然的・自動的に起きると思い込んでいた私の知識に大きな修正を迫るものでした.今回の読書の収穫物の一つです.

後者は,膨張と収縮を繰り返す古典的な振動宇宙論かと思いきや,そうではなくて,超ひもから始まる宇宙は,ビッグバンビッグクランチをくり返さなければ大きくなっていくことができない,従って現在の宇宙は約50回目のビッグバンで生まれたものだという,これまたとんでもない話です.最初の宇宙はエントロピー不足でインフレーションも起こせないままクランチしてしまうが,何10回目にはちゃんと素粒子が生まれるところまでたどり着くという発散振動する宇宙のシナリオが描かれています.うーん困ったものです,こういうのは.

実は,私は著者と同じ大学の同期生でした.学生時代から著者の優秀なことは学内でも知れ渡っており,大いに将来が嘱望されていました.そして現在,世界最先端の研究を精力的に続けており,このような一般読者向けの著書も書く努力を怠らない姿には本当に敬意を表したいと思います.超ひも理論の発展を祈ります.ダークエネルギーを説明してくれないかなぁ?

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