中村彝アトリエ
茨城県近代美術館で開催中の "アントワープ王立美術館コレクション アンソールからマグリットヘ" を見に行ってきました.水戸市は千波湖に面した高台に作られた大変立派な美術館なのですが,企画が悪いのか県立の美術館としては入館者数は全国での最低レベルなのだそうです.
今回の企画はオランダはアントワープ王立美術館コレクションの中から,ポスト印象派の系譜をルネ・マグリットやポール・デルボーまで辿るという,なかなか通好みの企画.案の定,日曜日にも関わらず館内は閑散としていました.私自身は,マグリットやデルボーを学生時代から愛好していたので,東京国立近代美術館での企画展には足を運んでおり,今回の企画展にもあまり新味は期待していませんでした.しかし,今回展示されたマグリットの一作品は私は初めて見るもので,その描き込まれた質感は大変すばらしいものがありました.
しかし今回の収穫はこの企画展ではなく,水戸市出身の画家 "中村彝(なかむら つね)" のアトリエです.このアトリエは東京都新宿区下落合に建てられていたものを移築したもののようで,小ぢんまりとした建物ながら,大変味わいのあるもので一見の価値があります.この画家は大変不遇だったようで,身寄りのない孤独な人生を送り,享年37歳,結核で亡くなっています.新宿中村屋の主人である相馬愛蔵夫妻の世話にもなっていたとか.
建物は角度の違う二つの切妻屋根により構成されており,大きな屋根の北側には天窓があり,この下がアトリエになっています.それ以外には寝室兼居間,台所,便所,そして身の回りの世話をしてくれていた女性の部屋と,大変小ぢんまりとしたものです.大変素敵なアトリエなのですが,この家の中のベッドで療養しながら具合が良いと筆をとるという暮らしは,どのようなものだったのでしょうね?
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