週刊こどもニュースなみによくわかる戦略論
戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか(光文社新書) - 菊澤研宗(著)
最初は,しまった!これは巷にあふれるビジネス How To ものをつかんでしまったのか?と思いましたが,これは完全な誤解でした.この本は,経営戦略論,それもその歴史的な経過を過去から最新のものまでを軍事戦略論の歴史と対比させながら,大変わかりやすく解説したものです.さらに,それに著者の主張である Grand Cubic Strategy なる理論を加えて,厚みのある議論を展開しています.
この本の最大の特長は,その平易さにあります.とにかくわかり易い.NHK の週刊こどもニュース並みにわかり易い,といえばわかるでしょうか?経済学の各派の主張が経営戦略論と土嚢用に関係しているのかが平易に解説されていますし,軍事戦略論もクラウゼビッツに始まって,リデル・ハート,ハンニバルからロンメルまでと幅広く概観するのが特徴です.もちろん,紙数の制限があるものですから,端折りすぎの傾向が無いわけではありませんが,それぞれの戦略家たちの特徴を非常にコンパクトにまとめて解説している姿勢は特筆に値します.
さて,著者独自の主張である Grand Cubic Strategy については,はなはだ消化不良.直接的アプローチ,間接的(心理的)アプローチが重要であることは素人目にもよくわかるのですが,それと対等に対比される知的世界の価値に基づくアプローチというものには,もう少し説明が必要ではないでしょうか?間接アプローチを拡大解釈すれば,この知的世界の価値に基づく第三のアプローチも包含することができるのではないかと思います.あえて,ここで第三のカテゴリーを設けて区別する必要がどこにあるのか,私にはよく理解できませんでした.
まあ,そんなことよりも,戦略論の歴史的な経過をわかり易く知るだけでも,この本を読む価値は十分にあると思います.お勧め!
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