兵どもが夢の跡
近所の古い城跡,それも天守閣や石垣を持たない平城の址を訪ねました.関東地方には戦国時代には各地に多くの小さな城があったはずなのですが,天下統一の後は,小さく戦略的価値の低い城は廃城になったものが多くあるようです.映画 "のぼうの城" に出てきた埼玉県行田市の忍城(おしじょう)もそのような平城の一つですが,こちらは水攻めに耐えた城としてかなり有名ですね.
廃城になり,長い年月のうちに構造物が取り払われてしまうと,畑になったり,木々に覆われたりして,かつてそこに城があったことすらわからなくなることが多いと思います.我が家のすぐ近くにもそのような城跡がありますが,知らなければただの農地と斜面,しかし妙に深い谷がある,としかわかりません.しかしこの谷は往時の空堀だったはずのものです.
そういう意味では今回訪ねた城址は比較的下部構造はよく残っているほうと言うべきでしょう.本丸,二の丸,三の丸のそれぞれが建っていた跡は広い敷地がそのまま残されています.草刈りなどの手入れがよく行き届いているので,歩き回るのは大変楽です.周囲はうっそうとした木立や竹藪に覆われていて,今では外側への視界は全く閉ざされていますが,往時は周囲がよく見渡せ,かつ三方は沼に面していたので,天然の要害になっていたのだろうと推測できます.
人が地形に手を加えた後として,空堀がそれぞれの敷地の周囲に張り巡らされていた跡が見て取れますが,今では深い谷のような地形としかわかりません.まさに兵どもが夢の跡です.
欧州では城塞は石造りが基本なので,日本の城よりははるかに長い年月残ると思われますが,それでも中世以前の城はそれほど多く残っているわけではありません.廃城後に石材として運び出されるからでしょうか?
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