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2020/01/08

寒中お見舞い申し上げます

Wintergreeting_blog_2020

喪中につき新年のあいさつは控えさせていただきました.本年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます.例年通り昨年を振り返り,今年の展望について思うところを述べてみたいと思います.

昨年は引退2年目の年となりましたが,引退生活のリズムがある程度確立できたと思います.1月には失業給付の期限が切れ,各種の年金,非常勤の仕事の給料,不定期なコンサルティングの収入という収入ポートフォリオをやりくりしながら生活するようになりました.今年の後半には年金のうち確定拠出年金が期限切れとなる一方,老齢厚生年金がその穴の一部を埋めることになります.

しかし非常勤の仕事もそろそろ打ち切りとなるはずですし,コンサルティング収入はあまりに不安定で当てにはできないため,全体として収入は低位安定となっていくでしょう.現役時代に比べると大幅に少ない収入で生活していかなければならないので,支出の管理を本格的に進めなければと思っているところです.新年早々世知辛い話で申し訳ありません.


昨年のブログで何度か紹介したと思いますが,引退生活の重要な一部である「学び直し」は着実に進めています.昨年まず取り組んだのは熱力学本格的な教科書を通読し,ある程度の手ごたえを得ることができました.私は大学教養課程で学んだ熱力学がどうにも未消化で,永年悶々としていたのですが,この学び直しによって頭の中がだいぶすっきりしました.私が学んだのは現代的に再構成された公理論的な熱力学.ここ20年ほどで勃興してきた新解釈です.特筆すべきは,熱力学なのに熱を陽には扱わない点.詳しくは上記リンクのブログ記事をご覧ください.

それにしても,熱力学は物理学の中でもっと日が当てられるべき分野だと思います.複雑な森羅万象をごく少数のマクロな変数で厳密に記述することに成功した稀有な例です.相対論,量子論と同格に置くべき分野ではないかと思いますが,古臭い分野として統計力学に取って代わられていると誤解している向きも多いのではないでしょうか?

次に余勢を駆って取り組んだのは,一見無謀とも思える一般相対性理論です.これは私にとっては全く未知の分野だったのですが,初学者でも数式を一歩一歩追いながら学べるというのがウリの教科書が出版されて評判だったので,この700ページほどの本に取り組みました.テンソルやリーマン幾何学で苦しみ,最後の重力場方程式の導出にはいまだに納得がいかないものの,一般相対性理論の構成や雰囲気は十分に味わうことができました.

わかったことは,一般相対論は特殊相対論の延長線上に自然に拡張された理論であること.キーワードは等価原理と重力の4元化です.重力を遠隔力ではなく場の性質として扱うために,曲率のある時空を扱うリーマン幾何学を用いる必要があり,この微分幾何学の言語に慣れないと,読み進むことも理解することもできません.接続係数や曲率テンソルなどが次々と出てくるので,普通だとここで挫折してしまうのですが,この教科書のすごいところは,中高生の学習参考書のように懇切丁寧に数式を追えるところです.計量テンソルの中に重力などの効果が自然に埋め込まれてしまうのが美しい.

この本を読む途中で,解析力学の基礎知識が無いことに気づき,量子論への導入も兼ねて,今度は解析力学前期量子論の教科書を読み始めました.この本は理学部の教科書として使われているそうですが,独習するにはやや敷居が高く,数式の展開であちこちつまづき,ときどき Landau-Lifshitz の力学も参照しながら読み進めているところです.この分野は教養課程時代に早々に講義から脱落した分野なので,リベンジの思いを込めていますが,やはり理学部志望の頭の良い人たち向けの教科書のようで,工学部体質の私には結構つらいです.特に演習問題はハードルが高い.

とまあ,こんな具合で楽しんでいるところですが,やはり独習はつらいので,少数の仲間と輪読できないものか,Skype でも構わないので,と考えているところです.輪読の仲間を募るための SNS があってもよいように思います.誰か作ってくれないでしょうか?そういうサービスがビジネスとして成立すればなお面白いと思います.


さて,この辺りで父の介護について書かなければなりません.10年ほど前に脳梗塞を患ってから少しずつ認知症が進み,数年前に老人ホームに入居した直後は異常行動も頻発して,これはいったいどうなることかと危惧していたのですが,処方薬の効果もあってか異常行動は少なくなり,一方体力は徐々に衰えていくという状態でした.しかし昨年夏頃からは特に見当識障害がひどくなって,介護スタッフや私たちの手を焼かせるようになってきました.さらに晩秋に高熱を出して寝込み,持病の心房細動がひどくなってこのまま亡くなるのではないかと思わせたのですが,いったんは回復して食欲も戻り,デイサービスにも出かけるほどでした.

しかし12月に入って間もなく脳梗塞が再発.半身がマヒするとともに意識が戻らず,そのままの状態で1週間後に静かに息を引き取りました.この間,苦しむ様子もなく表情は穏やかなままで,老衰死に近い死にざまだったと思います.火葬と告別式を 1,000 km ほど離れた2カ所で別々に行わなければならず,骨壺の大きさと重さに閉口しながらの旅を終えて今ほっとしているところです.

ここ数年間,心身が衰えていく父と接するうち,当初はいらだちや怒りを覚えることが多かったのですが,次第にどうやったら相手のことを理解できるのか,何が不満で何に悩んであのような行動をとるのか,それを和らげるにはどうすればよいのかと思いを巡らすようになりました.そして最終的には,人間という生き物の複雑さと奥深さを悟るとともに,一人の認知症患者から多くのものを学ばせてもらったという感謝の念に気持ちが変化していきました.

次は我が身ですが,人が衰えて死を迎えるプロセスの間に,どのようなことが起こるのかをつぶさに見てきたことは大きなメリットだと思います.一種の先行体験,予行演習です.これは経験してみなければわかるものではないので,これからの人生の衰退期に生かしていきたいと思います.こういう経験をしていない人たちは,親の介護をせずに済んだと得した気分になっているかもしれませんが,それは大きな間違いです.私は大いに得をさせてもらったと父に感謝しています.


昨年は新年早々に自宅のリフォームを行った年でもありました.目的は耐震補強,窓の断熱化,外壁のサイディング化,さらに水回りの総入れ替えです.

自宅を新築したとき以来久しぶりにハウスビルダーと付き合いましたが,どうも昔に比べてサービスレベルが下がった印象があります.当初のプランに従って見積書を作り,工事をしながらその後の変更点を反映させていくのですが,変更点の現場への指示が口頭のみの場合が多く,部材の色やデザインの変更などがちゃんと伝わっているのか不安でした.施工直前になってこの色の部材は在庫切れなどと下請けから情報が上がってきたため,不本意な色で妥協せざるを得なくなるなど,元請けと現場との情報交換が旧態依然のままであることにも驚かされました.ひょっとして元請けと現場の双方が,タブレット上のアプリで進捗を確認し合うくらい進歩しているのではないか,という私の事前の期待は完全に打ち砕かれてしまいました.

極め付きは,完工して仮住まいから引っ越す当日になって,和室の畳が発注されていないことが発覚したことです.引っ越し後数日して畳屋が寸法取りにやってきて,2週間ほどしてようやく畳が入り,引っ越し荷物の仮置きが解消されました.

今後は今回のような大規模なリフォームを行うことはないと思いますが,よくよく元請けのレベルを見極めてから商談を始めなければならないと思わざるを得ませんでした.会社の規模や知名度は全く当てにならないものです.日本のサービス産業の生産性が低いことはつとに有名で,日本の「おもてなし」は素晴らしいという誤解がまかり通っていることがその証拠ですが,サービスレベルが進歩すらしてないことに暗澹たる気分にさせられました.


一昨年は尿路結石の出産を2度も(*1 *2)強いられて苦しめられたのですが,昨年は石が暴れることは一度もなく,健康面は平穏無事でした.脂質異常症の薬を飲み続けていますが,心配していた副作用などもなく,コレステロールの値は正常範囲内で落ち着いています.

しかし現役時代に比べると明らかに運動量は落ちています.通勤と仕事で社内や近隣を歩き回るだけでも毎日ゆうに 8,000 歩は歩いていたのですが,引退してからは,目標としている 6,000 歩に達するのは週に 2, 3 日ほどしかありません.特に,脈拍数を毎分 80 以上に保って連続 20 分以上歩けと医者が勧める歩き方は滅多にしなくなりました.今年は運動不足解消が一つの目標になりそうです.


趣味の写真については低調に終始しました.昨年,特に後半は天候が不順だったことと,父の介護に時間を取られることが多かったというのが言い訳ですが,単に億劫がっていたのだと思います.強いて言えば,いろいろ気にかかることがあって,気持ちに余裕がなかったということになるのでしょう.

一方,自宅近くに大きな調整池が造成され鳥たちがやって来るようになったので,被写体が豊かになってきました.私は長いレンズは持っていないのですが,機材について考え直そうかと思っているところです.また,これまでに比べると遠出をしやすくなったので,日帰り程度の遠征の頻度を上げようかとも考えています.

街歩きをしながら気に入った建物や店舗などの写真を撮ることもやりたいのですが,東京まで出かけるお金と時間を考えると,どうしても近所の散歩に傾いてしまうのが貧乏性の情けないところです.


PCのハードウェアに関しては,メインマシンのストレージを NVMeSSD に換装したくらいで,ほかに大きな変更はありません.ここ1年間はインテルの CPU の世代交代が停滞し,物量不足で価格も高止まりし,その隙をついて AMDメニーコアの CPU が勢力を伸ばしたことが大きな変化でした.しかしこれは私の買い替えサイクルからはうまく外れていたので,今年か来年,インテルの新しい世代の CPU が潤沢に出そろった時点で,メインマシンの臓物を入れ替えようと思っています.

プログラミングについては匍匐前進を続けているという状態です.辞書参照型ソーティング・フィルタである Refsort/Ruby は成熟の域に達してきており,これ以上いじらないほうがいいのではないかと思います.それを Excel から使うためのインターフェースである Refsort on Excel は改良の余地があるものの,Excel 日本語版と VBA がエンコーディングとして UTF-8 をデフォルトで使えるようになるのを待っている状態です.


今年は引退生活の3年目で内容の進化を図る年.外を出歩く機会と人との交流を増やしていきたいと思っています.皆様も健康第一でお過ごしください.どうかお元気で.

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