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2019/09/10

台風の高分解能風予報を

アジア名 FAXAI こと台風15号が関東地方を直撃しました.数日前から天気予報の進路予想を見ていると,当初予想よりも西寄りの進路を取る傾向に変わってきたので,これはやばいと警戒をしていました.台風は(北半球では)反時計回りの渦なので,進行方向に対して右側に強風・強雨域が発達し,逆に左側は風も雨もさほど強くなりません.この性質は台風の進む速度が大きければ大きいほど強調されていきます.従って台風の進路の左右どちらに自分が位置するかで天と地ほどの差が出るのです.台風が西側のコースを取れば,我が家が台風の右側に位置するようになるので警戒を強めたのです.

台風が我が家に最接近していた昨日の午前6時ころは,風は強いものの暴風というほどではなく,何とか外も歩ける程度だったので,ひょっとして東に逸れたか?助かったかな?と思ったのですが,後刻の天気予報の台風の経路を見ると,確かに東京湾に入ってから東に大きく向きを変えたことがわかりました.そしてその進路右側の市原市や君津市には大きな被害をもたらしました.

今回,インターネット上で台風の進路予想を何度も調べたのですが,大縮尺の地図に進路予想を書き込んだものは皆無でした.つまり 10 km,20 km の分解能での進路予想は出されていないのです.しかし前述の通りこの 10 km,20 km の差が大きな違いを生むので,たとえ接近の直前であっても,つまり予報ではなく現状を外挿した成り行きであっても,その情報には高い価値があります.

なぜそのような情報が出されないのでしょうか?考えられる一つの理由は,それほどの予測技術が無いから.台風中心の経路を進路とするのであれば,台風の中心を求めなければなりませんが,そもそも台風の中心を定義するのは簡単ではありません.

いや,本稿の趣旨からすると,台風の中心位置などどうでもよいので,高分解能の強風・強雨域分布の予測があれば,それでよいのです.強雨域に関しては “雨雲ズームレーダー” というものがよく知られており,スマートフォンでも簡単に見られるようになりました.河川情報を加えた国土交通省の XRAIN情報サイトもあります.しかし強風域についてはこのようなものは一つも無いのです.

多地点のドップラー・レーダーの情報を統合し,強風域の現状表示と短期予測をすることは可能だと思いますが,それが一般の気象予報にまで実用化されていないのです.竜巻の少ない日本にはドップラーレーダー自体が少ない(竜巻の本場アメリカには NEXRAD という観測ネットワークがあります)のですが,それでも関東平野は比較的配置数が多いところで,少なくとも成田空港,羽田空港,千葉県柏市の気象大学校(近隣に2棟ほど高層ビルがあるらしく,東側2方向に盲点があるのが明確にわかるのがご愛敬)の3拠点,さらに国土交通省の河川管理用レーダー網も整備中です.自衛隊や在日米軍のドップラー・レーダーの活用は無理として,これらの情報を統合して強風域の分布を 1 km 程度の分解能で予測できるようになればいいと思います.

観測するだけで強風被害が防げるわけではありません.しかし,台風通過時にどの程度の風速が何秒間持続しているか,ガストの分布やその強度が実際に観測できれば,例えば鉄塔や電柱,あるいは建築工事機材の設計・設置基準の向上に役立ち,ひいては被害の低減につながることは確かです.

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