子供時代に戻ってわくわくしながら楽しめる秀作
マルセル スペシャルエディション [DVD] - フィリップ・コーベール(出演),ジュリアン・シアマーカ(出演),イブ・ロベール(脚本)
久しぶりにフィルムのレビューをしましょう.この作品は,年末に放送を半分だけ見て,年が明けてから録画しておいたものを全編を通して見直したものです.あまり期待せずに見始めたのですが,あまりの楽しさに再び観ようと録画を消さずにとってあるほどの秀作.
ベル・エポックのフランス南部.若い夫婦たちの人生の楽しみ方と,その子供たちの天真爛漫な成長物語が非常にうまく描かれています.まずは脚本が素晴らしい.小さな子供の目から見た家族や周辺の人々,そしてプロヴァンスの野山が,実に生き生きと描かれています.所々に散りばめられた小さなエピソード群が非常に巧く,質も量も適量です.また,気分が悪くなるような事件や事故,不幸などが出てこないため,安心して全編を楽しめます.
子役がまた素晴らしい.別荘で夏休みを過ごしたときの子役は非常にハンサムな男の子で,まるでリバー・フェニックスを思い起こさせるほど.演技も非常にうまいです.その親友となる地元の子を演じた子役も,これまたうまいですね. "スタンド・バイ・ミー" (*1) がどちらかというと私たちのような "悪がき" の成長物語として絶大な郷愁を誘うに対して,この作品はもっと上品で天真爛漫な子供たちのわくわくドキドキ物語なので,物足りなさを感じる向きもあるでしょうが,これはこれで十分に主人公たちに感情移入して楽しめます.特に,父を思う息子の気持ちが非常によく描かれているのが特徴です.
大人たちを演じた俳優たちも素晴らしいです.ベル・エポックの時代のフランスの豊かさ,自信,人生を楽しむ前向きな健全さ,などを全身で演じています.
さすが映画の国の名門 Gaumont 社の作品だけに,撮影は実に手慣れたもので,建物,家屋,衣装,様々な小道具などを含めて申し分ありません.前半は小学校の授業のシーンが多いのですが,先生が板書するアルファベットの筆記体が実に美しく,この時代はこのような美しい字体を皆が学び,書いていたのかと思うと,フォント・マニアとしてわくわくしながら楽しみました.
私が放送を録画して見たのは "マルセルの夏" ですが,この DVD には "マルセルのお城" という作品も収録されています.こちらも観てみたいと思います.
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