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2011年1月

2011/01/30

超長期の視点でマクロ経済を論じると・・・

超マクロ展望 世界経済の真実(集英社新書)[新書] - 水野 和夫(著),萱野 稔人(著)

水野和夫さんは,リーマンショックの前後から注目を集めているエコノミストです.他のエコノミストと決定的に異なるのは,超長期の歴史的視点で人類の経済を論じていること.例えば,ヨーロッパが封建領主制から絶対王政に変化した理由を,マクロな利子率という指標をもって説明してしまいます.もちろん,これだけで体制の変更がなされたわけではありませんが,しかし,大航海時代が始まり経済的な環境が激変したことが,政治体制を揺るがせるきっかけになったことは間違いありません.望湖庵日記では,水野さんがリーマンショック直後に出された新書をレビューしたことがあります.今回ご紹介するこの本は,水野さんと政治哲学者の萱野さんの対談という体裁を取っており,超長期のグローバル経済を,政治哲学の視点と融合させながら論じた,大変刺激に富むものです.

この二人の論点を要約すると,経済がいくらグローバル化しても,国家の役割が無くなるわけではない.また,経済にとって政治的ヘゲモニーは極めて重要な役割を演じてきたが,これからはヘゲモニーの中身が変わっていく,ということになります.

まず,前者についてですが,ここ数年間の間に急速に世の中全体にコンセンサスが得られるようになった概念だと思います.リーマンショックにおいて,アメリカの自由経済が崩壊の危機に瀕した時に,それを救った最後の砦,あらゆる金融リスクを引き受ける "The Last Resort" は実は国家でした.これは日本においても同様で,市場とは独立した存在にしか市場を救う役割は期待できなかったのです.

私にとって特に印象的だったのは,萱野さんが繰り返し主張していたことで,国家の徴税権というものは,自由主義経済の外にある独立した権利であるということ.私には,そのために社会の中の金の流れがそれぞれ異なる原理に基づいて複線化されることにより,租税がある種の安定化装置として働くとまで言ってほしかったくらいです.徴税権は,政治哲学にとっては極めて重要な概念であり,自由正義社会契約という概念とも密接につながるだけに,もっと深堀してほしかったという無念さが残りました.

後者については,ここ数年,先進工業国が相対的に没落するとともに,新興国がヘゲモニーを獲得していく傾向がますます明らかになって,高い関心を持たれるようになった概念だと思います.中世の封建制から大航海時代,絶対王政時代を経て近代の国民国家,さらには現在のように市場のルールや制度を自らに都合よく合意させる能力に至るまで,ヘゲモニーの所在は変転してきましたが,これからどうなるのか?資本はすでに国民国家とは無関係に自らの利益を追求しているわけですが,それが政治的なヘゲモニーとどのように影響を及ぼし合い,変転していくのか,まだ誰も答えを用意してはいないように思います.

水野さんがこの対談が示すように,先進工業国の収支は原油に代表される一次資源の価格に極めて敏感です.新興国がこれからますます一次資源を必要としている以上,一次資源の価格は上昇を続け,一次資源は発展途上国から安く買い叩けるという前提で組み立てられてきた国際自由市場そのものが挑戦を受ける可能性が高いと思います.アメリカが熱心に維持してきた国際石油市場が,ベネズエラのチャベス大統領に代表される資源ナショナリズムによって挑戦を受けていることは,そのもっとも端的な事例ではないでしょうか?

さらに言えば,今や絶好調の韓国サムスングループが毎年一兆円規模の利益を叩き出しているとはいえ,その半分ほどは国外の株主に流出しているという事実をよく認識すべき,との指摘も重く受け止めるべきです.ここに,大航海時代以来の資本主義のおぞましさを見るとともに,欧米資本のしたたかさを見る思いがします.

日本や日本の企業などが,このような状況の中でどのように自らの立ち位置を定め,ヘゲモニーに加担していくのか,はたまた外部のヘゲモニーに翻弄されていくのか,超長期の視座というものがますます重要になってきたことを実感させられます.

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2011/01/29

落ちぶれ弁護士の魂に火が点けられた

評決 [DVD] - ポール・ニューマン(出演),シャーロット・ランプリング(出演),シドニー・ルメット(監督)

評判が良いことは知っていたのですが,恥ずかしながら初めて観ました.そしてこれがポール・ニューマンの最高傑作のひとつと言っても良い作品であることを確信しました.監督は "
十二人の怒れる男
" を撮ったシドニー・ルメットで,陪審が重要な役を演じるという意味で "十二人の怒れる男" と酷似したモチーフを持っています.

しかしこの映画の良い所は,ポール・ニューマンが演じる主人公が,かつては理想を持った弁護士だったのに,今は落ちぶれて酒浸りの生活を送る落ちこぼれ弁護士,という設定になっているところでしょう.英雄でもエリートでもない,負け犬のような男.しかもそのような男が,お情けで回ってきた楽な和解案件の弁護を担当するうちに,かつての正義の熱情を取戻して,危なげながらも勝訴すること.

社会の不正や不条理を告発することに長けている監督だけあって,主人公を取り巻く不正義の描写は見事です.しかし,この映画の見どころは何と言ってもポール・ニューマンの演技力.この人の演技力は,初期の作品 "熱いトタン屋根の猫" を観てもよくわかるのですが,アクターズ・スタジオで鍛えられ,のし上がってきただけのことはあります.この作品でも,その実力がいかんなく発揮され,惨めな初老の弁護士が正義に還るさまを実に見事に演じました.

カトリック教会が設立した名門病院の医療過誤によって植物状態にされてしまった女性.その女性がこの映画の本当の主人公です.家族から訴えられた教会は和解を図ります.教会の司教らしい人物にはまだ良心が残っているように描かれますが,取り巻きは実に事務的にことを進めようとします.原告側も和解で決着するつもりだったのですが,依頼された弁護士,すなわちポール・ニューマン演じる主人公が植物状態の女性の
ポラロイド写真
を証拠として撮影するうち,その悲惨さに気付き,裁判で勝ってやろうと思い直すのです.この場面の演出が非常に見事で,セリフは一切無し,撮影されたポラロイド写真にゆっくりと撮影像が浮かび上がってくるだけなのですが,像が浮かび上がるのとともに弁護士の内面も変化し,ここで正義を成すべきだとの確信に至るさまが観ている者にもはっきりとわかる,素晴らしいものです.これは映画史上にも記録されるべき大発明ではないかと思います.

教会は優秀な大手弁護士事務所に弁護を依頼します.この弁護士事務所内部の動きが克明に描写されているのも見事.観れば観るほど,裁判で勝つためにはこのようなテクニックがあるのか,たとえそれが真実と異なっていても,ということがわかって嫌な感じになるのですが,しかしこれらは裁判の現実を知る良い勉強にもなっています.

ポール・ニューマンがあてにしていた証人はこの弁護士事務所の策略で雲隠れしてしまいます.仕方なくどうにかこうにか唯一の手がかりだった当時の看護婦を説得して証言台に立たせます.証言内容は,医師が彼女が書いた問診票をろくに見ずに全身麻酔をかけて患者を嘔吐・窒息させてしまったこと,しかも彼女に問診票をねつ造するよう強要したことだったのです.ところが,これも被告側弁護士の巧みな弁論で証拠不採用・証言自体を削除,というひどい扱いを受けます.

しかしここからが陪審制の面白いところ.どんなに法廷テクニックで証言を形式上消し去ったとしても,陪審員の心には真実が何であったかは深く刻み込まれます.そして評決の直前にポール・ニューマンが陪審員の良心に訴えかける弁論を行うのですが,これは,落ちぶれていた身から正義を成すために改心した彼自身への応援演説でもあったように思います.ただしこの裁判のように,論理に反する評決を陪審員が出してしまうリスクがあるわけですから,手放しでは喜べず,正義との折り合いの付け方はなかなか難しいとは思います.

結果は "十二人の怒れる男" と同様ハッピーエンドなのですが,途中から現われて重要な役割を果たすのか果たさないのかわからないままの女性とのエピソードが最後に影を落として幕,という終わり方.これは少々評価が分かれるかもしれません."十二人の怒れる男" のような晴れ晴れとしたさわやかさや,"ショーシャンクの空に" のようなざまーみろという感じは全く与えない,影のある終わり方です.この女性役を演じたシャーロット・ランプリングの存在感が際立っていただけに,シナリオには疑問が残ります.

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2011/01/22

雪のセントラルパーク

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ニューヨークの記録 (*1 *2) の最後です.ニューヨークは昨年末に大雪が降って20インチ以上もの積雪があり,交通がマヒしたりして市当局の初動体制が厳しく非難されました.その名残りがまだセントラルパークに残っているときに私はニューヨークに到着したのですが(上の写真はその時のセントラルパーク),その当日の天気予報が不吉なことを言います.明日の夜から再び雪を伴った嵐が到来し,予想ではマンハッタン地区で9インチの積雪があるというのです.テレビでもこの予報を大々的に,しかもかなり大げさに繰り返し報道します.前回あまりに強く非難されたので,当局がかなり過剰な対応をしているようです.交通機関もそれなりに過剰反応すると予想されるので,これは大変困った事態.

そうこうするうちに翌日の午後早々には,私がその次の日に乗るはずの国際便がキャンセルとの知らせ.自動的に翌日の最も便利な便に振り返られていて,しかも座席番号まで決まっています.こういう通知がメールで携帯電話に届くようになったのは大変な進歩ですが,10インチくらいの雪で止めるなんて何て根性なしだ!と怒ってみます.何しろ数十年前にモスクワの空港で50㎝ほど積もった雪の中でも普通に発着していたことを経験していますので.

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仕方がないのでホテルの宿泊を延長し,翌日は丸一日自由時間となり,それでアメリカ自然史博物館にもいくことができた次第.まあ功罪半々といったところでしょうか?アメリカ自然史博物館を観終わった後で,セントラルパークを斜めに縦断して Cetral Park South まで歩いたのですが,途中なかなか良い雪景色が見られました.高層ビル群が建ち並ぶさまを背景にして,自然の樹木に雪が厚く積もっているのはなかなか良い景色です.上の前日の写真とは全然異なる風景に変わっています.大勢の観光客やニューヨーカーがカメラを持って散歩していましたし,子供たちはそり遊びに興じていました.

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2011/01/18

30年ぶりのアメリカ自然史博物館

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さらにニューヨーク訪問の記憶をたどります.30年ぶりにニューヨークを訪れた者が,限りある時間でやるべきことは何でしょうか?私にとっての30年前の良い思い出は,メトロポリタン美術館をじっくりと時間をかけて観ることができたこと,そしてセントラルパークの反対側にあるアメリカ自然史博物館をやはり丸一日かけて観ることができたことでした.今回はその両方を見るだけの余裕は無かったので,選択を迫られたのですが,出した結論は後者でした.私が訪ねたのは夜に大雪が降った翌朝だったので,博物館入口はまだ雪がたくさん残っていました.

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まず,海洋ホールのシロナガスクジラとの再会は最も望んでいたものでしたが,見事実現.あの感激を再び味わうことが出来ました.また恐竜の骨格標本は,以前はこれほどの展示は無かった思うのですが,駆け足で見て歩くにはあまりにもったいない内容です.その他,各種の動物や生態系,鉱物や地球科学などの展示は大変充実しています.特に,動物を生態系ごとジオラマで展示するレベルの高さは,30年前に感激したことを覚えていますが,今回も改めて再確認することが出来ました.

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以前は宇宙館など無かったのですが,大変大きなホール "地球宇宙ローズセンター (Rose Center for Earth and Space)" が新設されて,大変見ごたえがあるものになっています.ただし,宇宙関係は "実物" が無く,映像が主体になってしまうのは仕方のない所かも.

ショップが充実したことは特筆できます.どのフロアにもミュージアムショップがあり,膨大な種類のグッズが販売されています.ただし・・・内容は博物館のショップというよりは観光地の土産物店のレベルで,これにはがっかり.化石標本のレプリカや,各種動物のミニチュア・フィギュアなどを売ってもよさそうな気がするのですが,アメリカ人のお気に召さないのか,この手のグッズはほとんどありませんでした.三葉虫の化石のレプリカを期待していた私としては大変残念.日本のチョコエッグの動物フィギュアのレベルの高さを見せつけてやりたい衝動に駆られました.もっとも,海洋堂の恐竜のフィギュアはこの博物館からも注文をもらっているそうです.また,地階にフードコートができたのも大きな変化.入館者がゆっくりと休憩できる場所が増えたことは歓迎すべきでしょう.

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世界中の民族についての展示は,それぞれは通り一遍なのですが,幅の広さは特筆できると思います.カバーしている地域・民族には偏りがあり,何か意図や事情があるのか無いのか.中南米やアフリカに関する展示は大変充実していますし,ユーラシア大陸の各民族にもかなりの面積が割かれています.しかし,内容の深さという意味では,専門の博物館・美術館にはかないません.例えば,アフリカの仮面文化に関して言うと,パリの旧国立アフリカ・オセアニア美術館(現在はケ・ブランリ美術館)の内容の深さとは比べるべくもありません.

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各フロアの展示テーマの順列は一貫した考えかたに拠ってはいないようで,ランダムな順序で現れる各種展示を足を棒にして見て歩くのはかなり疲れます.半日くらい歩き回るのが限度ではないでしょうか?従って,丸一日をかけて全てを見て回るのはほぼ不可能,ということになります.ま,しかし,いずれにせよ,時間をかけて回る価値が十分にある場所であることには変わりありません.

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2011/01/17

本当に久しぶりのニューヨーク

デトロイトについて昨日アップしましたが,そこからニューヨークに飛びます.ニューヨークは,今からもう30年ほど前に,私が初めてアメリカ本土を本格的に訪れた場所です.隣接州に一か月以上も滞在していたので,週末は自分で車を運転してマンハッタンに遊びに行きました.そのような思いでから早や30年.うーん,少年老い易く学成り難しとはよく言ったものです.

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旅の目的である仕事は比較的短時間で済ますことができたので,あとはひたすら街歩きです.以前のマンハッタンは,人通りの少ない通りを一人で歩くことは避けろと言われたものですが,今回そのような危険を感じることは全くありませんでした.通りの角のデリで朝食のサンドイッチを食べたり,昨年末に降った大雪が残るセントラルパークを散歩したり,バーゲンでにぎわう繁華街を歩いたりと,大都会の空気を満喫してきました.ただし気温は日中でも氷点下.風は冷たく防寒着は必須です.それでも元気のほうが先に立ち,長時間マンハッタンの中を歩き回りました.

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30年前と変わらなかったものは,地下鉄やバス,黄色いタクシー,そしてデリのお店など.地下鉄のチケットは,他の国々と同様,コインから磁気カードに変わりましたが,それでも不規則で予測のつかない運行は相変わらずでした.変わったなぁと感じたものは,やたらと多い Starbucks の店とその紙コップを持って歩く人々,非常に増えた日本料理店,ゴミが減ったことなどでしょうか?全体として街は良い方向に変化しているように見えます.

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有名な場所の写真をいくつか載せていますので,わかる人にはすぐにわかるはずです.

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2011/01/16

Motownのホテルはトイレにまで車の写真が

先週はほぼ一週間かけて米国は中西部北東部の大都市に行っていました.この季節これらの地域に行くのは,寒さに耐え,雪による交通機関の変調にも備えなければならないので,あまり快適とは言い難いのですが,それでもアメリカ建国の初期にヨーロッパ各地からやってきた移民たちは,先住民(彼ら自身の呼び方によればインディアン)のお世話になりながら飢えと寒さに耐え,結局は彼らを駆逐して自分たちの国を築いていったのです.

そんな歴史が埋もれているはずの街デトロイトの中心部にあるホテルに泊まった時のこと.このホテルは実は世界最大の自動車会社の本社がテナントとして入る複合ビルの中にあり,ホテルの下のフロアはこの会社の自動車のショウルームのようになっているのですが,ホテルの中にはいたるところに,この会社の往年の名車の写真が飾ってあります.さすがは自動車の街 "Motown" だけのことはあります.

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私が泊まった部屋にもいくつかの写真があったのですが,何とバスルームにも写真が掲げてあったのには驚きました.写真自体は車体の官能的な美しさをモノクロームで控えめに表現した良い作品だと感じました.それにしても,朝の戸外はマイナス10度だったので,マフラーと手袋が必需品.帽子をかぶらなかったことが悔やまれました.

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もう一つの発見は,デトロイト空港内部の表示が,いたるところ日本語が併記されていたこと.フランス語でもドイツ語でも中国語でもなく日本語が書いてあるのは,この町を訪れる日本人が多いということでしょうか?今回の旅ではほとんど見かけなかったのですが.

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朝起きたら雪が積もっていた

長旅の疲れを癒すために寝坊を決め込んだ日曜日の朝,外が妙に静かです.そういえば昨晩の天気予報では関東北部は雪が降るとの予報だったな,と思ってカーテンを開けると,あぁやっぱり,一面の雪景色.積雪は約2cmほど,しかもまだ粉雪が降り続いています.

Winterhome_jan2011006m

朝食後しばらくすると雪が止み,オレンジ色の柔らかな日が射し込んできました.先週の北米の長旅で雪と寒さには飽きていたのですが,思い立ってカメラを取り出し,何枚かスナップを撮りました.しかし雪の写真はなかなか難しいですね.かなり露出補正をかけないと雪が灰色に写るのと,雪自体にはあまりコントラストが無いので,陰影をつけるのが難しい.思い切り接写して雪片が分解するくらいにまで拡大すると陰影がついてくるようです.

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2011/01/01

謹賀新年2011

Nengat2011

新年明けましておめでとうございます.

月日が経つのは本当に早いもので,もう新年なのかと思うと愕然とします.この調子でいくと,ぼやぼやしているうちに寿命が尽きて「それでは皆さんさようなら」になってしまいそうですが,例年にならって昨年一年を振り返り,今年一年の希望を書いてみたいと思います.

昨年一年間は近年まれに見る忙しい一年でした.まず,住んでいる団地の自治会の役員を一年間務めなければなりませんでした.これはあと3か月ほど残っているので,まだ終わったわけではありませんが,4月から毎週のように週末の夜に集まって役員会を開き,様々な案件を議論し,そして自分に割り当てられた役割についてかなりの作業をこなし,さらに夏祭りなどの大きなイベントの準備や運営に対しては,週末全ての時間をそれらに捧げなければなりませんでした.このため自由時間は減り,大好きな写真を撮りに行く機会は激減し,ストレスを解消する機会が少ないつらい一年間でした.

自治会にとって地域社会の課題は山積しています.最大の課題は何と言っても高齢化です.当団地は高度成長期の終わりころに,首都圏勤務のサラリーマン向けに宅地として一斉販売されたもので,ほぼ同世代の人たちが購入し,早くからあるいは定年後に移り住んで,団地の住民となったものなので,高齢化もほぼ一斉に始まります.団地住民の年齢分布には65歳を中心とする髙いピークが見て取れます.この団塊世代のピークが年を追うとともに高年齢側にシフトしていくことになります.

すでに高齢者の独居世帯が多数存在し,病院への通院や日常の買い物などにも不便を感じる人たちがいるため,自治会としても何らかのサービスを提供できないか,問題意識を持って議論を続けています.ただし,サービスを提供する側がすでに60歳以上が中心であるため,なかなか根本的な解決に至りません.今後数10年かけて人口の世代交代が進み,年齢構成が程よく均衡することを願うばかりですが,日本全体としては,人口構成のみならず,所得や富の年齢分布も同時に再均衡させていかなければならないでしょうから,政治的に大きなリスクを取る政策を実行していかなければなりません.このあたり,社会政治学や社会経済学からの積極的な提言の発信が必要と思われます.そして政治家には,このリスクを取って社会を再活性化するだけの気概が求められることは言うまでもありません.

あと3か月ほどでお役目御免になるのでほっとしていますが,抱えている問題がなくなるわけではなく,これからも折にふれて協力し関わっていこうと思っています.


Beijing_jun2010028m

次に,昨年は仕事の面でも忙しい一年でした.夏になったころから海外出張に行く機会が急に増えたのです.行先は決まっていて,中国とアメリカ中西部.特に秋からはアメリカ中西部に毎月のように出かけなければならなくなりました.日本からアメリカ中西部までは,片道12時間ほどの長時間のフライトになります.これを,エコノミークラスの狭い座席に押し込められて過ごすのは,本当に命を縮めるのではないかと思うくらい過酷なものです.毎回ゆったりとしたビジネスクラスの座席でくつろげるのであれば,出張も楽しみなものになるかもしれませんが,エコノミークラスでは血栓が出来ないように絶えず注意を払いながらの旅になります.

このように,移動中は大変つらい思いをするのですが,着いてしまえばそこはアメリカ.物質的な豊かさでは今でも世界最高を謳歌していますから,何につけても気楽なものです.実は私はここ25年ほどは稀にしかアメリカに行っていなかったので,毎月のように頻繁にアメリカの同一都市を訪れてみて,久しぶりにアメリカの雰囲気に馴染んだような気がしました.ホテルの部屋で見るテレビの番組やコマーシャルは,25年以上前に比べて若干変わったような気がしますし,道路を走る車の種類も少し変わったように思いますが,基本的なことは何も変わっていないように思います.

Ham_jul2010052m

レストランで食べる料理の種類は増えました.世界各地域の本格的な料理がアメリカでも食べられるようになり,日本料理はもはや珍しくありませんし,本格的なイタリア料理を出す店も増えました.カフェに入っても,もはや,サンドイッチハンバーガーステーキだけの食生活ではなくなっていました.そうそう,アメリカ人がこれほどワインを飲むようになったのは驚きです.しかし,ワイングラスになみなみと赤ワインを注ぐそのさまは,フランス人が見たら仰天するかも.グラスに引かれた規定量までビールやワインを注ぐドイツの流儀が入って来たのかもしれません.

Milwaukee_oct2010099m

私が訪れているのは,まだ煉瓦造りの建物が多く残る中都市で,街中を一人で歩いても極めて安全.めぼしい建物や街の様子を写真に撮りながら散歩するのは楽しいもの(*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7)です.また,アメリカを代表するビールとチーズの産地でもあるので,各種のビールを楽しめます.これは,この地域がドイツ系移民が多く入植し発展してきたことと大いに関係があるそうです.なるほど,道理でドイツ語の地名も多い.でも,フランス語の地名もちらほら(Fond du Lac, Eau Claire, etc.)あって,なかなか楽しめます.

Milwaukee_oct2010038m

秋が深まり冬が訪れるとともに,この地方の厳しい寒さを体験することになりました(*1)が,これは今年に入ってからもしばらく続くことでしょう.日本でいうと北海道クラスの寒さなので,防寒にはそれなりの対策が必要です.春が来るまでしばらくの間,街歩きはお預けです.

Milwaukee_oct2010089m


昨年は円高が進んだ年でした.アメリカに出張するたびにそれはよくわかりました.マクロ経済からは大変不可解な事象ですが,日本経済への影響は多方面に及び,我が国の輸出立国の基盤がますます怪しくなってきました.また,資産を運用する面からは,外貨建ての株式や債券,それらを基にした派生ファンドなどは,リターンに大きな影響を被ったはずです.

一方,輸入品が安くなったかというと,確かに原油の輸入に関しては大いに有利な状況が生まれたはずですが,それでガソリンや灯油が安くなったという実感はありません.原油価格に緩やかに連動するスポットものの天然ガスも安くなっているはずですが,電気料金はほんの少ししか安くなっていません.

私が最も不満に思っているのは,輸入されているワインやチーズなどがほとんど安くなっていないこと.これはいったいどうしたことでしょう?ネゴシアンや商社や代理店が大儲けしているはずなのですが,誰に文句を言っていいのかよくわかりません.


仕事の面では,職場が変更になり,これまでとは少し異なる場所での勤務となりましたが,それでも東京都心の勤務であることには変わりはなく,毎日あくせくと通勤しています.最寄駅で,これまでずっと工事中だった秋葉原駅の工事が終わり,旧アキハバラデパートが "アトレ" として生まれ変わりました.お店の顔ぶれも様変わりし,若者向けのおしゃれな店が増えて,かつてのおじさんのデパートという風情は完全になくなったのには,ちょっぴり寂しい気もします.

上に書いたとおり,海外出張が増えたこと以外には,会社員としての暮らしぶりにさほどの変化はありません.しかし,自分自身は確実に年齢を重ねているわけで,会社組織の中での地位や立場もそれに合わせて微妙に変わっているのは確かです.あと数年はこのようなことを繰り返していくのでしょう.それにしても,長時間の電車通勤は毎年着実につらくなってきました.困ったものです.ま,健康第一でもう少し頑張りますか.


健康面ではおおむね良好だったのですが,一つだけ20年ぶりに持病の発作を経験し,あまりの痛みに七転八倒しました.お決まりの尿路結石です.

私は30代半ばで一度,大きな結石が尿管の途中に引っかかって大発作を起こし,病院に駆け込んで衝撃波破砕治療を受けました.それ以来,定期的に病院で検査を受けることを続け,石の成長もモニターしていたので,激痛を起こすほど成長した石は無いはず・・・でした.ところが,とある秋の日,早朝に脇腹の痛みで目を覚まし,それからが大変.

まずは肉眼での血尿が無かったために,虫垂炎を疑ったり,胆石を疑ったりしたのですが,どうも傷みが急激で激しすぎる.痛みを懸命にこらえるために脂汗がにじみ,顔が青ざめ,吐き気がしてきます.

仕方なく駆け込んだ近所の胃腸科の病院で,当直の若い医者から,このような所見の場合に考えられる原因について,やれ虫垂炎だの何だのと滔々と講義を受けたのですが決め手は無く,痛み止めの点滴を受けながら CT を撮ったところ,あっさりと「尿路結石です」ということが判明.こうなると胃腸が専門の医者は冷たいもので,「うちで出来ることはもうありません.尿管に石がひっかかっているので,水分をたくさん取って排出してください.痛み止めの座薬を出しておきます.」で終わりです.

帰宅してからはスポーツドリンクをたくさん飲み,飛んだり跳ねたりして石の排出を促します.痛い部位がだんだんと下がってきたのがわかりました.翌日の明け方,びっしょりと寝汗をかいて目が覚めました.痛みはほとんどありません.しかし膀胱に違和感が.どうやら石は膀胱にまで落ちてくれたらしい.自分の体のどういうメカニズムでそうなったのかわかりませんが,その経過であれほどの寝汗をかいたのでしょうか?しかし,こうなればもう9割がたは成功です.あとは石を流し出すだけ.普通に会社に出かけ,何度がトイレに行くうちに,尿道を何かが通る感じがしました.やっと出たのです.血糊に絡まった赤黒い塊が便器に落ちたように見えましたが,回収はできず.やれやれ,でも万歳!


一昨年の秋にカメラを買い替えたところ,新しいモデルはフォーカスの確度が上がっていたので,それを持って写真を撮りまくる・・・はずだったのですが,自治会役員の仕事で週末はあまり動けず,趣味の写真に関しては不本意な一年間でした.楽しかった思い出は,春先の週末にじっくりと撮影できた丸の内の三菱一号館と,晩秋の週末に東京スカイツリーを間近から撮影できたことくらいです.

Tokyoskytree_nov2010018m

カメラは昨秋にさらに次の最新モデルが発売になり,フォーカス精度も速度も格段に上がった,新しいズームレンズ付きのモデルもある!ということなので,また物欲がムクムクと頭をもたげてきたのですが,財布の中身や実際に撮影に出かけられる機会の数を考えて,今のところは抑え込んでいます.


昨年は,一昨年に引き続き,プログラミング言語 Ruby のスクリプトで実装した拙作の辞書参照型ソーティングフィルタである Refsort/Ruby の小改良を続け,夏に Version 2.12 を出して今は落ち着いています.辞書ファイルについても小改良を重ね,日本産鳥類辞書,世界鳥類辞書の両方について,細かな追加と修正を行いました.Ruby そのものは昨年末のクリスマスに新しいパッチがリリースされましたが,実行速度と安定性の向上が図られています.

これらの作業に対しては相当の労力を強いられ,週末の自由時間がかなり奪われてしまうということはあったのですが,それでもやり遂げた後に感じる充実感は喜びに満ちたものです.完全に自己満足の趣味の世界なのですが,頭の体操を兼ねてこれからも続けていこうと思っています.


それでは皆様,今年が良い年であることを祈っています.長いおしゃべりにお付き合いいただきまして,ありがとうございました.

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