ラブソングができるまで
ラブソングができるまで [Blu-ray] - ヒュー・グラント(出演),ドリュー・バリモア(出演)
NHK のプレミアムシネマで放映されたものを録画して鑑賞しました.本作品の原題は “Music and Lyrics” で,これは作曲誰々,作詞誰々という決まり文句をそのまま題名にしたものだと思われますが,ダメ男をやらせたら天下一品という異名を持つ Hugh Grant が,その本領を最大限発揮したロマンティック・コメディの傑作です.彼のロマンティック・コメディにはこれこそ天下の大女優 Julia Roberts との共演を果たした “ノッティングヒルの恋人” という大ヒット作があるのですが,私は本作品も非常に良いと思います.
おそらくイギリスの伝統的な舞台芸術界を経ることなく,映画俳優としての人気を確立した人だと思います.というのも,舞台俳優出身の人とは演技の中身がちょっと違うのです.ここぞというときに見得を切るという所作がほとんど見られないのです.ここが現代イギリスを代表する俳優である Daniel Graig や Judi Dench とは違うところ.これが良いとも悪いとも言えないのですが,この人の持ち味であるダメ男を演じるにはあまり関係ない,ということは言えるでしょう.
本作品は80年代のポップスのスターが,今では中年となった往年のファン相手に,遊園地で客寄せのショーをやらざるを得なくなっているという落ち目の境遇を背景として,新進のスター女性歌手に曲を提供して新たなチャンスをつかもうとするのですが,たまたま作詞のパートナーに選んだ若い女性との恋の進展を絡めたストーリーが展開します.冒頭からエンドロールまで,Hugh Grant が往年のスターとしてバンドを従えて歌うシーンがあるのですが,これがなかなか良くできていて,特にぴっちりしたパンツで腰を振って踊る姿は笑えます.落ち目のダメ男の本領発揮です.
とは言うものの,中盤まではかなり退屈なお決まりのロマンティック・コメディが続きます.ところが終盤,コンサートで彼が歌う曲の歌詞に感動的な内容が込められていて,それが恋人の心を引き戻し,ハッピーエンドで終わる,というクライマックスが実に良くできているのです.ここは脚本の勝利.この時の歌詞は正直言って傑作です.
全体としては,Hugh Grant が落ち目の往年のスターを面白おかしく演じることに成功し,かつ80年代のスターという設定に基づく曲のパレードも危なげなくこなし,そして Hugh Grant の相手役である Drew Barrymore の可愛らしさでもっている作品だと思いますが,私は俳優たちの演技力よりは脚本の力を強く感じました.最近,NHK のプレミアムシネマでは Hugh Grant の作品が多いのですが,なぜなんでしょうね?
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