凝った作りを堪能できるミステリー・コメディ
グランド・ブダペスト・ホテル(初回生産限定) [Blu-ray] - レイフ・ファインズ(出演),トニー・レヴォロリ(出演),ウェス・アンダーソン(監督)
海外出張中の飛行機の中で何とはなしに観たのですが,これほどの佳作とわかってびっくり.帰りの便でも再度観たのですが,今どきの飛行機は Video On Demand なので,あるシーンを繰り返し見返したりするのも簡単ですから,かなりじっくりと鑑賞し,そして堪能しました.
舞台は20世紀前半の中央ヨーロッパの架空の国.その山中にたたずむ豪華ホテルが舞台.そしてその名物コンシエルジュと見習いのボーイ,そして上客の貴族たちが繰り広げる数々のエピソードを,当時の世相や戦争の足音などと絡めた見事なエンターテイメントに仕上げています.シナリオのうまさもさることながら,画作りが非常にうまい.メルヘンのようなミニチュアを多用してかえって味を出すなど,非常に巧みです.ところどころに爆笑を誘うブラックなユーモアが散りばめられていることも特徴で,特に前半は全く飽きることがありません.ただし,後半は多少だれ気味となり,最後は静かに終わります.
俳優さんたちも巧い人ばかり.主演の Ralph Fiennes はレイフ・ファインズと発音するそうですが,とにかくこの人は巧い.イギリス伝統の舞台俳優出身なのだろうと思いますが,役柄の作り方,表情,話しぶりなど,どこをとっても一流です.胸に付けた Les Clefs d'Or のバッジが何度も大写しされ,映画の後半ではこのバッジが大きな意味を持つようになります.
それに加えて,ボーイ役の黒人の子役 Tony Revolori がこれまた非常に良い味を出しています.化粧用鉛筆で描いた細いひげがトレードマークの役ですが,一見とぼけているようで,人生を真剣に生きようとする難民の若者を非常にうまく演じています.さらに彼の恋人役でお菓子屋で働く若い娘の Saoirse Ronan(シアルシャ・ロウナンと発音するそうですが)がとても可愛らしくて,この映画に華を添えてます.
影の主役は Madam D を務めた Tilda Swinton かもしれません.ナルニア国物語・第一章で白い魔女を演じた,これまたイギリス演劇界出身の俳優ですが,この人が寂しい貴族の老女役を非常に象徴的に演じ,エレベータの中のシーンはこの映画の中でも名シーンの一つと言ってよいと思います.やはり舞台出身の俳優さんは違いますね.歌舞伎役者と同じように,ここぞというときに見得を切れます.
監督の Wes Anderson については,私自身は寡聞にして良く知らないのですが,Wikipedia の冒頭から引用すると,"His films are known for their distinctive visual and narrative style." ということのようで,この映画にもぴったりと当てはまります.
今年私が見た映画の中では,今のところ一番のお勧めです.この Blu-ray ディスクの発売は11月なので,待ち遠しいですね.
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