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2018年7月

2018/07/16

酷暑の夕暮れ

酷暑が続いています.太平洋高気圧が日本全体を覆うほど勢力が強く,かつ上層にはチベット高気圧が張り出しているから,と説明されているのですが,これだけでは全く理解できません.太平洋高気圧は小笠原諸島付近に形成され,昔は小笠原気団と呼ばれていたものです.これがなぜ勢力を強めているのか,フィリピン東海上はどうなっているのか,日本全体を覆うほどになっているのに,なぜこれだけ湿度が高いのか,上層のチベット高気圧がなぜ影響を与えるのか,などなど疑問に思うことがたくさんあります.気象情報はもう少し解説のレベルを上げ,より正確で論理的な説明をしてほしいと思います.

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このような暑い日の夕暮れに,三日月と宵の明星が並んでいたので写真に撮ってみました.これから三日月が太っていき,やがて木星や土星,さらに大接近中の真っ赤な火星にも接近してくれると,また面白い画が撮れるのではないかと期待しています.

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2018/07/08

勇気ある追跡とトゥルー・グリット

勇気ある追跡 [DVD] - ジョン・ウェイン(出演), グレン・キャンベル(出演)

トゥルー・グリット [Blu-ray] - ジェフ・ブリッジス(出演), マット・デイモン(出演)

再び映画のレビューを書きたいと思います.今回は二つの映画ですが,後者は前者のリメイクなので,実際は一つのものと思ってよいでしょう.父親を殺された娘が仇を討つために連邦保安官を雇って追跡するというお話です.オリジナル版とリメイク版のシナリオやセリフにほとんど差がないのが意外なところですが,これはどちらもが原作に非常に忠実だったためか,それとも後者が前者の脚本・演出を尊重したのかはわかりません.しかし,西部劇の中ではスタンダードとなったものの一つと言ってよいと思います. “OK牧場の決闘” ほどではありませんが,良く知られた話であることには違いありません.

古いほうの “勇気ある追跡” は,主演がジョン・ウェイン,助演がグレン・キャンベル,悪役側にデニス・ホッパーという人気俳優を配し,それなりに売れそうな,売れるべき西部劇として仕立て上げられています.しかしそのためか,隻眼でアル中の連邦保安官のダメさ加減やアクの強さは最低限に抑えられており,あくまでジョン・ウェインのファンが見て楽しめる映画,歌手グレン・キャンベルのファンが主題歌とともに楽しめる映画となっています.まあ,1969年の映画なのでこれは当然でしょう.話の結末もハッピーエンドとなっています.

一方,後者はコーエン兄弟監督製作,スピルバーグ製作総指揮というマネジメントからもわかるように,現代的な西部劇として製作されており,前者よりもはるかにリアリティを追求しています.小さなところでは銃の発射音しかり.ガラガラヘビに腕をかまれた主人公の少女が,結局は腕を切断しなければならなかったという結末は前者にはなかったものですし,25年後にワイルド・ウェスト・ショーに出て生計を立てなければならなくなっていた元保安官が死んでしまったという筋立ても,西部開拓時代の終わりを告げるほろ苦い余韻をもたらします.

後者の保安官役ジェフ・ブリッジスは非常に存在感のある俳優なのですね.ジョン・ヒューストンばりです.私はジョン・ウェインよりもこの人の演技のほうが好み.ジョン・ウェインがライフルを回しながら連射するシーンはファンへのサービスとしか思えないので.この人がアカデミー主演男優賞をとったクレイジー・ハートを私は観ているはずなのですが,なかなか思い出せません.

少女役はどちらの映画でも非常にうまい.本来の才能が開花したのか,それとも監督の演出が良かったのか,頭が切れて勇気があり覚悟のすわった生意気な少女を非常にうまく演じています.ちょっと早口過ぎてよく聞き取れないのが私にはつらいところです.

これら2作を立て続けに観るのは非常に面白いので,ぜひ試してみることをお勧めします.

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2018/07/07

Gentle on My Mind が出色のでき

WINDY CITY [CD] - Alison Krauss

本当に久しぶりに音楽 CD のレビューを書きたいと思います.今回は昨年発売の Alison Krauss の久々のアルバム “Windy City” です.ここ数年間は AKUS としてのアルバムを出しておらず,ファンとしては音楽性の変遷も感じられて大変気になるところではあるのですが,しかし AKUS としてのツアーは毎年精力的に行っています.スケジュールを見ると全米をくまなく回っており,非常にタイトなものです.これはものすごい負担になっていると想像します.まあ,AKUS くらいの大物になると,ミュージシャン自身は悪臭漂うツアーバスではなくて,ビジネスジェットで移動しているかもしれませんが,スタッフと機材は当然ツアーバスでの移動でしょう.アメリカのステージミュージシャン稼業は過酷ですね.

さて,このアルバムはブルーグラス色を抑え,どちらかというとカントリー・バラード風の曲が多く,ニューグラスの旗手の復活を願うファンとしてはちょっと残念.また,レーベルが Rounder ではなく Capitol に替わっています.しかし,収録された曲はいずれも素晴らしく,安心して聴いていられるものばかりです.録音エンジニアはまたしても Gary Paczosa のようで,これも安心できる要因の一つ.

実は私が最も気に入り,繰り返しそればかり聴いているのは第7曲に収録された少し古めのスタンダードナンバー “Gentle on My Mind” です.オリジナルは Glen Campbell でしたね.とにかく曲のアレンジが素晴らしく,この曲にはこういう魅力があったのかと再発見させられること請け合いです.特にピアノの間奏がとても素敵です.

アルバムタイトルになっている第3曲の “Windy City” と,第1曲の “Losing You” も素晴らしい曲です.これら2曲がこのアルバムの性格をよく表現していると言ってもいいくらいだと思います.Alison Krauss のヴォーカルは全く衰えを知らず,実に安定した美しさを保っています.いったいどれくらいのヴォイストレーニングや日常生活の節制を強いられているのか知る由もありませんが,とにかく天使の歌声は今も健在です.

私としては,そろそろ AKUS 本来のニューグラスのアルバムが欲しいところです.“So Long So Wrong” や “New Favorite” のような名アルバムが再びリリースされることを願っています.

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2018/07/04

山猫

山猫 4K修復版 [Blu-ray] - バート・ランカスター(出演),アラン・ドロン(出演)

映画のレビューを書くのは1年ぶりです.レビューを書くだけの気力が無かったというのが正直なところです. “山猫” というこの長編映画を観たのはこれで2度目.今回はイタリア語・完全復元版ということで,前回観た時にはなかったシーンが含まれていたように思いますが,とにかく前回観た時の印象は舞踏会のシーン以外かなり薄れているので,今回の鑑賞を中心にレビューしたいと思います.

この映画の本質を私なりの解釈で要約すると,時代の流れで没落することが運命づけられたシチリアの由緒ある貴族が,その慧眼で時代の流れを深く悟った上で,時流に乗ることで没落を逃れようとはせず,あえて古風な価値観としきたりに従って「正しく」没落することを選ぶ,その悟りと没落の美学を美しい映像で描いた叙事詩,だと思います.しかも,俗物だが時流に乗ることに長けた甥には,わざわざ新興勢力の市長の娘との縁談を用意してやるという気配りまで見せます.

この本質は,映画の後半,有名な舞踏会のシーンの直前,政府からの使者が貴族院議員への就任を要請し,それを断るときの見事な対話のシーンに表れています.このシーンこそこの映画の白眉であり,その後の延々と続く美しい舞踏会のシーン,ロウソクのみの照明にこだわったあまり,出演者は汗を拭き拭き演技せざるを得なかったという有名な数10分は,没落直前の貴族社会の輝きを最大限演出するための監督のサービスに過ぎません.

荒涼としたシチリアの風景,砂埃が舞う道路,そしてローマ時代から支配者が入れ替わることが続いた歴史の重み,そのような背景をたっぷりと見せたうえで,考証を重ねたであろう豪華な調度と衣装で豊かな貴族の世界を垣間見せます.この映像美はヴィスコンティならではのもの.

しかし意外にもアメリカ人とフランス人の俳優を中心に据え,イタリア語のセリフは吹き替えで済ますという思い切りの良さはどうしたことでしょう?私が解せないのはこの配役です.なぜイタリア人を使わなかったのか?せめて地中海世界の俳優を使うべきではなかったのか?なぜバート・ランカスターと,フランスではそれほど人気のないアラン・ドロンを使ったのか?これは今でも疑問に思う点です.

もちろん,バート・ランカスターの演技は見事で文句を言う筋合いではありませんが,しかし違和感が残るのは正直に告白せねばなりません.では誰だったら良いのかと問われても,当時の俳優群を知っているわけでもないので,答えることはできません.困りましたね.

全編で3時間を超える大作なので,一気通貫で観る人は少ないかもしれませんが,やはり見ごたえはあります.ヴィスコンティの映像美へのこだわりには感動させられます.高解像度の大型画面で観ると,いかに金をかけた映画かがよくわかると思います.歴史に残る大作の一つであることは間違いありません.超おすすめです.

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