謹賀新年 2018
皆様,明けましておめでとうございます.本年が皆様にとって良い年でありますように,お祈り申し上げます.例年通り昨年一年を振り返り,今年の展望について思うところを述べてみたいと思います.
さて,昨年は私の家庭にとって波乱の年だったと言ってよいと思います.
熊本地震で被災した父を自宅に引き取ったことは昨年のこのご挨拶でお伝えしたとおりですが,年が明けてしばらくは良かったものの,1月の末くらいから父が変調をきたすようになってきました.
まずインフルエンザとおぼしき原因不明の高熱を発して入院したり,深夜にトイレに立った時に転倒して頭を打って脳神経外科を受診したり,脳梗塞再発予防のために服用しているワーファリンが効きすぎて PT-INR が異常に高い値になっているのが発覚.慌ててビタミンKを処方し,その後血液検査を行いながらワーファリンの量の調整を2か月ほど続けました.そうかと思うと今度は深夜に鼻血を出して止まらなくなり,救急車を呼んで病院に駆け込むなど,私はこれらの変調のために何日も仕事を休んでは父を病院に連れて行かざるを得ませんでした.
これらが何とか落ち着いたのは4月になってからです.しかし,父の足腰は確実に弱ってふらつきがひどくなり,認知症も少しずつ進行しているのが見て取れました.夜中にトイレに立つときに楽なように,介護用の電動ベッドをレンタルしてみたのですが,トイレに手すりなどは無く,立ったり座ったりも危なっかしくなってきたので,いよいよ施設への入居を真剣に考えることにしました.
まずはケアマネージャに近隣の施設をいくつか見繕ってもらい,5月の連休を利用して妻と私とで数か所の施設を見学して回りました.実際見学してみると,制度上の施設の違いがよくわかり,これは大変勉強になりました.これと並行して,父には単刀直入に,自宅では十分な介護ができないので施設に入ってもらいたいことを伝えると,父は意外にも素直に承諾してくれました.そこで父に適しているだろうと思われる施設を2か所選び,いっしょに見学に行きました.最終的に一つの老人ホームを選び,入居手続きを行い,6月初めに入居することになりました.
施設や周囲の人たちに馴染めるか心配だったのですが,最初の3週間ほどは何も起きずに,新しい生活が始まりました.妻と私は交代で週2, 3回ほど父を訪れては身の回りの世話と洗濯物の入れ替えを行い,これで落ち着いてくれればありがたいと胸をなでおろしたのですが,これはまだ甘かった.入居からちょうど1か月経った頃から本格的な変調が始まりました.認知症に伴う数々の異常行動です.ここに詳しくは書きませんが,施設のスタッフも私たち家族も大きな苦しみを味わいました.最も苦しかったのはもちろん本人だろうと思うのですが,父が独自の世界に入り込んでしまうと,なかなか会話も成立せず,自分の世界を良くしようと行う数々の異常行動には本当に閉口しました.後始末に手こずることも度々でした.
新しいケアマネージャが非常に有能な人で,施設のスタッフを集めて対策会議を開いてくれたことは非常に心強くありがたく思いました.また,この老人ホーム付きの医者が処方してくれたアルツハイマー認知症用の薬がなぜか効いたようで,8月後半から異常行動はほとんどなくなり,やっと一息つけるようになりました.この間に父の介護保険の要介護度は要介護3に格上げされました.秋には夜中に転倒してろっ骨を折り,年末になって再び独自世界観の症状が現れたりしているので,注意して見守っているところです.
そういうことをやりながら,秋には父の住民票を当地に移す手続きを行いました.同時に,当地の銀行に口座を開設し,年金の入金や各種費用の引き落とし口座の変更手続きも行いました.これは当地からは遠い熊本市役所との様々な手続きが煩雑で時間がかかること,さらに父が地元に持っている銀行口座は当地では窓口が無く使い物にならないということから来ています.この住民票異動と銀行口座開設のために私は仕事を休み,さらに当日と後日,10数か所に電話をかけ,10数か所に文書を送るなどして,この秋は非常に忙しく疲れることが多かったと思います.年末になってもまだ完了していない手続きがあるのですが,ようやく収束してきました.
幸いなことに,父は経済的には豊かで何の問題も無いことがせめてもの救いです.お蔭様で,私自身はお金に関しては自分の老後のことだけを考えていれば済みます.一方,この数年間,妻と私が父に費やしている時間と労力はかなりのもので,しかも施設に入れたからと言って,決して手離れが良いわけではないことは,身に沁みて良くわかりました.
皆さん方の中にも同じような悩みをお抱えの方がいらっしゃるかもしれませんが,自分だけで抱え込まずに,ケアマネージャや民生委員などに助けを求めながら,決して自分の人生を犠牲にしたりしないよう強くお勧めします.
さて,私は昨年秋の誕生日で62歳に達しました.引き続き契約社員として現役時代と同じような仕事をしていますが,もう職制上の権限は持っていないため,あくまで助言者,支援者という立場でしか仕事を進めることができません.交渉のフロントに立って海外出張に行くことも無くなりました.さらに,重要な会議への出席の声も掛からなくなってきたので,このまま会社に居座って老害をまき散らす前に,この辺で引退しようと思うようになりました.
また,体と頭が元気なうちにやっておきたい事や,新たに取り組んでみたい事もあるので,60代前半での引退はむしろ望ましいとも言えます.心配なのは経済面ですが,62歳になったことで,厚生年金の報酬比例部分の受給資格を得ることができました.企業年金や確定拠出年金はすでに受給しているのですが,まだしばらくの間はもらえるので,60代前半で引退したほうが,健康寿命と生活資金のバランスは良いのではないかと思います.このバランスのとり方の悩みは,昨年の年始の挨拶でも言及した通りですが,来年の今頃,どういう状況になっているのか再びご報告したいと思いますので,乞うご期待.
会社を辞めたあと当面は独立系コンサルタントの看板を掲げ,流体力学,熱工学,蓄電池,自動車電動化などを専門分野として,技術評価,事業戦略,事業開発,新規投資や M&A の際の技術 Due Diligence などのアドバイザやコンサルタントを務めたいと思っていますが,そもそも仕事を取りに行く手立てがないので,おそらく開店休業状態になると思っています.かろうじて LinkedIn には登録しているので,そこから仕事にありつけることはあるかもしれません.今のところ,私の得意分野では北京や上海での求人ばかりがヒットしますが.何かお役に立てそうな話があれば,ぜひご連絡ください.
これからは時間には余裕ができるだろうと思いますので,まずは趣味の写真や野山歩きにたっぷり時間を使い,さらに学生の頃に挫折した数学や物理学のいくつかの分野を学び直したいと考えています.熱力学,統計力学,量子力学,相対性理論などです.さらに時間とやる気が残っていれば,楽器を何か一つやってみたい.フラットマンドリンでブルーグラスを弾くのが希望なのですが,田舎の当地には教室も無さそうなので,どうしたものかと思案中です.
昨年は PC のハードウェアに関しては変化はありませんでした.しかし,FreeNAS を導入して NAS として運用中だったマシンが,どうした事か HDD のトラブルにより運用できなくなってしまいました.ハードウェアは震災直後に物色して購入したものだったので十分に古く,パーツを更新して組み直すことも真剣に考えたのですが,メモリーが高騰している今の状況では,メモリーをバカ食いする ZFS がデフォルトのファイルシステムとなっている FreeNAS はいかにもコストパフォーマンスが悪い.FreeNAS は年末近くになってようやく待望の 11.1 がリリースされ,これをどう使いこなしていこうかと待ち焦がれていたものだったのですが,このトラブルで FreeNAS 運用機運は一気に萎んでしまいました.
代わりに,NAS box に興味がわき始めました.NAS box の利点は,ファイル共有の基本機能以外にも様々なユーティリティを簡単に導入することができて,高度なことができる割には運用が楽な点.目を付けたのは Synology の 918+ というマシンです.これにメモリーを増設すれば, FreeNAS で目指していたレベルのハードウェア,ソフトウェアが簡単に構築できそうです.ファイルシステムは ZFS ではないにしろ,それに近いレベルの Btrfs が使えます.Btrfs の安定性や評判には不安が残りますが,春になって新しい OS DSM 6.2 が正式リリースされたら,思い切って買ってしまうかもしれません.
自作ソフトの辞書参照型ソーティングフィルタ Refsort/Ruby については変化を起こしつつあります.これまで,全く自己流のつぎはぎのコードでどうにか動かしていたのですが,Ruby のクラスやメソッド,さらに例外処理の作法を学び直し,Ruby らしい,見通しが良く保守がしやすいコードへの書き直しを進めています.自作クラスやメソッドを多用すると速度が落ちることが分かっているので,少しずつ様子を見ながらですが改良中です.仕事を辞めて時間が取れるようになったら,今年中に刷新版に目鼻を付けたいと思っています.
一方これと並行して,鳥類分類体系の一つ IOC List を Refsort/Ruby の辞書ファイルにコンパイルする作業も継続しています.こちらは IOC 側にちょっとした変化がありました.これまで年4回という大変高頻度の改訂を続けていたのですが,昨年秋からは年2回に頻度を落とすとアナウンスされました.これで今後のコンパイル作業がだいぶ楽になると期待しています.
また,他の有力な鳥類分類体系との統合の議論が今年の IOC 総会から始まるようで,これが実現すると鳥類分類体系の世界が大きく変わる可能性があります.これは今年の重要な注目点です.この動きに日本鳥学会がついて行けるか,ちょっと心配.すでに現在の IOC List と日本鳥類目録との間の乖離は大きくなりつつあります.
昨年春に,PENTAX から一昨年発売された 35mm フルサイズのデジタル一眼レフ K-1 を思い切って購入しました.古い APS-C のボディとレンズを売却して資金の一部に充てました.中級クラスの標準ズームレンズも合わせて購入して慣らし運転中です.最初の感想は,重い!ということに尽きます.長時間カメラを構えてファインダーを覗いていると,だんだん左手首が疲れてきます.
出てくる絵は申し分ありません.画素サイズが大きいためだと思うのですが,ノイズの少ない余裕のある階調を楽しむことができます.特に,これまで APS-C サイズのカメラに取り付けて使用していた FA Limited レンズ群を,本来の画角で使うことができるのは非常に大きな喜びです.FA Limited の世界観とでも言うべきものがあるのですが,それがフルサイズのデジタル一眼レフで継続できることは素晴らしい.中でも FA 77mm を取り付けたときの機動性と画質には目を見張るものがあります.とろけるようなボケの美しさと立体感はまさに絶品.「誰でもプロのような写真が撮れてしまう反則レンズ」という口上は嘘ではありません.
K-1 で唯一気になるのは,以前からの PENTAX の癖なのですが,露出制御が保守的すぎる,特に空を入れて撮影する場合にローキーになり過ぎる,という点です.これはファームウェアを書き換えれば直せるはずのものですが,K-3 あたりで解消された欠点だと思っていたものが K-1 になって再び出てきたので,アレ?と思っているところです.
いずれにせよ,私の写真は当分はこの K-1 でいきます.遠出の旅行するときにはもうちょっと軽めの機材が欲しいのですが,これは現在なかなか選択が難しい.PENTAX が APS-C ミラーレス一眼を出してくれれば良いのですが,そうでなければ,Fuji Film の X-E3 や,Canon の超軽量な APS-C である G1 X Mark III には興味があります.でも,どの機種の EVF もまだまだ見にくいですね.まるで昔のファミコンの画面を覗いているよう.早く1,000万画素クラスの EVF が出てこないものかと思います.このため,なかなか一眼レフから離れられません.
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コメント
俊さん
今年もよろしくお願いします。
お父上の話、興味深く読ませてもらいました。
うちも昨年8月から90歳の義母を札幌からこちらに連れてきました。まだ、ある程度元気なので週3回デーサービスにかよっています。
自分自身も年寄りになるということを実感しているので、参考になりました。
国民年金支給開始年齢前にやめるのは、賛成です。私も63で再就職先を辞めました。東京通勤で現役時代よりも自分の時間がなくなってしまい決断しました。
ある程度体が動くうちに好きなことをしたいものです。
投稿: きたきつね | 2018/01/08 21:38
きたきつねさん,
コメント多謝です.いつ引退するのがよいか,同窓会では毎回議論になります.すでに引退した人たちは私と同じ意見ですが,これから再就職してまだまだ仕事をするのだという人もいます.ここらは,処遇や通勤時間や,家庭環境など,いろいろな条件が関係するので,なかなかひとくくりにはできないのだろうと思います.
今年もよろしくお願いいたします.ご自身こそ健康第一でお過ごしください.
投稿: 俊(とし) | 2018/01/09 22:53