オガサワラカワラヒワが種に昇格
日本に広く分布するカワラヒワ Chloris sinica のうち,小笠原諸島に生息する亜種オガサワラカワラヒワ Chloris sinica kittlitzi が IOC によって種に昇格されそうです.IOC World BIrd List 8月8日の作業日誌で,提案されたことが報告されています.IOC List の次回の改訂(2021年1月)で正式に決まることでしょう.英名は当然というべきか Bonin Greenfinch です.
この亜種は極めて限られた地域,絶海の孤島群に生息する小型陸鳥なので,ひとたびコトが起こると簡単に絶滅しかねません.(ただし海洋上をどの程度の距離連続で飛翔できるかはわかりませんので,ひょっとすると他の島域との行き来があるかもしれません.)環境省レッドリストで絶滅危惧IA類に分類されており,今後も厳重な注意が必要です.日本鳥学会の次回の改訂(2022年)で種に格上げされるのか,どういう扱いになるのか要注目です.
日本鳥学会では亜種扱いだが IOC List では種に昇格されたものは他にもあって,例えば伊豆諸島南部に生息するオーストンヤマガラ Sittiparus owstoni や,西表島に生息するオリイヤマガラ S. olivaceus などがあります.これらは地域固有亜種の昇格でわかりやすいのですが,広大な地域に広がる複数の個体群をいくつかの種に分割するようなことも行われており,代表的なものはアマサギです.
日本鳥学会ではアマサギは Bubulcus ibis であり,その亜種 B. i. coromandus が日本で見られる亜種アマサギなのですが,IOC はこの亜種を種に昇格させて B. coromandus, Eastern Cattle Egret としています.さらにこの亜種が出て行った残りの B. ibis の英名を Cattle Egret から Western Cattle Egret に変更しています.この場合,和名を再定義するのかしないのか,再定義するとすればどうするのか,大変厄介な問題が発生します.
同じような状況はヒシクイの亜種でも起こっており,広い大陸とその周辺で,複数の個体群をどのように種や亜種に切り分けるのか,意見が分かれやすいところです.しかし最近では遺伝子解析の差異で判定される率が増えている傾向にあります.分子系統学が幅を利かせる時代になってきました.
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コメント
このようなサイトがすでに立ち上がっています.貴重であり脆弱であることは良く認識されているのだと思います.種への昇格が決まれば,なおさら貴重さが増すので,喫緊の課題となります.
種への昇格は,山階鳥研,森林総研,科博の研究者らによる論文で提案されているものですので,日本の鳥類研究,自然保護コミュニティの実力が試されることにもなります.私も何らかの協力ができればと思っています.絶海の孤島の陸鳥なので.
投稿: 俊(とし) | 2020/11/08 10:47