謹賀新年 2010
新年明けましておめでとうございます.
しかし何ということでしょう,もう21世紀の最初の10年が過ぎようとしているではありませんか?私の寿命は21世紀の前半には尽きてしまうはずなので,もうあまり残りが無いなと気がついたのは2年ほど前ですが,せめて悔いの残らない生き方に努めたいと思います.ともかく例年にならって昨年一年を振り返り,今年一年の希望を書いてみたいと思います.
昨年は不況の一年だったということに尽きるでしょう.2008年9月のリーマン・ショックに始まる世界大不況.各国政府や金融当局は必死で大恐慌の再来を食い止めようと様々な施策を打ち,それらは現在のところ成功しているように見えますが,現在はまだ不況の真っ只中.不況からの脱出にはまだ1年程度はかかりそうです.
この影響は企業経営に大変大きな影響を与えています.特に自動車産業に関しては,北米需要の3割が蒸発したままになっており,しかもこの需要はもう戻ってこないだろうとまで言われています.一方中国では様々な矛盾を孕みながらも力強い需要の成長が見られ,自動車産業にとっては地域戦略,製品戦略の大きな見直しを迫られています.ここで割を食ったのは実はトヨタ.北米で高価格・高収益のミニヴァンや高級 SUV やレクサスブランドで稼いでいたこと,中国進出に慎重な態度で臨んだために他社に比べて出遅れたことが響いています.しかし,これからの成長が期待されるハイブリッド車に関しては,トヨタに圧倒的な技術の蓄積と先行実績があるため競合他社はむしろ白け気味で,ハイブリッドをスキップして半ば無謀とも思える電気自動車戦略を打ち出しているところもあるくらいです.実際,昨年発売された新型プリウスに乗ってみると,その完成度の高いパッケージには驚かされます.このようなストロング・ハイブリッド車が二百数十万円で買えるとなると,他社はそう簡単には追いつけないでしょう.
自動車産業に比べて民生分野はさすがに戻りが早く,もうリーマン・ショック以前の水準に戻った業界も少なくありませんが,ここでも成長の主役は新興国.先進工業国の中産階級の相対的没落は隠しようがありません.このブログの書評や昨年の新年の挨拶で予告されたとおりの事象がすでに始まっているのです.これから私たち先進工業国の中産階級は総体的に没落していき,その代わりに新興国に莫大な数の新しい中産階級が勃興してくるのです.世界はこの歴史的な大転換を平穏に受け入れることができるでしょうか?不況の底がより深くなったり,不況が予想よりも長引いたりした場合,何らかの摩擦や紛争が起きることは十分に予想できます.当然日本はその渦中にあることでしょう.
それにしても,この不況からの脱出の処方箋を考えるにつけ,日本人はつくづく内向き志向なのだと考えさせられます.先ほどの段落の続きになってしまいますが,これから経済が伸びていくのは海外の新興国です.その市場に活路を見出すことに努力を集中させなければならないはずなのですが,中高年の企業人は言うに及ばず,若者すらも海外に出て行こうとしません.就職氷河期の再来と言われる割には,海外に就職活動に行くとか,海外の大学院で学んだ後に海外で就職するなどの立体的視野を持った若者は極めて少なく,逆に海外の大学院やビジネススクールの日本人留学生の数は減少の一途を辿っているという由々しき事態です.
なぜ成長する海外に出て行かずに衰退する日本に留まろうとするのでしょうか?推測するに,一つの理由は,これから衰退するとはいってもまだまだ日本は居心地が良く,苦労するとわかっている海外にわざわざ出かけていくだけの気概が無いということなのでしょう.やれやれ,この国の先が思いやられます.
わずかな期待は,日本で就職氷河期に遭遇してしまった若者のうち,ごくわずかながら海外の様々な国で働き口を見つけて自活している人たちがいることです.日本の企業の海外事務所に現地採用されたり,日本語のコールセンターに職を見つけたり,あるいはどうせ日本で就職しても男女差別で満足な地位に就けないと,最初からシンガポールや香港の企業に勤めてすでにマネージャにまで昇進している女性たちなどさまざまですが,彼らのような若者たちの勇気や心意気や柔軟な心をもっともっと大切にすべきでしょう.
昨年の私自身の職業生活は,部署が変わり仕事の内容も変わるなど大きな変化があったものの,ありがたいことに勤務地も勤務するオフィスも変わらずという状況でしたので,比較的軽めのストレスで乗り切ることができました.今年はどのような変化が待っているのか全く予測できませんが,いよいよ職業人生も終盤に差し掛かってきましたので,悔いが残らないよう努力していきたいと思います.
ところで,長時間通勤が次第に骨身に応えるようになってきました.朝,立ったままで1時間30分も電車に揺られてオフィスにたどり着き,椅子に座ろうとすると腰のこわばりと痛みを感じるようになりました.これを朝晩くり返して一週間経つと,週末は体を動かすのが億劫になってしまいます.以前はこの程度のことは全く平気で,通勤電車の中で椅子に座る気などしなかったのですが,最近ではちゃんとプラットフォームで列に並び,空いている座席を見つけて座るように心がけています.いやぁ,寄る年波とはこのことですね.
昨年心に残ったエピソードの一つに,イギリスのオーディション番組に出場して一躍有名になった Susan Boyle さんのことがあります.このブログでも紹介しました(*1, *2)が,イギリスの Britain's Got Talent というオーディション番組の予選で,さえない容姿の中年女性と素晴らしい歌唱力のギャップの見事さで絶賛を浴び,決勝戦にまで進んで見事準優勝を果たしました.そして年内に見事 CD デビューも達成.私もそのアルバムを聴いて見ましたが,オーディション時から相当量のトレーニングを積み,かつ入念な録音を繰り返したことが感じられる仕上がりです.日本発売版には,"翼をください" の英語版がボーナストラックとして収録されており,これもなかなか聴き応えがあります.
このエピソードがどこか痛快に感じられるのは,上がらない風采の中年のおばさんが,実はすごいことをやってのける底力を秘めていると世界中の人々に知らしめたことでしょう.この論理は簡単に拡張できて,誰にでも未知の才能や可能性が秘められているのだ,人を見かけで判断してはいけないぞ,夢は必ずかなうんだ,とさまざまに応用が効きます.そして今回のこの事件は,なかなか夢がかなえられずに辛い日々を送っている私たち自身に対する応援歌であり賛歌でもあるのです.久しぶりにスカッとした!という思いを持った人たちが多かったのではないでしょうか?
実は彼女は大晦日の紅白歌合戦で歌うのだそうです.もはや国際的な商材にまでなってしまった Susan ですが,日本の年末年始をどのように感じることでしょうか?
昨年は年の初めに プログラミング言語 Ruby の新しい系列 1.9.1 がリリースされました.これは文字コードに対する大変柔軟な仕組みを内蔵した恐らく史上最初のプログラミング言語ですが,これに伴い,既存の Ruby スクリプトの中には変更を迫られるものが少なくないはずです.拙作の辞書参照型ソーティングフィルタである Refsort/Ruby も大幅な変更を迫られ,小刻みに改版を重ねてようやく秋後半になって落ち着くことができました.また,これら改版と平行して,Refsort/Ruby で使用する辞書ファイルのうち,日本産鳥類辞書を大幅に改訂し,また新しい試みとして Sibley-Ahlquist 分類体系に則った世界鳥類辞書をリリースしました.これらに対しては相当の労力を強いられ,週末の自由時間がかなり奪われてしまうということはあったのですが,それでもやり遂げた後に感じる充実感は喜びに満ちたものです.
昨年末に,パソコンを新調しようと決心し,色々と部品を買い集めて組み立て,新しいオペレーティングシステムをインストールして慣らし運転中です.大晦日の夕方まで引っかかっていたのが日常的にお世話になっている WZ Editor 5.0 です.実はこのブログもこのエディタで書いているので,これが新しいパソコンで動いてくれないと困るのですが,どうやっても XHTML プラグインという機能が動かず,半ば諦めていたのでした.ところが,あることを思いついてやってみたらこれが大成功!大変インテリジェントで高機能な XHTML エディタである WZ Editor 5.0 + XHTML プラグインを Windows 7 の上で動かすことができました.これで安心して大晦日の宴会に突入できます.
それでは皆様,今年が良い年であることを祈っています.長いおしゃべりにお付き合いいただきまして,ありがとうございました.
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