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2014年9月

2014/09/22

凶悪な理不尽と闘う法廷弁護士

審判(ハヤカワ・ミステリ文庫)(競馬シリーズ) - ディック・フランシス(著),フェリックス・フランシス(著)

久しぶりに読んだ競馬シリーズ.私は学生時代からディック・フランシスの作品を愛読してきました.このブログでも過去に晩年の作品をいくつか取り上げて(*1 *2 *3 *4)紹介してきました.知っての通り,ディック・フランシス本人は2010年2月14日に亡くなっているので,本人執筆の新作が出ることはないのですが,生前に書き残した原稿に息子のフェリックス・フランシスが筆を入れて完成させた作品がいくつか出版されています.今回紹介する作品もその中の一つ.著者名が連名になっているのでわかります.競馬シリーズの名翻訳者であった菊池光亡き後を継いだ北野寿美枝が今回も翻訳を担当しています.

ストーリーは非常によくできています.アマチュアの障害騎手である主人公の職業は法廷弁護士.知り合いのプロ騎手が殺された事件を担当することになって,凶悪な何者かからの脅迫に巻き込まれ,脅え葛藤します.この作品は,競馬シリーズではお決まりの障害競馬やその関係者と,弁護士事務所や法廷という二つの世界を行きつ戻りつ,主人公が肉体的苦痛や精神的苦悩に耐えながら,犯人に挑戦を挑むというお話なのですが,ストーリーの細部が非常にうまく構成されていて上質のエンターテイメントに仕上がっています.これは息子のフェリックスの才能なのでしょうか?だとするとこの人は作家としても成功できそうですね.

特にこの作品では,法廷弁護士の仕事がどのようなもので,イギリスの法廷内外でのやり取りがどのようなものかを解説風に描いてあるので,その分野を知るにも非常に有益な作品です.

主人公はストーリーのかなり早期にお決まりの肉体的苦痛を味わう羽目になります.競馬シリーズではこの肉体的苦痛が一度で終わらず二度三度と繰り返されることが多いので,本作品も痛い場面が後半に出てきて読み進めるのがつらいだろうなぁと思っていました.しかし終盤で骨を折られるようなことにはならず,新たな傷を作らずに終末を迎えることができたのでほっとしました.ただし最終場面での主人公の行動については,いくら正当防衛だからと言って意見が分かれることでしょう.

長い作品なのですが,翻訳の質が高いので日本語を読むのが楽ですし,そもそもストーリーが面白いので没頭して読めます.痛い場面が比較的少ないこともお勧めできる理由の一つです.そしてイギリスの法廷や陪審制についてもたっぷりと勉強ができるという大変おすすめの作品.

フェリックス・フランシスがこれからどのように独り立ちしていくのか,いかないのか,気になるところです.

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2014/09/21

実りの秋

当地の田んぼはすでに半分以上が刈り取られており,遅めに田植えをした田んぼだけが刈り取りを待っている状態です.田んぼのは頭を垂れて,収穫を待っているように見えるのですが,しかし本体にはまだ緑色の葉や茎がついており,もっと枯らしてから刈り取りをしても良いのでは?と素人目には思ってしまいます.

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欧米の小麦畑では,完全にカラカラになるまで熟させてから刈り取るのが普通で,そのため収穫期には小麦畑はまさに一面黄金のような色彩に埋め尽くされます.それに比べると日本では,少なくとも関東地方では,まだ茎に青味が残っている状態で刈り取ってしまうことが珍しくありません.これは稲と小麦の植物としての特性の違いなのでしょうか?

刈り取りの後で稲木にかけて天日で乾燥させることも少なくなっており,現在ではいかに少ない人手で効率よく作業を行うかが重要なようです.

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2014/09/20

ガマズミの赤い実

先週の週末,近隣の里山を歩いた時のスナップ.クズキクイモの花に混じって,林縁にはガマズミの赤い実が目立ちました.この実は食用になるのですが,Wikipedia の記事によれば,季節が進んで晩秋になり,表面に白っぽい粉をふくようになると最も美味しいということです.今度試してみましょうか.

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ガマズミの和名は "莢" + "草かんむりに迷" だそうで,普段使わない難しい漢字です.どういう意味なんでしょうね?知りたいところです.特に二文字目の漢字(Unicode で U+84BE)は Windows-31J の範囲では定義されておらず,UTF-8 では定義されています.

ロシア民謡の "カリンカ" はこのガマズミを歌ったものだそうです.へぇー!

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2014/09/16

ヒガンバナ

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初秋を彩る草花の中でもヒガンバナは特に印象の強い花です.何といってもその強烈な色彩.田んぼの疇に植えてあることが多いのですが,稲刈りの前後の田んぼを真っ赤なヒガンバナが縁取っているさまは,何とも独特の印象を与えます.田んぼの疇に多い理由については,上記リンクから Wikipedia の記事をご覧ください.

滋賀県の琵琶湖周辺では高い密度でヒガンバナが田んぼの疇に植えられており,新幹線の車窓からその色彩を楽しむことができます.

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変種もあるようで,花弁の縁が白いものを見ました.

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2014/09/15

兵どもが夢の跡

近所の古い城跡,それも天守閣や石垣を持たない平城の址を訪ねました.関東地方には戦国時代には各地に多くの小さな城があったはずなのですが,天下統一の後は,小さく戦略的価値の低い城は廃城になったものが多くあるようです.映画 "のぼうの城" に出てきた埼玉県行田市の忍城(おしじょう)もそのような平城の一つですが,こちらは水攻めに耐えた城としてかなり有名ですね.

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廃城になり,長い年月のうちに構造物が取り払われてしまうと,畑になったり,木々に覆われたりして,かつてそこに城があったことすらわからなくなることが多いと思います.我が家のすぐ近くにもそのような城跡がありますが,知らなければただの農地と斜面,しかし妙に深い谷がある,としかわかりません.しかしこの谷は往時の空堀だったはずのものです.

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そういう意味では今回訪ねた城址は比較的下部構造はよく残っているほうと言うべきでしょう.本丸二の丸,三の丸のそれぞれが建っていた跡は広い敷地がそのまま残されています.草刈りなどの手入れがよく行き届いているので,歩き回るのは大変楽です.周囲はうっそうとした木立や竹藪に覆われていて,今では外側への視界は全く閉ざされていますが,往時は周囲がよく見渡せ,かつ三方は沼に面していたので,天然の要害になっていたのだろうと推測できます.

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人が地形に手を加えた後として,空堀がそれぞれの敷地の周囲に張り巡らされていた跡が見て取れますが,今では深い谷のような地形としかわかりません.まさに兵どもが夢の跡です.

欧州では城塞は石造りが基本なので,日本の城よりははるかに長い年月残ると思われますが,それでも中世以前の城はそれほど多く残っているわけではありません.廃城後に石材として運び出されるからでしょうか?

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アキノノゲシ

アキノノゲシは私が大好きな花の一つです.花期はちょうど今頃.何といっても色がいいです.濃い色で自分を主張するでもなく,かといって純白で無垢を気取るでもなく,やや彩度を下げた薄黄色が素晴らしいと思います.大変微妙な色なので,絵の具を混ぜてこの色を作れと言われると,彩度をコントロールする知識が必要になります.

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花の形は典型的なキク舌状花だけでできています.東南アジア原産で,古い時代に日本に入ってきた史前帰化植物というものだそうです.いつ頃なんでしょうね?日本列島にとっては人間自身が帰化動物ですから,人間の移動定着とともにやって来たのかもしれません.

でもこの植物,レタスの仲間と聞いたら驚きますよね.レタスはアキノノゲシ属の植物.へーぇ!

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2014/09/14

キクイモも咲いたよ

クズが満開ということは,当然のことながらキクイモも満開です.

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この植物はかなり背丈が高くなるのが特徴です.これが同時期に花を付ける同じキク科アキノノゲシとは異なるところ.まあ同じではあってもは全く異なるのであたりまえか.

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ヒマワリ属の植物なので,花を拡大して眺めてみると,おう,確かにヒマワリによく似ていますね.中心に筒状花,周辺に舌状花があります.背が高くなるところもヒマワリ属ならではだと感じます.

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クズの花が満開

早朝から久しぶりの好天に恵まれたので,秋の気配を探しに近所の自然公園に足を延ばしました.秋とは言ってもまだまだ夏の残り香が濃厚で,日差しは強く歩くと汗が噴き出ます.

それでも決定的な秋のしるしを発見.それは満開となって咲き誇るクズの花です.厄介者のクズは日本はおろかアメリカ南部でもはびこり,駆除するのはほとんど不可能という状態にまでなっていますが,そのクズが夏の終わりにこのように豪華で美しい花をつけることはあまり知られていないのではないでしょうか?

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非常に色が濃い花で,写真ではなかなか表現が難しいのですが,中低木であれば梢にまでクズに絡まれているのが普通ですから,それらが一体となったマント群落全体に豪華に花が付いている光景は美しいものです.

この花のなれの果てには豆状の種が付くのですが,この種が落ちて発芽して増えるよりは,頑丈な根茎がどんどん伸びていくのが通常の増殖パターンです.こうなると地上の弦を刈りはらったくらいでは絶やすことは不可能.何とも厄介な植物です.昔は農作業の材料として定期的に刈り取って使っていたため,大繁殖することはなかったそうです.

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2014/09/06

A380に乗りました

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今週の後半は海外出張だったのですが,帰国便は巨大旅客機 A380 でした.私はこの飛行機に乗るのは初めて.搭乗時にいやでも気が付くのは,"Suite" と書かれたキャビンがあること.これはビジネスクラスのさらに上のクラス.通常は "ファーストクラス" と呼ばれていたものから,さらにゆとりのある空間を乗客ごとに確保しているらしい,と推測できます.残念ながら1階建ての前方部にあるらしく,それを覗き見ることはできませんでした.またビジネスクラスは2階部分にあるため,これも見ることはできませんでした.

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この飛行機には最近では一般的になった "Premium Economy" や "Economy Comfort" というクラスは設定されていません.従って,私は従来からの "Economy",いわゆる "難民船区画" で数時間を過ごすことになりました.座席レイアウトは 3-4-3 の10席なので,これは B747B777 と同じです.座席は普通のエコノミーとほぼ同じですが,Video On Demand は最新のものが装備されています.ただしこのフライトでは PA の頻度が高く,その度にビデオが中断されて楽しみが阻害されました.

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窓側の私の座席からは主翼がよく見えたのですが,胴体に近い部分の主翼は非常に長い翼弦 (Chord) を持っていました.こんなに長いコードを持つ飛行機は初めて見ました.B747 の翼胴結合部も長いコードを持っているのですが,おそらくそれよりも長いと思います.このため,主翼上の座席からは下側は全く何も見ることはできません.また翼幅(スパン)が非常に長く,さらに翼端部でもある程度のコード長を持っています.また翼桁の剛性が高いのか,あるいはスパン方向の揚力分布を調整してあるのか,巡航時に翼端がピンと反り返るようなことはありませんでした.

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ほぼ満席に近い状態だったためか,それとも元々こういうものなのか,離陸には案の定長い滑走距離が必要です.離陸直後の上昇速度もゆったりとしており,よっこらしょ,という感じの離陸でした.これが B767 などの中型機とは大きく異なる点でしょう.B767 だと離陸したとたんにぐーーんと一気に高度 500m くらいまで駆け上るので快感なのですが.

巡航時は安定そのものです.しばしば乱気流を経験しましたが,大質量の機体だけあって受ける加速度は小さなものです.これは良いですね.

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着陸時は離陸時と同様です.対地速度 300km/h 以下でタッチダウンするのですが,それからがなかなか減速できない.巨大なスポイラーを立ててもかなり長い距離を高速で滑走します.スラストリバーサーも使っているはずですが,これはやはりつらいですね.B747 と同じくらい滑走距離が必要なようです.

鳴り物入りで導入された機種なのですが,私のようにエコノミークラスの乗客からすると,メリットは巡航時の安定性くらいしか感じられず,乗降時に長い時間がかかるなどのデメリットのほうが目立ちます.民間旅客機の機体企画としてはちょっとやりすぎの感が否めません.今のところ,私が最も乗りやすいと感じている機種は B777-300ER です.現在最も売れている機種であるというのもうなづけます.

使用した写真はすべて Airbus 社のギャラリーからダウンロードしたものをそのまま使用しています.

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凝った作りを堪能できるミステリー・コメディ

グランド・ブダペスト・ホテル(初回生産限定) [Blu-ray] - レイフ・ファインズ(出演),トニー・レヴォロリ(出演),ウェス・アンダーソン(監督)

海外出張中の飛行機の中で何とはなしに観たのですが,これほどの佳作とわかってびっくり.帰りの便でも再度観たのですが,今どきの飛行機は Video On Demand なので,あるシーンを繰り返し見返したりするのも簡単ですから,かなりじっくりと鑑賞し,そして堪能しました.

舞台は20世紀前半の中央ヨーロッパの架空の国.その山中にたたずむ豪華ホテルが舞台.そしてその名物コンシエルジュと見習いのボーイ,そして上客の貴族たちが繰り広げる数々のエピソードを,当時の世相や戦争の足音などと絡めた見事なエンターテイメントに仕上げています.シナリオのうまさもさることながら,画作りが非常にうまい.メルヘンのようなミニチュアを多用してかえって味を出すなど,非常に巧みです.ところどころに爆笑を誘うブラックなユーモアが散りばめられていることも特徴で,特に前半は全く飽きることがありません.ただし,後半は多少だれ気味となり,最後は静かに終わります.

俳優さんたちも巧い人ばかり.主演の Ralph Fiennes はレイフ・ファインズと発音するそうですが,とにかくこの人は巧い.イギリス伝統の舞台俳優出身なのだろうと思いますが,役柄の作り方,表情,話しぶりなど,どこをとっても一流です.胸に付けた Les Clefs d'Or のバッジが何度も大写しされ,映画の後半ではこのバッジが大きな意味を持つようになります.

それに加えて,ボーイ役の黒人の子役 Tony Revolori がこれまた非常に良い味を出しています.化粧用鉛筆で描いた細いひげがトレードマークの役ですが,一見とぼけているようで,人生を真剣に生きようとする難民の若者を非常にうまく演じています.さらに彼の恋人役でお菓子屋で働く若い娘の Saoirse Ronan(シアルシャ・ロウナンと発音するそうですが)がとても可愛らしくて,この映画に華を添えてます.

影の主役は Madam D を務めた Tilda Swinton かもしれません.ナルニア国物語・第一章白い魔女を演じた,これまたイギリス演劇界出身の俳優ですが,この人が寂しい貴族の老女役を非常に象徴的に演じ,エレベータの中のシーンはこの映画の中でも名シーンの一つと言ってよいと思います.やはり舞台出身の俳優さんは違いますね.歌舞伎役者と同じように,ここぞというときに見得を切れます.

監督の Wes Anderson については,私自身は寡聞にして良く知らないのですが,Wikipedia の冒頭から引用すると,"His films are known for their distinctive visual and narrative style." ということのようで,この映画にもぴったりと当てはまります.

今年私が見た映画の中では,今のところ一番のお勧めです.この Blu-ray ディスクの発売は11月なので,待ち遠しいですね.

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