硬派ブルーグラスの新星
Fork in the Road [Import, from US] - Infamous Stringdusters
もう一つ,硬派のブルーグラスをご紹介しましょう.こちらは近年のブルーグラス界の収穫の一つと言われている "Infamous Stringdusters" というグループです.ここでご紹介するのは2007年の彼らのデビューアルバム "Fork in the Road" です.メンバーは6人,全員が男性.いずれもある程度のキャリアを積んできたメンバーばかりですが,特長的なことは音楽的に毛並みの良いメンバーがそろっているらしいということ.例えば,バンジョーの Chris Pandolfi はバークリー音楽院で初めてバンジョーで学位を取ったとか.へぇー!
いずれにせよ,聴いてみるとすぐにわかりますが,楽器の腕はいずれも完全なプロフェッショナルです.マンドリンとドブロは特にその音の輝きが素晴らしく感じられました.個々の楽器が素晴らしいだけではなく,バンドとしてのまとまりも素晴らしいものがあります."One for All, All for One." というフレーズがそのまま当てはまるのではないでしょうか.
課題があるとすればやはりヴォーカル.こればっかりは良いヴォーカリストを連れてくるしかないのでは?と思います.楽器の良いプレイヤーが同時に良いシンガーであることは,なかなか得難い神の思し召しであるので,今のままではなかなか次の段階に上がっていけないのではないかと心配です.彼らの音楽性に共感し合えるくせの強いヴォーカリストがいないものでしょうか?
それからもう一つ,これはある意味本質的なことなのですが,彼らの曲作りに関するものです.このデビューアルバムは彼ら自身の手による曲が多いのですが,比較的穏やかで優しい感じの曲が多いように思います.もっとジャカジャカしろというわけではありませんが,人間の喜びや悲しみをもっと素直に表現する傾向が強くても良いように思います.直截な情感表現とか,魂の叫びとか,いろいろな言い方ができると思いますが,そういうものが曲に込められていてほしい,それでこそ現代のブルーグラスだと思うのです.もちろん,その魂の叫びをどのように音楽的に洗練させ,一見抑制的に聴かせるか,という工夫も必要です.それらが出来上がってくれば,テクニックとしては一流のメンバーが揃っているので,申し分のないバンドに育っていくのではないでしょうか?楽しみです.
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