現代西部劇の傑作
アパルーサの決闘 特別版 [DVD] - エド・ハリス(出演・監督),ヴィゴ・モーテンセン(出演)
一年ほど前にアメリカへ往復する飛行機の中で2回ほど観ていたのですが,改めて自宅でじっくりと見直しました.現代西部劇の傑作のひとつと言ってよいと思います.
西部劇は,最近でも昔のジョン・ウェインのものなどをよく観かえしているのですが,やはりエンターテイメントとしてなかなか良くできており,昔の作品でさえ決して安易な勧善懲悪ものではない,ということはよく分かったつもりでいたのですが,この作品を観ると,改めて現代の西部劇の質の高さを感じ取ることが出来ます.
ならず者に殺された保安官の後任としてやって来たヴァージル・コールと助手のエヴェレット・ヒッチ.ならず者を無理やり逮捕して死刑判決を得るものの,護送途中に愛人を人質に捕られて奪還され,その後その死刑囚に大統領から恩赦が下って釈放.あろうことか,その死刑囚は実業家としての腕を発揮して町の立役者になる.それを許せない保安官助手が決闘を挑んで見事射殺したのち街を去る,というお話です.
ヒーローと悪役の境界は判然としません.保安官のくせに自分自身が法律だと言い放ち,むやみに暴力をふるったり,管轄境界を越えて容疑者を拉致して来たりします.マドンナたる女性の役柄もヒロインとは言い難く,その時々で強い男性にすり寄っていきます.いちおう主演のエド・ハリスが演じる保安官ヴァ―ジル・コールがヒーローということにはなっているのですが,実質的なヒーローはヴィゴ・モーテンセン演じる助手のエヴェレット・ヒッチでしょう.この人は "ロード・オブ・ザ・リング" でアラゴルンを演じ,名声を博したのですが,その雰囲気をそのまま西部劇に持ち込んだかのような演技です.
演出は非常に抑制が効いていますが切れが良く,余計な演出やエピソードの類はほとんどありません.ヒーローと言えども人間的弱さを隠そうとしないところがこの映画の最大の特徴で,まるで日本の劇画を読んでいるよう.これが日本の漫画の影響だったら大したものですが,どうなんでしょう?この映画の原作はロバート・B・パーカーという人の小説らしいのですが.
またリアリティを追求しているのも良くわかります.銃を撃った後にすぐに弾を込め直すあたりは昔の西部劇には無かったものでしょう.このあたりは主演と監督を行ったエド・ハリスの美学が見て取れるようです.セットは非常に貧弱なもので,予算をケチったことは一目瞭然ですが,まあ,この映画にとってそれほど本質的なものではありません.
現代的な西部劇を楽しみたかったら,まず観ておくべき作品だと思います.お勧め.
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