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2019/08/18

IOC List v9.2 の重連種名

ここ数日,IOC List のサイトが何者かにハックされ,巧妙にアダルトサイトへ誘導されるようになっていたのですが,ようやく修正されて再びアクセスできるようになりました.

ところで,2016年5月のこの記事で IOC List に含まれる重連種名を紹介しました.重連種名とは私の勝手な命名で,属名と種小名が同一の綴り(つまりその属の模式種)で,さらに基亜種も定義されているもののことです.基亜種名は定義により種小名と同一なので,結局3つの同一のラテン語が並んでいる亜種名が存在することになります.

幸運が重ならないと属名と種小名が同一になることはありません.仮に属名と種小名が同じ単語に由来していたとしても,ラテン語の語尾変化規則により,属名の語尾と種小名の語尾が一致するとは限らないからです.

前回調べたのは IOC List v6.2 についてだったのですが,今回,最新の v9.2 について調べてみました.すると前回調査とはだいぶ入れ替わっていることがわかりました.このところ IOC は亜種の整理を進めてきたので,様相が変わってきたのです.以下に基亜種名を省略したリストを示します.

属名 種小名 英名 和名
Pauxi pauxi Helmeted Curassow カブトホウカンチョウ
Lagopus lagopus Willow Ptarmigan カラフトライチョウ
Francolinus francolinus Black Francolin ムナグロシャコ
Perdix perdix Grey Partridge ヨーロッパヤマウズラ
Coturnix coturnix Common Quail ヨーロッパウズラ
Gallus gallus Red Junglefowl セキショクヤケイ
Crossoptilon crossoptilon White Eared Pheasant シロミミキジ
Anser anser Greylag Goose ハイイロガン
Radjah radjah Raja Shelduck シロガシラツクシガモ
Apus apus Common Swift ヨーロッパアマツバメ
Amazilia amazilia Amazilia Hummingbird チャムネエメラルドハチドリ
Coeligena coeligena Bronzy Inca ブロンズインカハチドリ
Antigone antigone Sarus Crane オオヅル
Jacana jacana Wattled Jacana ナンベイレンカク
Limosa limosa Black-tailed Godwit オグロシギ
Gallinago gallinago Common Snipe タシギ
Alle alle Little Auk ヒメウミスズメ
Ciconia ciconia White Stork シュバシコウ
Sula sula Red-footed Booby アカアシカツオドリ
Anhinga anhinga Anhinga アメリカヘビウ
Cochlearius cochlearius Boat-billed Heron ヒロハシサギ
Nycticorax nycticorax Black-crowned Night Heron ゴイサギ
Milvus milvus Red Kite アカトビ
Buteo buteo Common Buzzard ヨーロッパノスリ
Bubo bubo Eurasian Eagle-Owl ワシミミズク
Colius colius White-backed Mousebird セジロネズミドリ
Suiriri suiriri Suiriri Flycatcher スイリリハエトリ
Manacus manacus White-bearded Manakin シロクロマイコドリ
Tchagra tchagra Southern Tchagra マユジロヤブモズ
Pica pica Eurasian Magpie カササギ
Pyrrhocorax pyrrhocorax Red-billed Chough ベニハシガラス
Riparia riparia Sand Martin ショウドウツバメ
Regulus regulus Goldcrest キクイタダキ
Troglodytes troglodytes Eurasian Wren ミソサザイ
Calliope calliope Siberian Rubythroat ノゴマ
Phoenicurus phoenicurus Common Redstart シロビタイジョウビタキ
Oenanthe oenanthe Northern Wheatear ハシグロヒタキ
Cinclus cinclus White-throated Dipper ムナジロカワガラス
Petronia petronia Rock Sparrow イワスズメ
Quelea quelea Red-billed Quelea コウヨウチョウ
Amandava amandava Red Avadavat ベニスズメ
Coccothraustes coccothraustes Hawfinch シメ
Pyrrhula pyrrhula Eurasian Bullfinch ウソ
Chloris chloris European Greenfinch アオカワラヒワ
Carduelis carduelis European Goldfinch ゴシキヒワ
Icterus icterus Venezuelan Troupial ムクドリモドキ
Curaeus curaeus Austral Blackbird ミナミムクドリモドキ
Cardinalis cardinalis Northern Cardinal ショウジョウコウカンチョウ
Melanodera melanodera White-bridled Finch ノドグロシトド
Diuca diuca Common Diuca Finch ジュウカチョウ

これらのうち,タシギカササギは有名なので,学名のトリビアとして知っている人も多いと思います.

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コメント

よく調べてみると,属名 = 種小名となるものは「反復名」 tautonym といい,動物以外の命名規約では禁止されているのだそうです.

ここで私が言っているのは,種の下位の亜種まで含めた話ですが,その種に亜種があれば基亜種は必ず定義されているので,反復名を持つ種に亜種があれば,必ず同一単語が3個連なった亜種名が存在する,ということになります.

投稿: 俊(とし) | 2019/08/19 08:09

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