住宅地の太陽光発電所
私の住む団地の中に,何と二か所も太陽光発電所が建設されてしまいました.それもこれも,FIT という政策のお落とし子なのですが,そのうち一か所はかなり広い家庭菜園だったものを地主が用途変更したもの.もう一か所は斜面の雑木林だったものを,これも地主が用途変更したものです.
前者は,1,400坪ほどの平坦な土地を細かく区切って近隣の住民が家庭菜園として長年利用してきたものだったのですが,地主が FIT で高収益を得ようと考えたのでしょうか?ある日を境に家庭菜園は無くなり,地面には砕石が敷き詰められ,Canadian Solar (実は中国)製の PV パネルが整然と並べられ,間もなくすると PCS も設置されて系統連系用の電力計や柱上変圧器とつながれるのだろうと思います.
後者はもともとは手入れが行き届かない荒れた雑木林だったものですが,こちらも FIT が動機となったのでしょう,斜面はパネルで埋め尽くされ,すでに発電が開始されています.
このような変化をどう考えればよいのか悩むところですが,少なくとも景観は台無しです.殺風景この上ありません.また PV パネルは光をよく反射するので,場所によってはパネルで反射された日光がまぶしく感じることがあるかもしれません.
これまで家庭菜園や雑木林だった場所の植生を文字通り根こそぎ剥ぎとって建設されているので,その分,温度や湿度の緩和効果が失われていることは確実ですし,土壌の劣化も確実に進むことでしょう.まあ,中にはやぶ蚊やその他の害虫が住めなくなって良かったと思う向きがあるかもしれませんが.
ソーラー発電所なので,もちろん昼間は電気を生み出し,その分,火力発電所で燃やす化石燃料とそれから発生する CO2 は減るのですから,環境上のメリットは確かにあります.しかし,それによって失われたものとの差引勘定はどうなるかというと,これは一概には言えないでしょう.
特に,雑木林や農地を用途変更して太陽光発電所に転換する場合には,環境上の目に見えない恩恵,いまだ把握・理解されていないがあり得る恩恵をよく考慮に入れる必要があります.このあたりは環境会計が取り組まなければならない課題であり,すでにある程度研究は進んでいるのかもしれませんが,土地の私有制と用途制限との関係が十分に解決されていない現状では,実効性は望めません.
より本質的には,環境倫理学が問うように,その時々の経済合理性によって所有者が意思決定行う共時的意思決定に対して,長期的・社会的な合理性に基づく通時的意思決定が優先されなければならないのですが,これについては問題意識すら稀薄であるし,意思決定技術としても非常に困難であるため,見通しは明るくありません.
まあ,そんな小難しい理屈をこねなくとも,緑地だったところに殺風景なパネルが並んでしまったので,近隣の住民にとって気持ちの良いことではないことは確かだと思います.
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コメント
2015年2月中旬になって,ようやくPCSが設置され,柱上変圧器の工事が行われましたので,いよいよ発電が始まるのだと思います.近隣の昼間の電圧上昇がどの程度か,ちょっと心配しています.
投稿: 俊(とし) | 2015/02/12 20:55